HPリニューアル原稿:しわ取りーヒアルロン酸について

 厚労省の方針で、美容外科のHP中の、単純な「before→after」の写真解説が、今年中に規制されて出来なくみたいです。誤解を招きやすいからだそうです。
 それで、HPのリニューアルに向けて、基本的な事項をまとめていこうと考えました。写真は入りますが、単純な「before→after」でなく、むしろ詳細な経過写真と解説なら、趣旨から考えて許されるのではないか?と今のところは考えています。
 HPのリニューアルのためなので、ところどころ、現在のHPやブログの写真と重複しています点、御了解ください。
 
 ヒアルロン酸というのは、透明なジェル状の物質です。
 当院では、スウェーデンのQ-med社のレスチレインしか使いません。いちばん歴史が長く、定評のあるブランドだからです。
 1mlのシリンジに入っています。動画をご覧ください。
            (画像または→こちらをクリック)
これをシワの溝に打って、シワを広げて伸ばしていくわけです。あるいは、鼻やあご、法令線やこめかみなどの深いところに入れてボリュームを出していきます。

 わたしの写真で具体的に解説しましょう。
 左目(向かって右)が、三重になって癖じわがついています。これを右目(向かって左)に合わせて同じような二重にしようと思います。
下の写真は左目を大きく開いて眉を吊り上げたところ。癖じわ(固定じわ)ですから、お顔の筋肉を動かしても、変りません。
三重の、上のラインのところにヒアルロン酸を打っていくと(鏡で見ながら自分で打ちました)、凹んでいるところがヒアルロン酸で押し広げられて平坦になるので、しわが取れます。左右が揃いました。
これがヒアルロン酸の仕事です。

☆PRP療法について

 PRP療法と言って、自分の血液から採取した血小板濃厚血漿を、注射する施術がありますが、これは、施術の仕方が、ヒアルロン酸のように注射器で打っていくので、ヒアルロン酸に似たものだと思い込んで、比較する方がいますが、ヒアルロン酸とPRP療法とは、機序も結果もまったく異なるものです。例えば、PRP療法で上の写真のように三重を二重にするような結果は絶対に出せません
 
 PRP療法というのは、血小板農厚液を注射するわけですが、血小板そのものには、ヒアルロン酸のようなボリュームを出す力(体積)はありません。血小板が放出する成長因子の作用に期待して、だいたい2ヵ月後の効果を予定します。なおかつ、血小板は、注入されたところで必ずしも成長因子を出すわけではなく、組織に傷があるところ、痛んだところに接触して、そこで成長因子を放出します。あるいは活性化後のPRPを注射する方法であれば分子量が小さいですから周辺に拡散します。ですから、結果がピンポイントに出ません。非常に不確実なものです。欧米では、スポーツ選手の痛んだ靭帯を速く治す目的で、患部に注射することが多いです。

 わたしは、PRP療法というのは、ヒアルロン酸など、ボリュームを出すフィラーの仲間ではなく、むしろ、レーザーやフラッシュ光線による皮膚の若返りの仲間だと考えています。繊維芽細胞に働きかけてコラーゲンの産生を促すなど、何がしかの効果はあるでしょうが、それは注射を受けたあたりの皮膚に張りがでるといったような、全般的な「面」としての効果です。ヒアルロン酸に似ているのは、注射器を使って注入するという点だけです。

 ヒアルロン酸を上手に打てない医師が「ヒアルロン酸はもう古い。これからはPRP療法の時代だ」などという、的外れで誤った情報をブログに書いているのを見たことがあります。惑わされないでください。

 下は、ヒアルロン酸を、うちのスタッフの目の下の窪みに打ったことろです。

(注:ヒアルロン酸は下図の赤丸のように打ちました)
眼の下のクマのような凹みが、ふっくらとなだらかになった(左→右)のがお解りでしょう。これと似た効果であれば、PRP療法で出せるかもしれません。しかし、わたしは、現時点ではまだまだヒアルロン酸のほうが優れていると考えており、PRP療法を自院のシワ取りメニューに加えようという気になりません。それは、PRP療法は、造形的に、結果が安定しないからです。

 PRP療法の結果は、2ヵ月待たなければなりません。患者の訴えは、非常にデリケートです。私は脂肪注入もやらないのですが、PRP療法をやる気が起きないのは、脂肪注入をやらない理由に似ています。脂肪注入は注入した脂肪がすべて定着するわけではなく、数ヶ月で1/3~2/3に減ります。最終的な結果を予想しにくいです。

 ヒアルロン酸の場合は、注入して直後に、結果がはっきり出ますから、偶然が左右しません。自分の仕事の結果がはっきり出ます。わたしは、そういう施術のほうが好きです。ピンポイント的なお客様の満足につながるからです。

☆アクアミドについて

 アクアミドというのは、非吸収性のフィラー(注入物)で、ヒアルロン酸と組み合わせて使うことが出来ます。
 安全性や問題点については、以前まとめました(→こちら)。この見解は現在も変っていません。
 ヒアルロン酸に比べると、アレルギーも起こしにくく、歴史も古いです。注意点は、非吸収性なので、多量に入れると、年月とともに、重力でもって下がってくるので、多く入れすぎないこと、です。

 下図はわたしの母親の写真(このとき70才)ですが、
 (画像をクリックして拡大すると解りやすいです)

 左の写真は施術前です。
 中は、法令線と口横の深いしわに、アクアミドを注射したあとです。
 右は、そのあと、口周りの細かいしわをヒアルロン酸で埋めたところです。

 7年後(77才)が下図(左)です。
(画像をクリックして拡大すると解りやすいです)
アクアミドは非吸収性なので、アクアミドを入れた法令線や口横のへこみは埋まっています。しかし、全体に、しぼんだような細かいシワが増えています。ここにはヒアルロン酸がいいです。右図はヒアルロン酸で整えたところです。

 アクアミドというのは、このように、ある程度年齢のいった方の、深いしわや凹みに、ヒアルロン酸で整える前の基礎工事的に用いるのがよいと考えます。ヒアルロン酸よりも粘調度が高いので、細かい仕事には向きません。また、一番気をつけなければならないことは、量的に入れすぎないことです。目安としては、入れる個所にもよりますが、お顔全体で2~3mlくらいかなあ(人生を通してトータルでの量でです)。

 過去にロシアや中国で起きたアクリルアミド製剤のトラブルは、豊胸目的などで、大量(数十~数百ml)に入れた場合に、重力で下がって移動してしまうことによって起きています。少量であれば、アクアミドの成分であるアクリルアミドは、組織に水分を引かれて半乾燥状態になるので、安定してそこに留まっています。
 アクアミドというのは、正しく使えば、かなり便利で有用だと思うのですが、おかしな使い方をされて、評判を落としてしまったようなところがあります。ネットでは、「アクアミド=非吸収性フィラー=悪」っていう、何かおかしな脊髄反射的な噂が立っていたりして、私も読んだことがありますが、そんなに悪い製品じゃないですよ。仕入れ値は、ヒアルロン酸より高いし、利益率高くないので、私としては別にアクアミドを擁護する義理もメリットも無いのですが、ちょっとアクアミドが可哀想な気がして擁護して書いています。
 FDAの認可が遅れているのは、そりゃあそうでしょう、デンマークの製品です。アクアミドを認可しても、アメリカの利益になりません(アメリカってそういう国です)。

☆合併症について

 ヒアルロン酸の重大な合併症は二つあります。
1)アレルギー
2)壊死(小動脈塞栓)
です。
 重要な問題なので、こちら(→ここ)に詳述してあります。ご参照ください。

☆価格について

 ヒアルロン酸(レスチレイン)0.5mlで3万円、1mlで5万円が目安です。
 1mlを越えると、2本目(計2ml)は4万円(計5+4=9万円)、3本目(計3ml)は3万円(計5+4+3=12万円)です。
 もっとも、これは、最初の見積もりによるので、例えば、わたしが、「あなたは5万円でいいでしょう」と見積もって、実際に打ってみたら1mlでは足らなくて2本、3本と入れざるを得なかった場合、それでも最初の見積もり通り5万円です。

☆麻酔について

 当院では、テープや塗り薬の麻酔は使っていません。以前は使っていたのですが、ヒアルロン酸注射の痛みは針の痛みではなくて、深い部分に注入されるときの圧の痛みなので、あまり鎮痛効果が期待できず、かぶれることもたまにあるからです。

痛がりのかたには、笑気麻酔や静脈麻酔を行います(申し出てください。別料金はかかりません)。
(2012年1月24日記)