臍帯血幹細胞のお話



鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は3月1日(水曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年10月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

医療アートメイク学会の企画で「3月に韓国のアートメイク施術クリニックを見学に行きましょう」という話が進んでいます。そのオプションで、臍帯血幹細胞培養を行っているクリニックも見学に行きましょうということなので、そういえば幹細胞やその培養液の応用って、その後進捗あったのかな?と思って調べてみました。

幹細胞の応用は、うちのような個人クリニックの手には余りますが、培養液なら再生医療法による規制もないし、先回の記事で記したように、アートメイクの手法で真皮に入れられます。
以前、脂肪由来幹細胞については、近所の名大の元教授の先生たちがやっている培養施設で、私のお腹から採取して冷凍保存してもらっています。そのときの培養液を頂きました。本ブログの過去記事に経緯が記してあります(→こちらこちら)。

この培養液は、一回だけ自分の額の生え際に左右片側だけ打ってみたんですが、3ヶ月くらい経っても発毛してくる様子もないんで、追加注射は止めてしまいました。まだ冷蔵庫に保存してはありますが、無菌的とはいえ、時間も経ってるし、そのうち処分します。
このときの、私の一番の関心は、幹細胞培養液中にどのくらいの濃度で成長因子が含まれているのか?を確認することでした。データを再掲します。
(Parkの報告(→こちら)で、脂肪由来幹細胞培養液では、成長因子のうち、VEGFの濃度が最も高いというデータがあったので、VEGFについて測定しました。)

379mlの培養液からトータルで31119.9pg(31.1ng)のVEGFが採取できました。濃度の平均は82 pg/mlです。Parkの報告では809 pg/mlでしたので、その10分の1です。培養条件の違いによるのかもしれません。
さて、ここで思い出していただきたいのは、先回のb-FGFによるタトゥー(→こちら)で用いたb-FGFの濃度です。10μg/mlで行いました。
ヒアルロン酸ジェルをキャリアとしてアートメイクの手法で打ちましたから、当然全部は入っていません。「100分の1くらいが入ったんじゃないか」と書きましたが、10μg/mlの100分の1は10ng/mlです。
幹細胞培養液中の成長因子濃度は、Parkの報告でも809 pg/ml(0.8 ng/ml)でしたから、b-FGFタトゥーでは、 100分の1くらいが入ったとしても、幹細胞培養液の濃度の10倍です。今日は、これが書きたかった(^^)。
 
逆に言いますと、幹細胞培養液の場合は、アートメイクの手法で打っても、培養液中の成長因子の濃度が低いですから、効果は出ないだろうな、とも言えます。幹細胞培養液を臨床応用するとしたら、やはり原液のまま皮内注射でしょうね。脂肪組織内に入らないように大量入れるのは相当なテクニックが必要です。脂肪組織内に注射した場合は、b-FGF注射同様のボコりのリスクがあると思います。
そう考えると、幹細胞培養液の美容領域での活用は、意外と難しそうです。
と、思ったんですが、調べてみると、「オスモインジェクター」っていうのが、既にあるみたいですね。なるほど・・
昨年のハロウィンパーティーのときに仲良くしていただいた居原田先生や池田先生はすでに導入してらっしゃるみたいです(→こちらこちら)。

さて、話を韓国ツアーにもどして、見学予定は、臍帯血幹細胞培養のクリニックです。臍帯血幹細胞の培養上清についての研究論文を探してみたら、ありました(→こちら)。

内容は、「臍帯血幹細胞の培養液には、幹細胞そのものをも刺激するG-CSFやGM-CSFが高濃度に含まれており、創傷治癒の促進に有効である」といったことです。各種成長因子の濃度も一部記載されており、EGF:3286 pg/ml、VEGF:2463 pg/ml、G-CSF :3615 pg/ml、GM-CSF :3623 pg/mlでした。たしかに、Parkの報告や私が培養してもらった脂肪由来幹細胞よりも濃度が高いです。しかし、アートメイクの手法で入れられる濃度には、はるかに遠いです。
 
以前の記事で、幹細胞培養液を化粧品に混ぜて皮膚の上から塗る話を紹介しましたが、分子量の点からも無理がありますが、濃度の点からも難しそうですね。
 
オスモインジェクターによる臍帯血幹細胞培養液の真皮内注入は・・うーん、どうかなあ、池田先生は「ボトックスやヒアルロン酸注射のように10年に一度出るか出ないかの治療」と絶賛していらっしゃいます。いまのところそれを否定する材料も見当たらないですが・・
強いて言えば、コスパ的に、市場性がどのくらいあるか?って話かなあ。PRPが出てきたときの感じに似てると思います。PRPも効果はあるんですが、一回20~30万円の施術として見合うかと言うと、私は踏み切れませんでした。いまは自作キットで一回5万円なので、自信をもって施術しています。
まあ、この辺は単に価値観の問題なのですが・・。

そのうち顔半分を、臍帯血幹細胞培養液のオスモインジェクター注入、半分を私が思いついたb-FGFタトゥー、で比較してみたいですね。どっちに軍配上がるか、正直ちょっと見当つきません。
 
さて、話は変わって、臍帯血幹細胞ですが、これは血液難病に対して、骨髄バンクに加えて、臍帯血バンクと言って、お産のときに産科病院を介して臍帯血を提供して役立ててもらおうというボランティアになっています。
これに対して、将来その赤ちゃんが病気になったときのために、年間数万円払って、臍帯血を保管してもらおうというサービスも出てきているようです(たとえば→こちら)。
これが広まると、善意の提供者が少なくなってしまうのではないかという危惧からではないかと私は思うのですが、反対意見が多いみたいです。まとめサイトもありました(→こちら)。
もしも、私に新しい子供ができたならば、臍帯血から幹細胞の培養までしておいてもらった上で、それを将来万が一のために凍結保存してもらうだろうなあ・・。というか、臍帯血の半分をボランティアで提供して、半分をプライベートで取っておくっていうのは出来ないものなんだろうか?
そして、培養の過程で生じた培養液を冷凍保存して取っておいて、オスモインジェクターで奥さんの顔に注射してあげると思います。
これから出産するであろう若い女性たちどうですか?子供の将来の保険に加えて、自分の若返りにも役立ちますよ。
(2017/02/10記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継