PRP(多血小板血漿)とヒアルロン酸の合わせ技


 今回は、法令線から口周りの小じわにかけての若返りを希望されたお客様に、法令線の深いところはヒアルロン酸で、口周りの浅い小じわはPRPで施術した方の写真を供覧します。写真掲載ご快諾いただきありがとうございました。

 ところで、たまにネットで情報収集されたお客様から「PRPはヒアルロン酸注射部位には打てないのではないですか?」と聞かれることがあります。なんでそんな話になるのか解りませんが、理論上も実際も干渉する施術ではないので、大丈夫ですよ。ただし、ヒアルロン酸はすぐに膨らんで結果が出るのに対し、PRPは結果が出るのに2~3ヶ月かかるので、PRPを打って物足らなく思って、その部にヒアルロン酸を追加すると、後日PRPの結果が出てきたときに「ヒアル入れなくても良かったかな?」と思うことはあるかもです。

術前
法令線の深いところにはヒアルロン酸を、口周りのしぼんだような小じわにはPRPを注射します。PRPは、うちの場合は毎回調整後の最終血小板濃度を確認したうえで注射しますが、この方の場合は400/μl×0.7mlでした。濃くも薄くも無く、平均的な濃度(量)です。

2ヶ月後
鼻に近い法令線の凹みが改善しているのはヒアルロン酸によります。口周りはややPRPが効いてきたかな?というところです。効果がありそうで気を良くされたのでしょう、追加施術を希望されました。再びヒアルロン酸とPRPを前回同様に施術しました。

さらに2ヶ月後です。
法令線の凹みも、追加ヒアルロン酸打ちで、さらに浅くなっていますが、口周りに打ったPRP4か月目で、しっかり効いてきているのが判ります。張りが出て、小じわが目立たなくなりました。良くなってくると人間嬉しいもので、さらに追加希望されましたので同様施術しました。

初診から8カ月後です。
すっかり若返りました。

約一年後です。いい感じに保っていますね。
この方は、糸(スレッドリフト)を入れていないのですが、糸でたるみを全体に引き上げれば、さらに若さを演出できそうですが・・まあ、ご本人ご満足な様子なので、これはこれで良いかもです。

今回のお話のキモは、

1)   ヒアルロン酸の結果はすぐに出るが、PRPの結果は2~3ヶ月経ってから。

2)   法令線など深い凹みはヒアルロン酸、浅いところの小じわやしぼんだ質感の改善(張りを出す)にはPRP

といったことでした。

法令線など深い凹みはPRPでは持ち上がりません。フィブラスト(FGF)などの成長因子を添加、あるいは単独で注射すれば、膨らむかもしれませんが、制御が出来ません。たまたまうまくいく例もあるかもしれませんが、それは術者の手技や調整の方法ではなく、ほんとうに「たまたま」うまくいっただけのことで、脂肪幹細胞に作用させてこれを分化増殖させるという、間接的な玉突きのようなことをするわけですから、まったく保証がありません。過剰に膨らんだり、脂肪細胞ではなく骨芽細胞に分化したりすると、非常に困ったことになります(回復させる手段が無い)。ヒアルロン酸のほうが無難です。

血小板の放出する成長因子は、主成分がPDGFといって、これは脂肪幹細胞にはあまり作用せず、繊維芽細胞に作用します。繊維芽細胞が分裂増殖したり、コラーゲンを産生したりしても、量的にそれほど多くはなりませんが、脂肪幹細胞が脂肪細胞に分化増殖すると、細胞のサイズが大きく変わるので、量的効果が大きいです。同じ「成長因子」といっても色々な種類があるのです。

そのうちPDGFがフィブラストのように製剤化されれば、ずいぶん便利に使えるかもですけどね。

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4月から製造販売を始めた中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水ですが、若返り効果を確認するために、79才になる母親と84才になる父親に協力してもらって、2週間外用前後の皮膚を採取し、組織学的な変化を確認してみました。

下写真の上が外用前、下が2週間外用後です。やや専門的な話になりますが、上から角層、表皮、真皮で、表皮の下の方に黒~茶色の玉がパラパラと見えますが、これはPCNAという、分裂増殖の指標となる成分を染めたもので、外用後は外用前よりもPCNA陽性細胞が多い、すなわち老化して衰えていた表皮の分裂増殖が再活性化していることを示しています。基底細胞といって、表皮の最下層にある細胞の配列が整って密になってきてもいます。


下の写真は、フィラグリンという、角層を構成する保湿機能に重要なタンパク質を染めた結果です。表皮上層から角層にかけてみられるフィラグリンが、中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水外用後は、はっきりと増加していることが判ります。表皮細胞の分裂増殖のみならず、分化して保湿機能をも改善されたことを示しています。


これだけはっきりした結果が出る「若返り化粧品」は、たぶん、これまで無かったと思います・・。わたしが発見したことではなく、スイスのKaya先生ほか多くの基礎研究の教室から報告されている論文をもとに、ただそれを化粧品として作製し、世にリリースしただけなのですが、多少は誇らしい気もします。
ほとんどの化粧品は塗った直後の使い心地重視ですが、私の作成した中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水の場合は、直後はさらっと吸収されてかえって突っ張るような感じです。しかし、毎日続けていると、組織レベルで確実に老化した皮膚が修復されます。
  

PRPにしろ、中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水にしろ、私はすごく基本的なところで「大発見」をするだけの力量は無いのですが、ちょっとしたひらめきでもって、臨床応用する、工夫してうまくいく、ということは、昔から得意なのです。昔、内科や皮膚科にいたときには、「小賢しい」と頭を押さえられることも多かったのですが(出る釘は打たれるタイプ)、美容外科に転じてからは、自由な発想が許される世界のようで、たいへんに肩身が広くなって嬉しい限りです。

いやほんと、若いころは「目立とうと思って人と違ったことしてるんじゃないのか?」とか、えらい言われようしたこともあります。そうじゃなくて、自由な発想でいろいろ工夫するのが楽しいだけなんですけどね。・・

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10月30日のNHK「ためしてガッテン」のオープニング部分に、私がYoutubeにUPしたホクロをCO2で取る動画を使っていただきました。下がキャプチャ画像で、左上に私の名前が出ています(クリニック名をいれると、NHKの規約に反するのだそうです)。
 
(2013年10月21日記)