PRP(多血小板血漿)の作り方 by 鶴舞公園クリニック(2014改訂版)


 当院では、私が考案したオリジナルな方法でPRPを作製していることは、以前からこのブログで何度も報告している通りです。
 個人的興味が昂じて、外部機関にPRP中に含まれているPDGF(血小板由来成長因子)の濃度を、作成方法のパターンを変えていろいろ測定してもらいました。

 PDGFというのは、しこりで問題になっているFGF(フィブラストスプレーの成分でもある繊維芽細胞成長因子)とはまったく異なります。それにも関わらず「同じ成長因子だから似たようなものだろう」と安易に考えて施術した結果がFGF入りPRP療法の悲劇です。

 それは置いておいて、PRPの効果は主にPDGFの作用によると考えられています。このブログでは繰り返し「PRPといっても血小板が十分取れていなければ、効くものも効かない。毎回必ず調整後のPRPの血小板濃度を顕微鏡で数えて、十分な数の血小板が存在することを確認したうえで施術することが肝要だ。」と訴えてきました。

 ところが・・実際にいろいろ条件を変えてPDGFを測定してみると、PRPの血小板濃度とPDGF濃度とは、相関しないのです。ううん、これは困った。

 私の目論見としては、PRP作製の最適条件を決めることもさることながら、血小板濃度とPDGF濃度とは良く相関することを示して、「やはり、血小板濃度を確認することは大切ですね。うちのクリニックでは毎回施術のたびに血球計算版で確認しています。えっへん。」とまとめて、またこのブログで自慢したかったのですが・・。

 それで、いろいろ条件を変えて検討した結果、抗凝固剤としてヘパリンを用いると(PHが中性で施術時の痛みや腫れが少ないので、私は推奨していた)、遠心によってたぶんα顆粒が放出されてしまうのでしょうか、最終的に調整されたPRP中の血小板濃度は多くてもPDGF濃度は低下してしまうことが解りました。

イメージ図
血小板に含まれるPDGFは遠心の刺激によって一部放出されてしまう。そのためPRPの血小板濃度とPDGF濃度は必ずしも相関しない。抗凝固剤としてACD-Aを用いたほうがヘパリンよりも遠心刺激によるPDGF放出が少ない。
 
 抗凝固剤にはACD-Aを用いたほうが最終的なPRPのPDGF濃度は高いです。

 ACD-Aによる痛み対策としては、最終段階でのバッファーコートの希釈を生理食塩水で置き換えてやるといいです。

 以上は解ったのですが・・うーん、これは困った。

 このブログでも散々ACD-Aよりヘパリンのほうが良いと書いてきたし、PRP研究会でも発表しちゃったよ。のみならず、英語解説入りでYoutubeに動画UPして世界中にこの作成法のファン作っちゃった。いや、ほんと、マジで。インドの整形外科の先生とかコスタリカの細菌学研究者とかセルビアの美容外科医とか・・。

 それで責任感じて、英語論文にまとめて報告することにしました。昨日最終的なアクセプトの通知が来たので、たぶん近日中にこの記事に追記できると思います。

 私はまもなく55才になります。この年になって英語論文書くことになるとは思いませんでした・・。30才台くらいだったら鼻高々だったんだけどなー。今は・・あんまりメリットがありません。

 とりあえず、Youtubeには、最新というか、PRP中のPDGF濃度がもっとも高くなる調整条件での作成法の動画をUPして旧動画は消しておきました。関心のある方はご覧ください。

 
https://www.youtube.com/watch?v=gpeikkJhm0s

(2014年4月9日記)