HPリニューアル原稿:しわ取りーボトックス

 厚労省の方針で、美容外科のHP中の、単純な「before→after」の写真解説が、今年中に規制されて出来なくみたいです。誤解を招きやすいからだそうです。
 それで、HPのリニューアルに向けて、基本的な事項をまとめていこうと考えました。写真は入りますが、単純な「before→after」でなく、むしろ詳細な経過写真と解説なら、趣旨から考えて許されるのではないか?と今のところは考えています。
 HPのリニューアルのためなので、ところどころ、現在のHPやブログの写真と重複しています点、御了解ください。

まず、しわには「表情しわ」と「固定しわ」があるということを、認識ください。
表情しわというのは、お顔の表情筋の動きに伴ってできるもので、目の横の「笑いじわ」が典型です。ほかには眉間の縦じわ、おでこの横じわがあります。
ボトックスは、「表情しわ」を和らげる注射です。
 左は、ボトックス注射をする前の笑顔、右はボトックスが効いている状態での笑顔です。目の横のしわ(いわゆる「カラスの足跡」が出来なくなりました。

この注射は、だいたい6ヶ月効果が持続して切れていきます。効果が切れると元に戻ります。
 「なあんだ、6ヶ月しか効かないなら、意味ない。」
と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
ボトックス注射には二つの意味があります。
①薬が効いている間、表情じわが出来ない。
②将来的な固定じわへの進展を先送りにする。
です。
カッターシャツをくしゃくしゃっと丸めては伸ばすところを想像してみてください。シャツはどんどんシワだらけになって、くせが付いてしまうことでしょう。この「くせ」が「固定じわ」に当たります。
ボトックスを打ってやると、「くしゃくしゃっと丸めて伸ばす」ことが無くなりますから、皮膚は、固定じわへと進展しにくくなります。
これは、実は、ボトックスを打たなくても、「気合い」というか、訓練でも可能です。昔の舞台女優さんは、年をとっても眼周りにしわの少ないひとが多いです。なぜかというと、舞台ではどうらんで厚化粧しますから、目元で笑うと割れて崩れてしまいます。それで、おのずから、口元だけで笑顔を作って、目元に過度に力を入れない、美容的に「正しい」笑い方が身に付くからです。
女優さんは、職業柄、気合でもってこれが出来ますが、常人はなかなかそうはいきません。そこで、手助けをしてくれるのが「ボトックス」です。意識せずに女優さんと同じような「正しい」笑顔が身につきます。
ときどき「目元にボトックスを打つと、思いっきり笑えなくて、不自然な感じがするから私は嫌だわ。」とおっしゃる方がいますが、これはボトックスを正しく理解していません。ボトックスのほうが正しいのです。ボトックスに従ってください。矯正下着を身に付けるようなものですね。
女性は、毎日鏡でお顔を見ていますが、動画的な「表情」としての老化には、案外気がついていないことが多いです。それで、若い頃のように愛嬌笑いをしているつもりが、自分では気付かず、おばさん笑いになっていたりします。お顔は静止画と動画でまったく違う、まずはこの点を強く認識してください。

上がボトックスが切れている状態、下がボトックスが効いている状態で、同じように笑ったところです。印象違うでしょう?(開業した2003年頃の私の写真です)。

☆合併症(注意)

作用させる筋肉の解剖を考えて打つ必要があります。といっても、そんなに難しいことではなく、基本は、「表情じわを挟んで両側に打つ」という感じです。


目の横(笑いじわ)を取るときの注意

一番上の外人さんの写真を見るとわかりますが、外側の「カラスの足跡」は消えますが、代償的に、鼻近くの筋肉の収縮が若干強まることがあります。全てのひとに起きるわけではありません、たとえば、上の私の写真では、そういう症状は起きていません。
次回に打つボトックスの量をやや少なめにするといいです。

眼球の運動を司る筋肉群は、眼輪筋よりも深いところにあるのですが、この筋に作用が及ぶと、軽い複視が現れることがあります。「軽い」というのは、ある方向(上のほうとか)を向くと、物が二つに見える、といった程度という意味です。数ヶ月でボトックスが切れると元に戻ります。

眼の周りのしわを徹底的に出なくしようとして、眼周りからやや離れたところまで打つと、頬骨筋に作用して、口角が上がりにくくなります。これも数ヶ月で効果が切れて元に戻ります。

複視と、口角の挙上不全は、開業して8年で、延べ数千人にボトックスを打ったと思いますが、初期のころに、それぞれ一例づつ経験しました。まれですが、そういった合併症は起こりえます。しかし待てば回復する話で、お二人とも、その後も引き続き、ボトックスを打ちにいらっしゃっています。

眉間・おでこのシワを取るときの注意

これは、わたしの写真で説明します(開業のころのものなので、今より若いです)。
まず、おでこにボトックスを打つ前。人と話しているときに、前頭筋が収縮しておでこにしわが寄りやすかったです。

ボトックスが効くと、前頭筋が動かなくなり、しわができなくなります(3ヵ月後)。


6ヶ月ほどすると切れてきます。

それで、また、青点の個所に追加して打ってやります。

すると下写真のように、ふたたびしわがのびてつるつるおでこになります。

これを繰り返していると、おでこに固定じわ(深いくせじわ)ができるのを先送りに出来ます。
ここで、眉の形に注目していただきたいのですが、
4と5の写真を比べると、眉の鼻側が下方に下がっているのがわかります。1の写真では前頭筋だけに打っているのですが、4の写真では鼻根筋・皺鼻筋にも打っているからです。
やや凛々しい感じになります。私は男なので、これでもいいのですが、女性だと、少し険しい印象になるかもしれません。量によって調節可能です。初回打つときには予測が難しいので、次回打つときに少なめにして調節します。それまでは、眉の書き方を工夫するなどして、やり過ごしてください。
この眉の下がりも、全てのひとで起きる現象ではありません。また量の調節で対処できます。
下は、うちのスタッフの1人に百面相させたところです。

図のようにボトックスを打ってやります。
すると、
こんな感じで、上方視したときには眉は内側で下がりますが、ふだんのお顔では眉の下がりはみられません。
このスタッフも愛想がよくて、お客様受けが良く、わたしは重宝しているのですが、若いうちはお顔の表情の豊かさは愛嬌でよいですが、ある年齢からは、むしろ抑えていかないと、愛想が逆にシワを晒すことになって、対人印象的に逆効果だったりします。
女性として、あるいは人間としての、人生戦略で考えたとき、ボトックスは活用できます。武器になります。
ボトックスは「ボツリヌス菌毒素」ですから、名前だけ見てるとなんだか怖いです。もちろん生きている細菌そのものではなくて、それが産生した毒素(トキシン)を精製したものです。
ですが、これを「細菌兵器」として、自分の人生、とくに対人関係や自信のために活用することは、平和利用かな?なんて、思います。
 「自然に年をとりたい」といった綺麗な言葉を時どき聞きますが、私は、開業して、この仕事を始めて、つくづく思うのですが、自然に綺麗に年が取れるなら、誰もこういうことはやらんわけですよ。年齢というのは、どう考えても、人生にとっては「敵」であって、これを打ち勝つことはできないまでも、戦いを放棄したら、なすがままに侵略されるだけのことです。
黒い猫だろうが白い猫だろうが、使えるものは総動員して、防衛に心がけることが、結局は幸せな長生きにつながることなんじゃないかと感じます。

☆製品と価格について

ボトックスはアメリカのAllergan社の製剤名ですが、同じボツリヌストキシン製剤は、中国や韓国でも作られています。「ボトックス」はいまや製品名というよりは一般名化していると考えて、これら他国製の類似品を「ボトックス」とメニューに表記しているクリニックもあります。
わたしは、初発品である、Allergan社の純正品にこだわっていて、これ以外は使いません。理由は、
中国製・韓国製の製品は、まだまだ信用が置けないから
です。
自分やスタッフ、家族に打つことを想定すると、やっぱり純正品以外使いたくないですね・・。仕入れはどうしても高くなるけれど。
わたしは使っていないので、学会などでの口コミ伝聞ですが、中国製のものでは、不純物の混和のためか、抗体ができやすかったり(ボトックスの場合、抗体ができてしまうと、そのあとは、いくらボトックスを打っても中和されて効かない体質になってしまいます)、効果が弱かったりするようです。

価格は、Allergan社のボトックス換算で一ヶ所2.5単位として、4箇所(10単位)で3万円、8箇所(20単位)で5万円です。
ボトックスに関しては、中国韓国製品で代用しようと思えば、安くなるし、また、打つ量を少なくすれば、これまた原価安く出来ます。だから、「あそこのクリニックは4箇所打ってくれたけどこんなに安かった」なんてのは、絶対当てになりませんよ。
ボトックスをあまりに安く打ってるところは、何か理由があります。まあ、あとは消費者である患者さん(というかお客さん)の選択次第ではあるのですが。
えら(咬筋)には、左右30単位ずつで9万円、両わきの汗止めにも、左右30単位ずつで9万円で打ってます。
(注:「単位」で書いていますが、これは、Allergan社の製品における「単位」です。ほかの製品もそれぞれ「単位」で現されてますが、共通ではありません。Allergan社の1単位が、他社製品の2~3単位分相当だったりします。)
(2012年1月22日記)