ヒアルロン酸によるチンダル現象とPRPでアトピーが良くなるかもしれないお話

 
鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は12月2日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は1月5日(木曜日、10:00-18:30)です。7ヵ月後の来年8月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。
 
ヒアルロン酸というのは、透明なジェル状の物質です。そのため、注射したあと、透けて青白っぽく見えることがあります。これをチンダル現象と呼びます。
「打つ深さが浅いとチンダル現象を起こす」と言われています。そういうケースもあるでしょうが、逆は真ならずで、「チンダル現象を起こしたらそれは打つ深さが浅かったということだ」とは必ずしも言えません。皮下組織が乏しく、皮膚のすぐ下がもう筋肉(眼輪筋)な方の場合には、適切な深さに打ってもチンダル現象を生じます。
 
施術前。目の下(鼻側)の凹みを気にしています。
 

注射後。凹みはちょうどいいくらいに底上げされていますが、注射部位が少し青白いです。これがチンダル現象。


斜めから見たところ。施術前。


施術後。凹みの部分にきれいに入って凹凸是正の観点からは上手に入っています。これ以上深いと眼輪筋の中に入ってしまいます。自分で言うのもなんですが、なかなかこれだけ綺麗に目の下にヒアルロン酸打てる先生少ないと思います。


 この方、このチンダル現象(打った後が少し青白い)を気にして来院されたのですが、写真のbefore/after見て、ご納得いただいてお帰りになりました。その際、ブログでの写真利用についてもご快諾いただきました。
 
膨らみはちょうど良いのですから、ヒアルロニダーゼで溶かしてしまうのはもったいないです。お化粧工夫するといいでしょう。凹凸はお化粧で隠せませんが、色は隠せます。

さてPRP(多血小板血漿)注射の話もひとつ。PRPは上記のような目の下の凹みを埋めるようなダイナミックな効果は期待できませんが、肌質は良くします。
 
私は現在、美容(プチ整形)のクリニックをやっていますが、昔はアトピー性皮膚炎が専門の皮膚科医でした。その関係もあって、アトピーの方が首のしわ・萎縮の改善目的でいらっしゃることもたまにはあります。今日いらっしゃったお客さんが、
「PRPをしたところは、本当に湿疹が出なくなるんです。今日は、首のしわではなくて、アトピーの残っている別の場所に打ってもらってもいいでしょうか?」
とおっしゃいました。
症例は少ないですが、私も以前から同じことを感じていて、アトピーのほうのブログにも記しています(→こちら)。
この方の経過写真を並べてみましょう。

初診時、PRP一回目施術前。

8ヵ月後、PRP二回目施術前。

1年6ヵ月後、PRP三回目施術前。

2年5ヶ月後。

首の横じわが目立たなくなって、鳥肌のようなぶつぶつ(毛孔など皮膚付属器)の間がコラーゲンで埋まってなだらかな質感になりました。湿疹も良くなっています。

興味深い話ではあるのですが、アトピーの患者さんに「湿疹が良くなるかもしれない」とPRPを勧めることができるかというと、ちょっと抵抗があります。それは、アトピー性皮膚炎が病気であり、PRPの施術が患者たちにとっては高額であろうからです。

昔患者を診ていたからよく知っていますが、成人のアトピー性皮膚炎患者たちというのは、普通の人より日常生活を送るのに手間やお金がかかります。休職したり入院したりして経済的に困窮する人も多く、高額なPRPの施術を安易には勧められません。

上の写真の方のように、現在は比較的症状も軽く、首のしわなど美容に関心もあって、その目的でPRPを試して、たまたまアトピーにも効いた、ということなら良いんですけどね。
深刻に思いつめた患者に「アトピー良くなるかもしれないよー」って軽い乗りでは勧められません。

しかし、本当によくなるのなら朗報です。だから、ブログにも記しました。その一方で、このブログ記事を見た東京かどっかの美容クリニックが、ビジネスチャンスと考えて、高額なPRPの施術をアトピー患者に売りつけ始めたら私も寝覚めが悪いです。それで急きょ10人くらい集めて有効性の検証を行ってみようと思い立ちました(→こちら)。

仮に有効性が検証されたら、私はアトピー患者にいくらで施術したらいいのでしょうか?・・うちのPRP料金は一回5万円です。市販のキットを使った他院での施術の相場は30万円くらいでしょう。なぜうちが安いのかというと、自分でキットを作っているからです(→こちら)。しかし、経済的に苦しいアトピー患者にとっては一回5万円でも負担だと思います。そもそもうちのクリニック、これ以上予約は入れられません。
どうしたらいいのか、目下のところ良いアイデア浮かばないのですが、とりあえず検証は行ってみます。
 
ところで、このPRP療法、再生医療とみなされていて、施術するには届出と委員会の審査が必要です。委員会の審査は最初に数十万円、その後も毎年30万円くらいの審査料が発生します。これもまた、PRP施術の価格を上げる要因となっています。
しかし、そもそもPRP療法、本当に再生医療に含まれるのでしょうか?末梢血中の血小板というのは、細胞膜を持っていますから、分類としては「細胞」なのかもしれませんが、核がないので分裂増殖できず、培養も出来ません。そんなものを用いた施術が再生医療だろうか?
日本以外のどこの国もPRPに規制などかけていないと思います。
厚労省の専門委員会議事録では、少なくとも平成25年1月30日の時点では、PRPは「細胞を用いない治療」であり、法の対象外でした。
http://www.mhlw.go.jp/.../2r98520000.../2r9852000002r9wo.pdf
のp9参照)
議事録を読んでも宮田委員の
「そうすると、ここの濃厚血小板血漿は違うぞと書いてあるけれども、例えばiPSで血小板を作ったときに一体どのように考えるのか。」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002r9yd.html
というように、iPS由来の血小板はともかく通常のPRPは法の範囲外として認識されていたようです。
以降この委員会は10回開かれましたが、PRPが議題になることはありませんでした。
それが、法の成立後、平成26年11月21日の厚労省の事務連絡(Q&A)
http://www.mhlw.go.jp/.../06-Seisakujouhou.../0000066137.pdf
で、「PRP は細胞加工物であるため、法の対象である。」と通達されて、皆が何の疑問も抱かずに従っているわけです。
なぜ委員会で当然のようにPRPは細胞加工物ではないと扱われていたのに、厚労省が「PRP は細胞加工物であるため、法の対象である」と通達したのか、ほんとに謎です。
 
先日抜け道ひとつ思いつきました。最終的に出来上がったPRP液にCa加えて活性化したあとで、もう一度(3回目の)高速遠心加えてその上清を用いるという方法です。
活性化により血小板から成長因子が放出されて(測定すると濃度で活性化前の2/3くらい。1/3は血小板にくっついたままのようです)います。上清には血小板含まれていませんから、規制対象外となります。
ただ、ひと手間加えて、量・濃度とも少ない成長因子液を作るわけですから、ちょっとばかばかしいです。
 
ちょっと憤慨して熱く書きすぎて長くなってしまいました。最後まで読んでくださってありがとうございますm(_ _)m。
たかがPRPされどPRP。たしかに他の施術では出せない効果があります。しかし私の感覚では、一回に5万円以上支払ってするような施術ではないと思います。一回に30万円請求したら、そのお客さんはきっとリピートしてくれなくなるでしょう。長い眼で見ると損失です。
 
施術代金は、原価計算ではなく、お客様感覚で決めたいと昔から思っています。すると原価をいかに安くするかという工夫に自ずからなっていきます。そうなると委員会の審査料もなんだか無駄でいまいましく思えてくるというわけですね。
(2016/11/15 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

ドイツからアンジェリーナが来ました

 
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アンジェリーナと会ったのはロシアのアラのところに勉強に行って時だから、もう十数年前になります。東京の伊勢丹で働いているロシア人女性で、たまたまウラジオストックに帰っていてアラのお客さんで居合わせて、日本語の通訳してくれてずいぶん助かりました。
今はドイツ人と結婚してドイツに住んでいます。久しぶりに日本に来たので、糸の追加入れのために立ち寄ってくれました。
術直後、麻酔から覚めて元気になったところでの、スタッフのともちゃんとのツーショット。


開業して間もないころに、ホームページで使うモニター用の写真(その後リニューアルしたため今はないです)撮影のため、糸入れたときの写真がこちら。

それから早いもので、12年経ちました。現在の写真と、今回追加して糸入れた直後の写真がこちら。・・同じピアスしてますけど、上の写真の12年後です。


 「変化がわかりにくい」という方のために、マウスオーバー画像作ってみました。カーソルを下の画像に当てると、Before/Afterが入れ替わります(PCのみ)。
 
(法令線が浅くなって、顎から耳にかけてのラインがシャープになったということです。ロシアの方は骨格が日本人と違うので判りにくくてごめんなさい)

  開業間もない頃に糸入れた方なので、長期予後の参考になると思います。
同じ年頃のロシア人と比べると圧倒的に若く見えます。
私も混ざって3人で記念写真。術直後ですが、笑顔で満足度が伝わると思います。

私が手に持っているのは、ドイツ人の旦那さんのお父さんが作っているハチミツで、とても品質のいいものだそうです。ネットで探したらありました↓。
http://deutscherimkerbund.de/226-Echter_Deutscher_Honig

おまけです。先日日本美容医師会のハロウィンパーティーに行った時の記念写真。品川から六本木までリムジン借りました。片道3万7千円(往復7万4千円)で8人乗りだから、割れば1万円切ります。意外とお得ですよ。

 動画もUPします。スタジオの和子先生(→こちら)、医局の後輩で50代の会の仲間の有美先生(→こちら)、クオールのあさこ先生(→こちら)、チュチュシュシュでコラボしている咲江先生(→こちら)、私も含めて全員50代、日本美容医師会は、主導する池田先生(リムジンで私の横の黒いマントの先生)ほか30代~40代の先生方が多いと思うので、交流して良い意味で切磋琢磨して頑張りたいと思います。
https://youtu.be/DMzprBs1AKM 
(画像をクリックすると動画サイトが開きます)
(2016/11/04 記)
鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

厚生労働省の行政指導に従いました

 
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私はヒアルプロテクトという中間分子量ヒアルロン酸化粧水を製作販売しています。その通販サイトの記載に問題があるとして、名古屋市を介して厚労省から指導がありました。
 

決して納得はしていないのですが、互いの労力の無駄を考えて従うことにしました。どういった指導で、私がどのように納得していないのかについては、通販サイトに記しましたのでご参照ください(→こちら)。
 
指導は名古屋市の方が担当なさっていますが、厚労省からの指示なので、とおっしゃっていましたから、誰かが厚労省に働きかけたのだろうか?と思います。通販サイトのリンク先に記したように、カルピス社の乳酸菌など、大々的に宣伝広告されているものは放置されているので、厚労省がネット上をパトロールしていて見つけたということでは無さそうです。
  
これは推理の域を出ませんが、厚労省に働きかけたのは、顧客(消費者)ではなく医療関係者であろうか?と思います。なぜかというと、
 
1) 顧客(消費者)からであれば、直接私のほうに寄せられるか、国民生活センターに届けると思います。これまでに「薬事法違反ではないか」という問い合わせ・クレームは直接にも国民生活センターからも来ていません。
2) 直接厚労省に働きかけるというのは、厚労省や薬事法に詳しい方の発想です。
3) 指導票に記載されているような「ステロイド外用薬によって皮膚が薄くなる副作用を防止する効果」というのは、特に皮膚科医や小児科医にとっては、伏せておきたい話です。それを堂々と化粧品の通販サイトに書かれたとあっては、面白くないと思います。
 
とにかく指導には従うことに決めたので、こちらのブログ内記事の該当部分にも、修正を加えました。「以前読んだのと少し内容が異なる」と思われた方のために、ここに説明しておきます。
 
さて、私は行政指導に従うことには決めたのですが、そうなると上記リンク先に記したカルピス社の乳酸菌の件がどうにも気になります。そこで、下記のような問い合わせを厚労省にしてみることにしました。
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厚生労働省医薬生活衛生局監視指導麻薬対策課 御中
460-0012 名古屋市中区千代田5-20-6
鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継
謹啓
小生は名古屋市内で開業する医師ですが、最近YAHOOのフロントページにて、カルピス社の下記のような広告を目にすることが多いです。
このバナーおよびリンク先サイトは、医薬品医療機器などの品質有効性および安全性の確保に関する法律68条および健康増進法第32条に抵触すると考えますが、行政指導はなされているのでしょうか?
ご回答お待ちしております。よろしくお願いいたします。
平成28年10月28日     謹白
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2003年12月12日の日経メディカルの記事「【専門記者の目】 食品のエビデンス発表は「より厳密に」 花粉症対策品の記者発表で気になったこと」(→こちら)に、カルピス社の乳酸菌発表当時の話が記されています。これを読むと、この問題は業界にとってかなりデリケートなものであることが解ります。

はっきり断っておきたいのですが、私はカルピス社の乳酸菌や、その宣伝広告内容が問題だとは思っていません。

1) なぜ、大々的に宣伝広告しているカルピス社が放置で、うちに行政指導が来たのか?
2) 私が厚労省にこのような手紙で問い合わせたときの厚労省の動きはどうなのか?(カルピス社に行政指導はなされるのか?)
に関心があります。

この問題のいちばん良い解決法は、ヒアルプロテクトにしろ、カルピス社の乳酸菌にしろ、有用性を示すデータや根拠となる論文の紹介を禁じるのではなく、そこは自由にして、そのうえで「医薬品としての厳密な評価がなされて医薬品として認定されたものではありません。あくまで化粧品・食品です」という一文を明記させることだと思います。この点における厚労省の法の解釈・運用が妥当とは言えない、と私は考えます。
皆さんはどうお考えになりますでしょうか?

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継