HPリニューアル原稿:切らない眼瞼下垂手術(タッキング法)について


 厚労省の方針で、美容外科のHP中の、単純な「before→after」の写真解説が、今年中に規制されて出来なくみたいです。誤解を招きやすいからだそうです。
 それで、HPのリニューアルに向けて、基本的な事項をまとめていこうと考えました。写真は入りますが、単純な「before→after」でなく、むしろ詳細な経過写真と解説なら、趣旨から考えて許されるのではないか?と今のところは考えています。
 HPのリニューアルのためなので、ところどころ、現在のHPやブログの写真と重複しています点、御了解ください。

 
 眼瞼下垂とは、読んで字の如くで、まぶたの下がりを言います。眼が開けづらく、視界が狭くなります。

 広い意味での眼瞼下垂には二つあります。ひとつは、加齢にともなって、まぶたの皮膚がたるんで伸びてかぶさってくるもので、「偽性眼瞼下垂」と言われています。

 単純にまぶたの皮膚を、余っているだけ切り取ったり、軽い場合には埋没法(切らない二重まぶた作成法)で対処できます(→こちら)。
 もうひとつは、下図のような症状を呈するものです。通常、眼瞼下垂と言えば、こちらのことを言います。上との区別の意味で「腱膜性眼瞼下垂」と言われることもあります。

症状は、

①額にしわができる。
②眉が上がる
③眼の上が窪む。
④二重の幅が広がる。
⑤瞳孔(黒目)が隠れる。

です。なぜ、これらが生じるかというメカニズムについては、上まぶたを輪切りにした下のような解剖図を見ながら考えるといいです。
正常な上まぶたでは、A(脂肪)B(眼瞼挙筋)C(瞼板)は左図のようですが、眼瞼挙筋腱膜がゆるんだり部分的に断裂すると、A・Bは後退し、眼の上が窪みます(右図)。Cは持ちこたえられずに下がって上まぶたが開けにくくなり、二重の幅が広がります。上まぶたを開けようと、おでこの筋肉を使い始めるので、おでこにシワがよってきます。

 対処法としての手術は二つに分かれます。ひとつは「切る手術」で、下図左のように、上まぶたの皮膚を切開して、ゆるんだ挙筋腱膜をしっかりと確認して引っ張り出し、瞼板に縫い付ける方法です。これは、健康保険適応があり、眼科や形成外科で普通にやられています。

 もうひとつは、皮膚を切開することなく、上まぶたの裏(結膜)側からアプローチする方法です(右図)。わたしはこれを、

①どうしても切りたくない方
②下垂が軽度で、健康保険での「切る手術」の適応がないと判定された方

に対して施術しています。

 機能的な問題があって健康保険の適応がありそうな場合には、形成外科の専門医の先生が、保険診療で丁寧にやってくださるところが多いので、そちらを紹介することにしています。

 くれぐれも、保険診療で済ませられるものとまったく同じ仕上がり・内容の手術を、自由診療の美容外科価格で買わされるなんてことのないように御注意ください。

実際の施術動画はこちらです。

(画像または→こちらをクリック)

以下、この方法についてのまとめです。

 ①「切らない眼瞼下垂手術」は、局所麻酔で10分ほどで終わります。来院したその日にすぐに施術できます(ほとんどの方がそうなさいます)。

Before→Afterはこんな感じです。Afterの写真は直後のものです。まぶたの裏側からの操作なのでまったく腫れません。


②料金について

 両目で18万円、片目で9万円です。上記の方は片目だけなので9万円です。

 ただし「成功報酬」です。というのは、この施術は、ときにうまく糸が掛からなかったりすることがあるからです。とりあえず」やってみて、うまく掛かって下垂が上がって気に入っていただけたら「お買い上げ」です。もし、うまく掛からなかった場合は、お支払いは不要です。「無かったこと」にして、気まずいですけど、お互い笑顔で別れましょう。成功率(うまく掛かる率)は9割くらいです。
 直後には、うまく上がっていても、戻ってしまう場合があります(2~3割)。引っ掛かりが浅かった場合です。一年以内であれば、無料で再施術します。
 残りすなわち6割くらいの方は、半永久的と思われます。といっても、クリニックの開院が8年前なので、数年の経過しか無いわけですが。美容外科の悲しいところで、追跡調査のはがきや電話ができません。家族に内緒でいらっしゃる方が多いですもんね。

 知人数名や常連さんの経過を見ていると、一年以内に戻りの無い人は、その後5年以上経過しても、やはり戻りは無さそうです。

③合併症について

 ごくまれに、術後、麻酔が切れてくる15分ころから、眼が開けていられないくらいの「痛み」を訴える人がいます。その場合は、糸を外してやれば、即座に痛みは消えます。たぶん、小さな血管か神経を糸が挟んでしまったときの症状でしょう。すこしずらした位置で糸を掛けなおすと、こんどは全く痛まなかったりします。
 裏側の粘膜に糸を引っ掛ける関係で、粘膜に少し凹凸が生じ、ゴロゴロ感が生じる場合があります。これは、日にちが経てば、粘膜が平坦に戻って気にならなくなります。
 コンタクトレンズは、直後から可能です。コンタクトの縁が当たるよりもずっと深い位置の粘膜の操作だからです。時に糸の端が角膜に当たって傷をつけることがあります(視力に影響はないがコンタクトの検診の際などに眼科で指摘されることがある)。いったん糸を外してかけ直せば解決します。
 粘膜下で内出血することはありえます。しかし、内出血が皮膚まで達して外から見えることはありません。少し眼がゴロゴロするだけで数日で退きます。

④適応と個人的見解(「切らない眼瞼下垂手術」についての私のポリシー)

 たとえばですが、上の写真の患者さんは、下垂の程度から考えて、健康保険での通常の「切る眼瞼下垂手術」の適応はあると思います。わたしは、そのような方には、健康保険での手術の選択肢があることを、はっきりお伝えします。上の写真の方が、なぜうちで手術を受けたかというと、切る手術は気が進まなかったからです。手術時間も術後の腫れも長いからです。そのような方を対象とする手術です。

 わたしは、「切る眼瞼下垂手術」はもちろん出来ますが、自分のクリニックのメニューに掲げるつもりはありません。当院は自由診療クリニックであり、自由診療というのは、保険診療でカバーされていない、特殊な技術や、純粋に美容目的の施術を扱うところだという、信念とささやかな誇りがあるからです。

 わたしが、信州大式の「切る手術」を自院の自由診療メニュに入れていないのは、この手術を安価な保診療価格で、良心的に丁寧に施術されている、形成外科や眼科の先生がたにする敬意からです。

 一方、「切らない眼瞼下垂手術」は、特殊な術式でまだ普及していないです。考案したのは、元・共立病院、現・真崎医院院長の、真崎先生という方ですが(→こちら)、いずれ普及して健康保険で認められるようになったら、私は自院メニューから下ろそうと思っています。良い術式だと思うので、自分が考案したものでは無いですが普及させたいです。形成や眼科出身で、この術式に関心おありの先生は、いつでも見学歓迎しますので、ご連絡ください。あわせて、保険診療での眼瞼下垂手術希望の患者さんを、紹介させてくださいね。

 また、この手術は、先天性(片方だけが幼い頃から)や外傷性(眼にボールが当たったあとなど)の眼瞼下垂では効果が出にくいようです。先天性の場合は挙筋の発達が悪いため、外傷性の場合はどこかで癒着が生じているからでしょうか?加齢やコンタクトレンズ(とくにハード)によって生じたものは良い適応です。

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 以下に、いくつか、「切らない眼瞼下垂手術」の症例を示します。
このかたは「小さかった頃は、もっと目が大きかったような気がする」と、ご自身で眼瞼下垂を疑って、眼科で相談したのですが、「眼瞼下垂とは言えない」と言われてしまったそうです。

 眼科の先生の「眼瞼下垂とは言えない」というのは、保険診療の立場、すなわち、機能的な問題があって、手術の対象になるような状況ではない、という意味でしょう。上まぶたの縁は、瞳孔上縁にあるし、眼を閉じたり開いたりしても、おでこにしわも寄りません。頭痛や肩こりもないし、眼科の先生がためらわれたのは、無理のない話です。

 切る手術というのは、元に戻すことができません。若い女性です。十分お綺麗なのだから手を加えなくてもいいじゃないですか、と思われたことでしょう。

 「切らない眼瞼下垂手術」は、こういう場合に、活躍します。やってみて、気に入った仕上がりにならなければ、糸を外せばまったく元通りになります。復元可能です。ですから、若い女性の美容目的の施術に向いているといえます。 
 「とりあえずやってみた」施術直後の写真です。
綺麗に引きあがりました。ということは、これだけ分、やはり眼瞼下垂はあったわけです。二重のラインも、ぼやけていたのが、くっきりしました。
 斜めから見たところ。術前→術直後です。
もともとが目の大きな綺麗な方です。お顔全体をお見せできないのが残念ですが、ほんとにお人形さんのようになりましたよ。
 あくまで、元の自分に戻ろうと思えば戻れる軸足を残した上で、いろいろと冒険してみるのは人生が楽しくなるかもです。睫毛をエクステしたり、美容院に行ったりする感覚に近いと思います。
 そういう見地からも、この「切らない眼瞼下垂手術」は、有用だと思います。


 次の方は、右目(向かって左)は、近所のクリニックで「切る眼瞼下垂手術」の施術を受けています。下垂は上がったのですが、手術時間が長く、局所麻酔でとても怖い思いをしたので、反対側(向かって右)は施術を受けるのを止めた、という方です。うちのお客様のご紹介で、その方に付き添われて、いらっしゃいました。

 下の写真は、施術されていなかった左目(向かって右)を、タッキング(切らない眼瞼下垂手術)で上げたところです。
片目だけやった直後というのは、このように左右差が極端に出ます。この方では起きていませんが、反対側の下垂が強調されることもあります(ヘリングの法則)。数時間~数日でおさまって、だいたい左右が揃うので、ちょっと経過を待ってください。

 下の写真は二ヵ月後です。
開いた眼が左右ほぼ同じになっています。

 これは、糸がゆるんだのではなくて、眼瞼下垂とともに奥に引っ張り込まれていた脂肪が、引き出されたためです。この方の場合、ほとんど戻りはありません。
右目(向かって左)は「切る手術」の結果で、左目(向かって右)は「切らない手術」の結果です。
 黒目の開きを比べれば、この方の場合は、「切らない手術」が「切る手術」とほぼ同等の効果があったことが判るでしょう。

 全ての方で、このような結果が出るとは限りませんが、症例によっては、この「切らない眼瞼下垂手術」は本当に有用だと思います。「最初からこの方法でやってもらえばよかった」と繰り返しおっしゃっていました。

 もうお一方、御紹介します。
一見、眼瞼下垂は無く、黒目はしっかり開いているようですが、眼の上の窪みが強く、額に横皺が寄っています。
眼を閉じると、上の写真のように、額の横じわは少なくなります。
 ということは、おでこの筋肉(前頭筋)を用いて、一生懸命眼を開けている状態です。

 タッキング手術をして3日後です。
眼の上の窪みも引き出され、涼しげな眼になりました。綺麗な仕上がりです。効果の出るかたは、タッキング手術だけで、これだけ変わります
 眼を閉じたところ。
おでこの皺も、眼を開け閉めしても、変化がありません。おでこの筋肉を使わなくても、目が開くようになったからです。

 しかし、残念なことに・・このお客様、どうしても違和感や白目の充血が気になり、このお写真を撮らせていただいたあとで、糸を外しました。

 右目(向かって左)は、まったく何ともないそうですが、左目(向かって右)が、どうしても気になるそうです。見た目にはまったく問題無いのですが・・。

 糸がうまくかかって、眼の上の脂肪がしっかり引き出された結果、慣れるまで数日~2週間くらいのことなのですが、違和感や鈍痛、白目の充血(この方の場合は、上瞼をめくってみるとわかる程度のものなので写真ではわかりません)が起きることがあります。

 その期間をやりすごしてクリアすれば、違和感や他の症状も無くなるのですが・・。

 元々眼のぱっちりした方で、出来栄えが良かっただけに、術者としては残念ですが、糸を外しました。糸を外せば、すぐに違和感はなくなり、見た目も翌日には、まったく元に戻ります。

 一年以内でしたら、無料で再手術しますので、気が変わって、またチャレンジしていらしていただけるといいのですが・・。

 性格の良いかたで、眼周りの写真のブログでの使用は、快諾いただいていますので、こういうケースもあると、こうして、御紹介できる次第です。

 ただ、まあ、こういう美容若返りの施術というのは、「やらなくても、生きていくのに不都合でもない医療行為」ですので、お客様の価値感・考え方最優先です。

 ときどき、タッキングの「切らない眼瞼下垂」手術では、こういうことがあります。二重の埋没法もそうですね。見栄えよくできても、何らかの理由で「やっぱり外してください」と言われることはたまにあります。

 笑顔で応じるのですが、内心「もったいないなあ・・」と思います。やっぱり、お1人お1人、皆、私の「作品」ですからね。愛着はあります。
(2012年3月26日記)