国産のアートメイク色素作ります・その8


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は6月1日(木曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年1月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

その7(→こちら)の続きです。

PMDAの審査業務部にFAXして問い合わせました。
翌日すぐに電話にてお返事がありました。
まず、重要なポイントは、すべての医療機器というのは、政令(薬機法施行令別表第一(第一条関係))で、一般的名称が挙げられているという点です。すなわち、この表に挙がっていないものは、そもそも医療機器に該当しません。
その表の中に「アートメイク用色素」があるかというと、ありません。すなわち、現時点において、アートメイク用色素は医療機器に当たりません。近畿厚生局の見解と同じ「雑品」です。
PRP(濃厚血小板血漿)を作製するキットは医療機器ですが、その作製過程で必要な遠心分離機は医療機器ではないので、理化学用品として何の規制もなく一般に販売されています。このように医療行為を行うにあたって必要な機器がすべて医療機器というわけではありません。
ただし、政令で定められるものであるので、時代によって医療機器の範疇が変化することはあります。カラーコンタクトレンズが例として挙げられます。カラーコンタクトレンズには度が入っていませんから、当初医療機器には当たりませんでした。しかし、眼科的観点からは、装着による合併症は度の入っているコンタクトレンズとリスクは同じです。そのため、現在ではカラーコンタクトレンズは医療機器とされています。
アートメイク用色素も同じことで、現時点では政令で定める医療機器ではないので取り締まる法律もなく、雑品として販売可能であるが、将来臨床的に問題が生じてきた場合には、政令の改正によって医療機器とされる可能性はある、ということのようです。

ということになると、私の立場からは、色素を針の会社とコラボしてセットで医療機器としての認証を目指すのではなく、色素単体として雑品として医師仲間が購入できるような道筋を開くのが良さそうです。
万が一、私の考案したレシピの色素で臨床的な問題が生じた場合には、アートメイク用の色素は医療機器とするべきだ、となって、政令のリストに加えられるかもしれませんが、それまでは合法ですし、私が厳しい目を光らせている限りはそのようなことは起きないでしょう。

現在試作中の「色素」。うちでのアートメイク施術はすでにこの色素に切り替えています。1ccのシリンジに詰めて滅菌し、毎回使い切りとして供給する予定です。これまでの海外製アートメイク色素は、ボトルを開けたあと使い回しなので、ボトルが汚染し、色素自体が不潔となるリスクがありました。


追記
上記まで考え方を整理したうえで、さらにPMDAに質問してみました。
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PMDA 審査業務部 〇〇様
今朝ほどはお電話にてご対応いただきありがとうございました。
確認したいことがありますので、FAXいたします。よろしくお願いいたします。
私が現在使用している自作のアートメイク用色素を、「アートメイク用色素」と表示して新たに販売しようとすると、薬機法施行令に新たに「アートメイク用色素」を追加しなければ不可なので、クラスに関わらずきわめてハードルが高い、という理解でよろしいでしょうか?
一応後学のためにお伺いしておきたいのですが、その場合は政令に追加するということであるので、厚労省やPMDAではなく、国会議員のかたにお願いしていくということになるのでしょうか?
以上よろしくお願いいたします。お電話お待ちしております。
鶴舞公園クリニック 深谷元継
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しばらくして電話を頂きました。本来はこのような質問に対する回答は審査業務部の仕事ではないそうです。誠に感謝しておりますm(_ _)m。
まず、「医療行為に用いる機器がすべて薬機法でいう医療機器というわけではない」という再度のご指摘がありました。
具体的な例として、歯科で用いる歯垢染色剤を挙げていただきました。赤く染めるやつです。あれは医薬品でも医療機器でも何でもありません。しかし「歯垢染色剤」と表示して歯科向けに堂々と売られています。
医療機器であるためには「該当性」がまず検討されるべきだそうです。今回ご相談したPMDAの方の見解としては、アートメイク色素は医療機器に該当しない、該当しないものを医療行為用として表示して販売しても薬機法違反にはならない、とのことでした。
 
ちなみに、医療機器が政令で定められているのならば、「医療行為」の範囲はどのように定められるのか?とお聞きしたところ、どうも判例(裁判)で積み重ねられていくようです。
平成13年に「アートメイクは医療行為である」と厚労省通達があったわけですが、これは警察庁からの疑義照会によります。その背景には、刑事裁判があったということなのでしょう。
 
とにかく、医療行為に用いることを標榜したからといって、薬機法違反とは限りません。薬機法68条は「未承認の医療機器・医薬品の広告禁止」ですが、そもそも医療機器や医薬品になり得ない(該当性が無い)ものについて、いくら医療行為に用いる旨を表示しようが、違法ではない、ということでした。整形外科で用いられる装具なども、同様の理屈で医療機器ではありません。
本当に目から鱗でした。なるほど。
 
先日問い合わせした愛知県の方とは見解がずれますが、私がアートメイク色素が薬機法の医療機器への該当性あり、ということを大前提としての問い合わせであったので、PMDAの方から「該当性ない」と言われれば、話は違ってきます。
 
それならば、「国産のアートメイク色素作ります」という表題を復活しても良さそうです。
ということで、表題復活しました。
近い将来、株式会社深谷の新商品として、医療機関向けに「アートメイク用色素」と明記した国産色素を提供できると思います。
いろんなところに問い合わせして、頭が混乱もしましたが、後から違法だと誰かに言われたら嫌ですからね。まあ結果オーライで良かった良かった。
 (2017/05/01 記)