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先回、PRP治療にbFGFを加える方法の、胡散臭さについてまとめました。
ところで、bFGF単独で治療するっていうのは、どう考えても誰でも思いつきそうな話だが、本当になされてないのだろうか?・・
Pubmedで検索を続けたら、ありました、ありました。
しかも、全文無料公開されています。これは有難い。
たいへん興味深い内容なので、紹介させていただきます。
A Study on the Alterations in Skin Viscoelasticity before and after an Intradermal Administration of Growth Factor.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3183736/
札幌医大の小野一郎先生の論文です。2007年に札幌医大の倫理委員会の承認を経て、研究は開始されました。
bFGFは手背に皮内注射されました。126人の患者の右手115、左手70とありますから、67人が片手、59人が両手に打ったようです。注射濃度は10μg/ml(やっぱり!)で、2μg/cm2すなわち0.2ml/cm2を、最大5ml(50μg)使用しています。面積でいうと25cm2(5cm×5cm)にあたります。
経過写真も載っています。これはすごいわ。
効きすぎてて恐ろしい・・
bFGFは、繊維芽細胞を活性化させる「種」ですが、繊維芽細胞、いったん活性化したら、たぶん6-9ヶ月にわたってコラーゲン産生を続ける(注1)、っていうことでしょうね・・。
ということは、もし、量を間違えて、あるいは反応が弱いと思って、3ヶ月目くらいで追加打ちして、いったんボコり出したら、9ヶ月くらいは増大し続けるでしょう。
この感覚は、わたしたち医者にとって新鮮です。bFGFがそんなに長く作用し続けるはずがない。bFGFの効果でなく、その前に打った、ヒアルロン酸などのフィラーの影響はないのか?異物肉芽腫のような状況になっているのではないか?そうでなければ、数ヶ月にわたり増大し続けるなんておかしい。私でも、佐藤先生のこの論文読むまでは、そう思ったでしょう。
成長因子入りのPRP打って、ボコりのクレーム受けて、上のような苦しい説明している先生いらしゃったら、この佐藤先生の論文ヤバいですよ。異物なくても、増大し続けることの証明みたいなデータですから。
少なくとも2011年春には、こういう論文出てたのに、知らなかったのか?って言われますよ。
佐藤先生の研究では、とくにボコりや副作用はみられなかったようです。一回のみで、まんべんなく、が良かったんでしょう。やっぱり基礎研究は大切だ・・。
成長因子入りのPRP打って、ボコりのクレーム受けて、上のような苦しい説明している先生いらしゃったら、この佐藤先生の論文ヤバいですよ。異物なくても、増大し続けることの証明みたいなデータですから。
少なくとも2011年春には、こういう論文出てたのに、知らなかったのか?って言われますよ。
佐藤先生の研究では、とくにボコりや副作用はみられなかったようです。一回のみで、まんべんなく、が良かったんでしょう。やっぱり基礎研究は大切だ・・。
佐藤先生が、こうして論文仕上げてくれたから、手背に対しては、明日からでもできます。これだけ明確な基礎データがあれば、自信もって施術できます。
施術に技術そんなに要らなさそうだし、時間代だけって感じです。
施術に技術そんなに要らなさそうだし、時間代だけって感じです。
顔には・・ちょっと怖いですね。たぶん大丈夫なんだろうとは思いますが。
パイロットスタディでは、佐藤先生顔にも注射されているようなので、佐藤先生の正式な論文での公表を待ちましょう。
しかし、この効果を見ると・・法令線なんかの「窪み」にちょうど良いだけのふくらみを出すなんて、そんな都合のいいこと、bFGFで本当に可能なのかしらん。
制御がすごく難しそうな気がします。
全体的に打ってふっくらさせることは出来るだろうけど・・うーん、やっぱり顔にはちょっと私は恐い(^^;。
もし、過剰増殖してしまったら、どう対処したらいいのでしょうか?
ケナコルト(ステロイド)なんか打ったら、凸に加えて凹が出来て、ますますやっかいなことになりそうです。ケナコルト局注もbFGFと同じく制御予測不可能系だし(だから宮田先生はアキュスカルプで対処されたのだろうなあ)。
ケロイド治療に似てると考えて、色素レーザーかロングパルスYAGレーザーって手もあるけど、たぶん効かないんじゃないかな・・。なぜなら、
1)ケロイドでこれらレーザーが利くのは、栄養血管潰すことによると思われる(色素レーザーは色素選択性、ロングパルスYAGは深達性が売りの血管系レーザー)。bFGFのしこりは、純粋に繊維芽細胞だけの活性化なんで、栄養血管発達してなさそう。
2)昨日記した宮田先生ところにはたいていのレーザーが揃ってるはず。しかし宮田先生は血管系レーザーで治療していない。
からです。
やっぱり、あと5年くらいは、「窪み」には、ヒアルロン酸打ってたほうが無難だなあ。
ていうか、これだけ効果が出始めるのがゆっくりで、それが止まるのに一年近くかかる施術って、よほど冷静なお客さんでないと、将来にわたっても難しいかも。
微量を、まんべんなく、1~2年に一回打って、張りを保ちましょう、みたいなコンセプトの施術にまとめるのが、トラブル回避という視点からは、一番いいと思います。
ふくらみを出したい場合は、それなりの覚悟を決めてください、ってお願いするか・・てか、よく考えてみたら脂肪注入でいいじゃん。自己組織にこだわるなら。
採取する脂肪の少ない痩せた人にはいいかもです。
豊胸には・・たぶん、左右非対称、凹凸になるから、やめたほうがいいでしょうね。
バストの張りを出すために、手背と同様に、皮内にまんべんなく打つというのは、いいかもです。・・しかし、やっぱり、私は率先してやりたくはない(^^;。手背と胸の皮膚、また性質が異なるだろうし(胸はケロイド生じやすい箇所です)。
バストの張りを出すために、手背と同様に、皮内にまんべんなく打つというのは、いいかもです。・・しかし、やっぱり、私は率先してやりたくはない(^^;。手背と胸の皮膚、また性質が異なるだろうし(胸はケロイド生じやすい箇所です)。
いやあ、面白かった。佐藤先生、とてもためになる研究と論文、ありがとうございました。
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追記:佐藤先生(と奥様?)が中心となって、この治療を、多施設でも同じ結果になるのか?を検証する目的の研究会があるようです。
やることが、いちいち理にかなっています。ひょっとして注射手技にばらつきがあって、その結果何らかの副作用が生じうるものならば、多施設でデータを取れば、特定の施設でトラブルが多い、となるでしょう。それを検証なさってます。
もっとも、理屈から考えると、そんなに注射手技は、重要じゃないはずだけどなあ・・。
bFGF(フィブラストスプレー成分の遺伝子組み換えのもの)の分子量は、1.7万、ヒアルロン酸は100万以上、ヒアルロン酸注射のあと、マッサージなどでなだらかにするのは、分子量が大きい故です。bFGFの分子量はぜんぜん大きくないから、注射すれば、組織内を普通に拡散するはず。
血小板から放出される成長因子は、ヘパリンとくっついてるだろうから、もう少し分子量大きいでしょう。しかし、bFGF添加しないPRP療法で、しこりが生じたって話は、聞いたことがない。だから拡散とか、施術後のマッサージが云々てのは詭弁でしょう。
ついでに記しておくと、w-PRPといって、白血球を混和するとPRP療法の結果がいいんじゃないか?てのも、pubmedで調べた限りでは理論的根拠があやしい。ていうか、それ以前に、白血球なんて、必要があればすぐに血管内から組織へと遊走して来るじゃん。わざわざPRPに加えなくても。
ついでに記しておくと、w-PRPといって、白血球を混和するとPRP療法の結果がいいんじゃないか?てのも、pubmedで調べた限りでは理論的根拠があやしい。ていうか、それ以前に、白血球なんて、必要があればすぐに血管内から組織へと遊走して来るじゃん。わざわざPRPに加えなくても。
血小板は違う(赤血球もだけど)。創傷が生じて血管が破壊されない限り、組織へは出ないし、そもそも破れた血管壁修復が血小板の役割です。だから、白血球や、繊維芽細胞呼び寄せて、「ここを優先的に修復してくれ」というサインを出す。この性質を利用して、本来なら存在しないはずの組織中に血小板を入れて、そこを修復させよう、というのがPRP療法。
塩化カルシウムなどで、血小板を活性化させてから入れる必要も、そもそも無い。なぜなら、組織ってのは、血小板が本来存在すべきところじゃないから、コラーゲンとかに反応してすぐに活性化されるはず。歯科治療とかで活性化させて使ってるのは、ゼリー状にして充填するためですね。使い方が違う。
塩化カルシウムなどで、血小板を活性化させてから入れる必要も、そもそも無い。なぜなら、組織ってのは、血小板が本来存在すべきところじゃないから、コラーゲンとかに反応してすぐに活性化されるはず。歯科治療とかで活性化させて使ってるのは、ゼリー状にして充填するためですね。使い方が違う。
ちょっと考えれば、普通に学生時代勉強した知識で、想像できる話なのに、成長因子入りRPR療法で、しこり作っちゃった医者が、マッサージの手技やら、白血球を混ぜる割合だとか、おかしな文章連ねて自己弁護してるの見かけたんで、ちょっと蛇足までに。
(注1)なぜ一回の成長因子注射で、数ヶ月間活性が続くかというと、真皮の繊維芽細胞や脂肪組織内の幹細胞には、成長因子によるautocrine機構があるからと思われます。
bFGFの刺激を受けて活性化した細胞は、自身bFGFを産生して、自分自身あるいは周囲の細胞の活性化を維持します。これが、in vivoでは、数ヶ月続くということだと考えられます。
(2012年2月9日記)