HPリニューアル原稿:ほくろについて

 厚労省の方針で、美容外科のHP中の、単純な「before→after」の写真解説が、今年中に規制されて出来なくみたいです。誤解を招きやすいからだそうです。
 それで、HPのリニューアルに向けて、基本的な事項をまとめていこうと考えました。写真は入りますが、単純な「before→after」でなく、むしろ詳細な経過写真と解説なら、趣旨から考えて許されるのではないか?と今のところは考えています。
 HPのリニューアルのためなので、ところどころ、現在のHPやブログの写真と重複しています点、御了解ください。

ほくろ取りには、CO2レーザーを使います。

価格は、小さなもので1個3千円、中・大きなもので5千円~1万円ですが、お顔などで10~20個まとめて取る場合は3万円ポッキリ、20個以上の場合は5万円で打ち止めです。
しみとかミリウム(眼の周りに出来る白い小さなつぶつぶ)小さなアテロームでくりぬき法で取れるものなんかは、サービスで一緒に取っちゃいます。
取り方ですが、まずは、CO2レーザーで紙を切り取る下の動画をご覧ください。
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切り取った紙を拡大した画像が下図です(ガーゼの上に孔のあいた紙を置いたところです)。
紙の切り取り端が、ほんのわずかに焦げて、その先はまったく焦げてないことがお解かりでしょう。このわずかに「焦げる」というところがミソで、止血作用があります。なので、CO2レーザーで切り取るとほとんど出血しません。すなわち、ギリギリ、寸止めで切除でして、ダメージが最小限で済むわけです。

スタッフの1人に、頭にできた色素性母斑(色の無いほくろの一種)があったので、それを取ったときの動画を示します。
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頭皮というのは、出血しやすいところで、ここに例えばメスを入れると、ダラダラと血が流れて、視野がさえぎられ、ギリギリの切除(美容的切除)が出来ません。

切除したあとダーモスコープで拡大してやると、
こんな感じです。切り取った下床に、毛根が残っているのが解るでしょう。ということは、切除したあとは、このままオープンのまま治癒させても(縫わなくても)毛はまた生えてきます(はげになりません)。ですから、CO2レーザーをつかったギリギリ切除は、美容的施術に向いています。

大きいほくろは、上のような「切り取り」モードで除去しますが、ちいさなほくろで切り取りに向かない場合は「蒸散」というテクニックを用います。
再び動画で説明します。

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これは、CO2レーザーを少し離して焦点をぼかして、「面」として照射する方法で、レーザーと対象との距離を合わせることで、ホクロよりやや大きい「面」全体に当てて、面として薄く削りこんでいく手法です。
これで、ちいさなホクロを取っている様子の動画がこちらです。
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照射して削り込んだあと、焦げて炭化した組織は、ほくろが取りきれているかどうかを確認する邪魔になるので、透明な生理食塩水で拭き取ります。

ダーモスコープで拡大した画像はこちらです。
施術前

CO2レーザーで蒸散した直後。焦げた組織が付いています。

生理食塩水で拭き取ったところ。この拡大レベルでの取り残しは無さそうです。
一週間後。順調に治癒しています。もう絆創膏も必要ありません。
あとは、擦り傷あるいはニキビ跡が治るように治っていきます。

(別のスタッフの写真です。治療前、1ヶ月後、3ヵ月後、半年後)
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☆施術後の注意

ほくろを取った後は、化膿止めの軟膏をつけた上で、絆創膏を貼っておきます。これはなぜかというと、浸出液で服などが汚れないようにというのと、もう一つ、湿潤な環境を保つことによって、肉の盛り上がりを促すためです。

ほくろを取ったあとは、イラストで示すと、下図のように治っていきます。
傷というのは、乾かすと、早く治ります。早く治ると、少しへこみが残ることがあります。4から5の過程で、絆創膏をあてて乾燥しないようにしておくことで(湿潤療法)、治りはややゆっくりになりますが、その分、肉の盛り上がりが期待できて、綺麗に直ります。

絆創膏をしておく期間は、大きさ・深さによりますが、小さなもので3~5日くらい、大きなもので2週間くらいです。1日1回交換したときに、ガーゼが汚れていれば続け、汚れてなければ、もうしなくていいです。生理のナプキンみたいに考えてください。汚れが付かなくなったということは、かさぶたが張って、乾燥して自前の絆創膏ができたわけだから、それ以降は不要です。

お化粧は、絆創膏あるいはそれに続く乾燥したかさぶたの上からなら構いません。かさぶたの上から何をいくら塗っても、いずれ剥がれて取れてしまうものだから大丈夫です。取った直後、生傷の上からお化粧をすると、傷が治る過程で、化粧品の粒が、お肉に取り込まれてしまいます(ちょうど刺青のようなことになります)。お化粧品というのは肌色ですから、目立たない・問題ないとはいえ、気分のいいものではないですから、控えたほうが賢明です。
傷の周りを避ければ、あるいは絆創膏の上から絆創膏ごとお化粧する分には全然問題ないです。

お風呂・洗顔も、当日から構いません。いまの日本の水道事情で、傷から感染しておかしなことになるなんてことはありえないです。絆創膏はあくまで、肉の盛り上がりを促すべく乾燥させないようにというのが主目的です。

かさぶたも取れて、5の状態になって、少しへこみが気になっても、さらに1~2年待っていると、気にならなくなることが多いです。なぜかというと、皮膚の瘢痕が硬いうちは、凹凸がくっきりしていても、軟らかくなってくると、周りから引っ張られて、平坦化するからです。赤みは、平均3ヶ月くらいで消えていきます。赤みがいつまでも残ることはありません。待っていてください。

☆悪性のほくろについて

1)肉眼的な診断

 下の図で、一番上は普通の良性のほくろですが、下の4つは、ほくろに似た悪性の腫瘍のはじまりです。非対称性や、色の濃淡(ムラ)、部分的な小結節などで判断します。

2)ダーモスコピー

とくに足裏や手のひらのほくろと悪性腫瘍の鑑別に有用な方法だと思うのですが(顔の場合は、肉眼的な診断で十分だと私は感じます)、拡大して、皮溝・皮丘との関係を確認することで、より診断の精度を高めることが出来ます。
例えば下図では、拡大することで、色素が皮丘・皮溝に沿って規則正しく線状に配列していることが確認できます。こういったものは良性のふつうのほくろです。

私のポリシーとしては、少しでも悪性の可能性のある場合には、絶対に施術はしません。最終的な診断確定としては、ダーモスコピーの所見を複数の皮膚科医が検討したり、やや大きめに拡大切除して病理組織検査に出す必要がありますが、それは、うちのような小さな美容自費診療クリニックで行うべきでない、手を出すべきではないと考えるからです。
明らかに、100%と良性と判断できるものしか、ほくろは取りません。もちろん相談にはのりますし、ご希望であれば紹介状もお書きします。
逆に言うと、当院でわたしが見て、ニコニコと「じゃあ取りましょうか」と言った場合は、即、「明らかに良性」なのだと考えていいですよ。こういうのは、シイタケとマツタケの区別みたいなもので、皮膚科専門医であれば、ぱっと見で、即断できます。ちょっとでも迷う例には私は決して手を出しません。
(2012年1月22日記)