ステロイドを用いないアトピー性皮膚炎の予後


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は7月1日でいっぱいになりました。次のご予約受付日は8月1日(月曜日)です。7ヵ月後の来年3月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。
 
私は2003年にプチ整形専門の美容クリニックを開業する前は、国立名古屋病院で主にアトピー性皮膚炎の患者を主に診ていました。90年代前半くらいからなので、約10年間です。気が付けばプチ整形に従事した期間のほうが長くなりました。

私がアトピー性皮膚炎の診療から離れた理由の一つに、この疾患は自然治癒傾向がある、という点があります。言葉で書いてもピンときませんが、下の写真を見れば一目瞭然です。
「Topical steroids」というのはステロイド外用剤のことで、要するにこれらの患児たちは、まったく薬を用いずに6ヶ月経って快癒してしまったということです。





この自然治癒傾向に関する研究、すなわち、アトピー性皮膚炎に医療介入を行わず、数か月間観察してどの程度の改善率があるのか、という研究は、意外となされていません。それで私は、昔アトピー性皮膚炎を診ていたときに交流のあった先生方に呼びかけて、確認してみることにしました。その研究結果が、このたび論文になりました。300人の患者をステロイド無しで6ヶ月間フォローした多施設コホート研究です。

A prospective study of atopic dermatitis managed without topical corticosteroids for a 6-month period. Fukaya M, Sato K, Yamada T, Sato M, Fujisawa S, Minaguchi S, Kimata H, Dozono H
https://www.dovepress.com/a-prospective-study-of-atopic-dermatitis-managed-without-topical-corti-peer-reviewed-article-CCID

YouTubeのビデオアブストラクトは下記URLにあります。
https://www.youtube.com/watch?v=TmDK3dfxNu4

ステロイド外用剤(短期的には確実に湿疹を抑えてくれます)を使用した場合に比べて、自然治癒傾向がどう違うのか、を確認するのが目的の一つなので、別の先生方が既に行っていたステロイド外用剤を用いた6ヶ月調査のスキームになるべく合わせて評価しました。その結果、とくに成人の重症例においては、ステロイドをまったく用いないほうが改善しやすいこともわかりました。

画期的な話だと思うので、注意喚起のためにこちらのブログでも紹介しておきます。有志の方、SNSなどで拡散して下さい。ボタンは一番下のほうにあります。よろしくお願いいたしますm(_ _)m。アトピー性皮膚炎にステロイド外用剤を用いる場合には、一時的な短期使用にとどめて、長期連用を避けるべきです。ステロイド外用剤依存(Topical steroid addiction)という、治療薬であるはずのステロイド自身が疾患を難治化させてしまっているという状況に、本人も医師も気付かないうちに陥っていることがあります。
 
さて、私がアトピー性皮膚炎の診療から離れた理由の話に戻りますが、自然治癒傾向のある疾患と言うのは、私のようなタイプの医者にとっては、やりがいを感じにくいです。
患者は不安ですから、寄り添ってあげれば感謝はされるし、変な話、自分が治したかのように装うことだって出来ます。しかし真実はそうではありません。
 
それに比べると、プチ整形または美容外科と言うのは、はっきり自分の行った医療行為の結果が現れる仕事です。それも超短期に。その点が、自分にとって心地よいし、作品(お客様をこう表現しても失礼ではないと思います)が上手に仕上がると、私自身とても幸せになります。
 
下は、口周りの小じわをヒアルロン酸注射で埋めたところです。左が施術前で右が半年後です。細かくチクチクと打ってしわを埋めていくので、手間はかかりますが、自分がしただけの結果が必ず出ます。胸を張ってお代金の請求ができます(笑)。自然治癒傾向のある疾患じゃ、「神が治して医者が代金を受け取る(God heals and the doctor takes the fee. 英語の諺です)」そのまんまですから。


(2016/07/08 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継