CO2レーザーとエルビウムヤグレーザー


そういえば、昔、レーザーリサーフェシングが盛んだった頃に、この2機種を比較した論文が多く出ていたけど、どうだったのかな?と思いついて、検索してみました。

Pubmedですぐにいくつかヒットしたので、Pay per viewで一論文$30くらいでダウンロードします。今は図書館に行かなくても、お金さえ払えば、いくらでも医学論文が読めます。本当に便利です。

私は、医学論文を読むのが好きです。診療の合間は、たいていPubmedで、思いついたkey wordで検索して、興味のある論文見つけてはダウンロードして読んでいます。ここ数年は、毎月ダウンロード代10万円くらい遣ってます。まあ、他にお金かかる趣味ないから(^^;。

それでこういうデータ見つけました(表をクリックすると拡大します)。
(Comparison of carbon dioxide laser, erbium:YAG laser, dermabrasion, and dermatome: a study of thermal damage, wound contraction, and wound healing in a live pig model: implications for skin resurfacing. J Am Acad Dermatol. 2000 Jan;42(1 Pt 1):92-105.)

これ見ると、CO2レーザー1pass(1回照射)は、だいたいエルビウムレーザー5回に相当します(角層からの深さがそれぞれ70μmと80μmでほぼ同じになる)。それぞれに対応する、術後2日における真皮のダメージの深さは、120~150と180。あれっ?エルビウムの方がダメージ深じゃん。

もっとも、エルビウムを10pass行った場合と、CO2を3pass行った場合とを比べると、前者は深さ170で真皮ダメージ240、後者は深さ85~100で真皮ダメージ200~300で、CO2のほうが、ダメージ深いです。しかし、CO2とエルビウム、熱損傷はほぼ同じのようですね。

デルマトーム(大きなメスのような刃物)で削った場合には、角層からの深さ150に対して真皮ダメージ140だから、やはりメカニカルな操作は、レーザーよりも真皮ダメージ少ないです。

もしも、レーザーによる熱変性を問題視するなら、メカニカルアブレージョンでほくろ取ればいいんですよね。エルビウムは、炭化させないから、真皮からの出血も止まらないし、デルマトームやトレパンのような刃物で機械的に取るのと変わりません。

ガラス細工に使うルーターという道具があるんですが、これを使ってメカニカルアブレーションして取ることも出来ます。

実際、昔、わたし、国立病院勤務医の頃、これでほくろ取ってました。医療用のアブレージョン器具があったんですが、細かい仕事がやりにくい。それで東急ハンズで、これ買ってきて、滅菌して用いてました。麻酔無くても、さほど痛みを感じず、小さなほくろなら取れてしまいます。病院がCO2レーザーを買ってくれない貧乏勤務医としては重宝しました。

熱変性を重視して、CO2レーザーよりもエルビウムヤグレーザーの方が良いと主張する医師がいますが、なぜメカニカルアブレージョンに辿り着かないのか不思議です。

もう一つ、私の懐疑は、「CO2レーザーは炭化層が出来る=熱変性が大きい」というセオリーです。本当か?

高周波で皮膚焼くとき、周辺への熱変性は広いけど、炭化層作ってないでしょう?だから、炭化があるから組織ダメージが強いとは言えないと考えます。

桐の木は燃えるが桐タンスは燃えない」というサイトご覧ください(→こちら)。
一部引用します。

なぜ「桐箪笥は火に強い、燃えない」といわれるのでしょうか?
1つには、キリ材の細胞組織は他の樹種と大きく違って柔組織が多い。
また乾燥による収縮・変形が小さいために、燃焼によって割れや隙間ができない。
2つには、表面が燃えて炭化層ができること、これが高性能の断熱材とし働き、熱を内部に伝えにくくする。
この2つの理由によって、火災でタンスの中まで燃え尽きるには時間がかかると推測することができます。
小さいキリ箱を燃やす実験では箱の中の温度が100℃になるまでには8分ほどかかります。ですから、早く消火を行えばタンスの中の着物は被害をうけないといえるかもしれません。

(火事で焼けた桐たんす。中は焼けていません。)

ですから、私は、CO2レーザーで表面に薄い炭化層が出来ると、
1) 止血効果がある

ことに加えて、
2) 断熱効果がある

という、二つのメリットがあると思います。

独創性すなわちオリジナリティーというのは、要するに、自分の頭で考えるかどうか?ということだと思います。

オリジナリティーの強い先生、自分でデータを取ったり文献を調べたりして考えるタイプの先生(お医者さん)は好きです。たとえ自分と意見が違っていても尊敬します。できれば、議論して、いっしょに真実を突き止めたくなります。

私が軽蔑するのは、自分自身にオリジナリティーが無くて、そのくせ、「〇△先生がこう言っている」と、やたら他人の権威を振りかざす、「虎の威を借りるキツネ」的な医者です。そういう医者がネットで「虎の威を借りるキツネ」的な情報発信しているのに接すると、吐き気がします。 (→こちらに続く)
(2012年10月11日記)