第105回美容外科学会(JSAS)スレッドリフトシンポジウム報告(その2)


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は6月1日(木曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年1月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

その1は→こちら。(追記していたんですが、長くなってきたので、続編記事としました)

1)田中先生

居原田先生のFB上で田中先生とちょっとだけ議論しました。
田中先生が溶けない糸を使いたくない理由は、実は「純粋に気持ちの問題」であって、「私は自分の鼻にヒアルロン酸注入はしますが、シリコンプロテーゼは決して入れたくない」のと、同じだそうです。
それならそう語ってくれれば話は終わるのに・・。
論理的に考えると、鼻へのヒアルロン酸注射は、シリコンプロテーゼよりも必ずしもリスクが低いとは言えません。血管塞栓による壊死や失明といった重篤な合併症があるからです。
しかし、だからといって、「ヒアルロン酸注射はするが、プロテーゼは入れない」というスタンスが間違っているとはいえません。それは感性・好みの問題であるからです。
感性に基づくそのスタンスを、「溶けない糸は異物であって感染リスクが続くから」と、論理で解説されると、「溶ける糸を2~3年毎に繰り返すのだって、同じ異物だから、感染リスクは同じではないですか?」と反論せざるを得ません。私は私で、溶けない糸の施術を受ける患者さんたちを不安に陥らせないようにする責務がありますから。
しかし、一般論として、女性がこのように感性で判断したことを、論理で解説しようとして、男性が反論してやりこめると、女性は傷つきます。感性っていうのは、人格に関わっている部分があるので、男性の想像以上に傷が深いこともあります。だから、私生活においては、こういう場合には私は決して反論しないのですが・・。
田中先生が理3→東大医学部卒という点も話をややこしくします。田中先生が、実は女性的な感性でもって発言した内容であっても、何か深い論理的な裏付けがあるのではないか?と多くの人は考えてしまうでしょう。この点は、ぜひ再認識して、感性による場合は「これは私の感性によります」とはっきり明記して情報発信するようお願いしたいものです。
 
2)居原田先生
 
さて、田中先生との議論のあと、居原田先生から、私がやっている伸縮系の糸であるアプトススプリングについて質問がありました。居原田先生は、同様のコイル形状のPDOでできた韓国製の糸を使ってみたが、引っ掛かりが悪かったので、私のアプトススプリングが本当に引っかかるのか、懐疑的なようでした。
スプリング形状の糸は、個々のリングの間で組織を挟んで引っかかるので、コイル状にしたときにばね弾性(伸ばした後縮む力)が出る素材でなければなりません。PDOでスプリング作ったことは無いのですが、弾性出にくいのかもしれません。
要は引っ張って伸ばした後で、ちゃんと縮んでくれるのか、です。素材によっては一回引っ張っただけで伸びっぱなしになります。そういう素材はコイルには向きません。
 
ちょうど今日いらっしゃったお客さんが、アプトススプリングのよい適応だったので、御了解を得て供覧します。4か月前に他院にて切るリフト手術を受けています。口横など中顔面が物足りないとのことでした。

術前
(クリックして拡大すると見やすいです)
 
デザインは下記のようです。こめかみから口囲にかけての3本がアプトススプリングです。耳下にかけてのは通常のアプトス。左右合計6本のスプリングと2本のコグ付き糸です。

術直後

上がってるでしょ?上がってるっていうことは、コグが無くても引っかかっているということです。伸縮系ですから、口を動かしても戻りはありません。

3)境先生
 
境先生の感染率の高さがどうも気になって、境先生のFBで、術野の消毒に何を使っているのか聞いてみました。
境先生、洗顔・洗髪だけで消毒はしないそうです。ああ、そういうことか。それが原因だと思います。
形成外科の先生で、術野消毒しない人というのは、最近多いみたいです。小さな切り傷なんかは、昔は消毒していましたが、最近は水道水で良く洗って異物を除くだけでいい、ということになっています。消毒は創傷治癒自体には不必要だし、かぶれるリスクもあります。
形成外科で切開して縫合するような手術の場合はその考え方でもいいんですが、糸の場合は、小さな傷口から糸を押し込めるわけです。皮膚表面の常在菌が糸とともに送られて後日化膿するリスクは高いです。
なぜ私がそう考えるかというと、一般皮膚科に従事していた頃の、私の経験からです。免疫不全の患者に、筋肉注射をするときなどは、アルコール綿では皮表の滅菌が不完全で、注射針で皮表の菌を押し込んでしまい、膿瘍を形成することがありました。比較的強い消毒剤である(消毒剤の強さ・抗菌スペクトルはいろいろあります)イソジン液10%で消毒してから注射するようにしたら、そういうことはなくなりました。
かなり自信があります。境先生がイソジンで消毒して施術をすれば、感染率は私と同じくらいまで低下するはずです。もっとも、それでも感染はまったくゼロにはならないだろうから、感染時の糸の抜去のしにくさを考えると、私はスプリングスレッドを使う気にはなりませんが。
(2017/05/19 記)

追記
田中先生の経験によれば、溶ける糸(3Dリフト、コグリフト)と、スプリングスレッド(以前施術していたが現在は施術していないとのこと)とでは、感染を起こす率がスプリングスレッドのほうが圧倒的に高い、とのことです。術野を同じように消毒したうえでの比較なので、消毒の関係ではないということになりますね・・。
境先生、田中先生とも、スプリングスレッドは細かい埃などを吸着し易く(静電気?)、そのため雑菌なども拾って糸周辺で微小なコロニーを作り、それが免疫力低下したときなどに化膿するのではないかと考えていらっしゃるようです。
もしそうなら、糸自体をいったん消毒液に浸けてから挿入するというのはどうでしょうか?静電気も逃げるし、付着した細菌も滅菌されるでしょう。
田中先生によれば、感染したスプリングスレッド糸は、私の想像とは異なり、するっと抜けることが多いようです。ただ、私自身は、スプリングスレッドを他院で施術を受けた後に感染し、抜こうとして途中で切れて、その末梢が瘤のように膿瘍形成した方を診たことがあるので、すんなり抜けないケースもあると認識しています。

追々記
なんで、こんなに食い下がって追及しているかというと、糸のリフトのマーケット全体の健全な発展のためです。
そのためには、問題点や疑問点は徹底的に議論して洗い出す必要があるし、その過程はオープンなほうがよい。信用が増します。
私は58才、あと10年くらいでしょうか?自分で糸の施術が出来るのも。
次の学会発表は、また10年後の予定です・・まだ、私が施術していたらの話ですが。
それまでは、またクリニックにこもって精進したいと思います。

追々々記
大分整理されてきたのでまとめておきます。スプリングスレッドというのは、感染しても多くの場合はスルッと抜けるが、原因不明の感染率の高さが問題のようです。田中先生は、溶ける糸とスプリングスレッドとの経験があって、この感染率の高さはスプリングスレッドが溶けない糸であるからだろうと考えていました。
田中先生の溶けない糸に対する拒否感は、この経験に由来するようです。元々スプリングスレッドを施術なさっていたなら、当初は抵抗なかったということです。ここに女性的な感性による判断が加わったのでしょう。
今回の私からの報告と疑問・質問によって、感染率の高さが溶けない糸に普遍的なものではないと気付かれたようです。
スプリングスレッドの表面素材はシリコンですが、シリコンと言うのは、白内障の人工レンズに使われるくらいですから、決して感染しやすい素材ではないです。
いちばん有り得るのは、成型が甘くて、ミクロで見ると表面に凹みが多い可能性です。そこに細菌が潜んだ状態で挿入されれば、免疫力低下など何かの拍子に化膿が始まってもおかしくないです。撚糸である絹糸のほうが表面ツルツルのモノフィラメント糸よりも感染生じやすいのと同じです。
どうも現在溶けない糸として市場に流通しているのは、スプリングスレッドだけみたいですね。学会の展示ブースでも見なかったし。だから田中先生、誤解したのでしょう。
スプリングスレッドの感染率の高さが、溶けない糸全般の話と誤解されて広まったら、私としてはいいとばっちりです。嫌だなあ・・。
境先生や田中先生が、私が使っているような自作糸で施術すればいいのにと思うんだけど、お二人に限らず、なぜか皆さん業者さんが持ってくる糸しか使いません。自作糸のほうがコスト安くなって患者さんに還元も出来るし、悪いこと何もないと思うんだけど、なぜだろう??
皆さん、施術は好きだけど、仕込みは面倒ってことなんだろうか?あるいは同業者である私にノウハウ尋ねるのがプライドが邪魔して嫌なんだろうか?昔からすごく不思議です・・。