スレッドリフトの長期経過について・その1


 アプトスやエックストーシスなどの、溶けない糸によるたるみ引き上げ施術を繰り返していると、長期的にはどんな結果になっていくのか?というお話です。

 当院は開院して7年、糸の施術の症例総数は、正確にカウントしてはいないのですが、2008年に過去3年間の集計をした結果では、絶対数491人、一人当たりリピート率2.3回、延べ施術数491×2.3=1129件、一人当たり糸本数7.7本、総糸数491×7.7=3780本でした。わたしは、年間3780÷3=1260本の糸を入れている計算になります。
 リピーターの方で、今一番多く入っているひとは120本くらいです。数十本入っているレベルのひとは全然珍しくありません。

 以前にもHPのほうに書きましたが、溶けない糸が多く顔に入っているからと言って、とくに問題は生じないようです。ここでは、効果の長期予後について考察します。

 うちのスタッフの1人で、数十本入っているかたの経時写真で説明しましょう。
 2004年8月、54才のときにはじめて糸を入れました。このときの施術は、Dr.Wuが提唱したワプトスです。施術前と直後の写真です。
 
 ワプトスだけでは、下左のように、輪郭がシャープにはなるけど、口横や頬の引き上がりが悪いので、1週間後にアプトス追加しました。下右がデザイン。
 
下左は1ヶ月めで、もうちょっと引きあがらないか、法令線取れないか?と、アプトス1本づつさらに追加しています。このころは、スタッフに協力してもらって、いろいろなデザインを工夫していました。
 
もう1本追加です。頬は上がるものの、なかなかこのスタッフの法令線を糸で引き上げて消すのは難しいなあ、と悩んでいた時代でした(懐かしいです)。
 
2004年12月にワプトスを追加しました。なぜ追加したかと言うと、たしか、長い糸を入れるための当院オリジナルの針を作成したので、これを試させてもらったのだったと思います。
 
下は1年ほど経ったころの写真で、戻りはあるものの、それなりに効果はあるなあ、と思って撮ったものです。

 下は、2006年1月(2年後)に、エックストーシスのデザインを思いついて、既に入っている頭側の糸(ワプトス)に、追加で交差させて入れてみたときの写真です。ワプトスだけよりも、引き上がり加減が自然でよい、と考えました。このころ以降、Dr.Wuの考案したデザインであるワプトスは止めて、全部エックストーシスの施術に変えました
 
下は2006年12月→2007年1月で、上まぶたのたるみを切り取った前後の写真です(下右は抜糸直後で、目尻に赤い縫合線が見えます)。ほほのたるみはというと、またそれなりに戻ってきているようです。
 
下は、2007年11月、このころはもうエックストーシスのデザインも確立して、スタッフで「実験」させてもらう必要も無かったのですが、スタッフのほうから「そろそろまた入れて欲しい」とリクエストがあって、施術しました。一番最初のワプトスのbefore/afterに比べると、エックストーシスは、直後から引き上がりが自然な感じなのがわかると思います。頭側の糸も、頭頂方向ではなく、こめかみの生え際から耳の上にかけて弧を描くようにデザインすることで、後日ときどきあった毛のう炎のトラブルからも解放されました。
 
その後はこの方、糸を入れてないです。2009年11月と2010年7月の写真を示します。
 
さて、糸の長期予後ですが、このスタッフの6年前(54才)の写真と、今年(60才になりました)の写真を下に並べてみました。左の写真は糸を入れる前で、54才の女性として、まあ、普通のお顔かな、と思いますが、右の写真は、60才の女性としては、実年齢と解離が感じられると思います。これが糸の長期予後です。

 (追記:下はさらに5年たって65才のお顔です。この5年ほどは糸入れてないですが、頬のお肉は下がらず糸が頑張ってくれているみたいです。)
 
引きあがった直後の結果は、とくにエックストーシスの場合、とても美しく、「このまま続いてくれればいいな」と誰もが思いますが、だいたい1ヶ月くらいで、魔法は取れます。しかし、元の木阿弥ということではなくて、少しは引き上がりが残るし、何よりも、長期的結果として、そこから先たるみにくい、たるみの予防になる、ということが言えます。
 
 時の流れを止める、と言ったら言い過ぎかもしれませんが・・しかし、ほんとに、緩やかにする、ではなく、止める、という感じが今のところしています。糸の本数がある程度増えたところから、見た目年齢の進みが止まる感じです。

 これは、このスタッフだけでなく、溶けない糸を数十本以上入れている方々に共通した印象で、もちろんそういう方は意識の高いかたでしょうから、このスタッフが上まぶたのたるみを切ったように、他にも色々心がけていらっしゃるのでしょうが、それにしても、数年前、「溶けない糸を長期間多くの本数入れていて、長期的に何か悪い影響があるのではないか?」とか、「たくさん入れたら中で絡まって変な結果になってしまいませんか?」とか、学会でも聞かれたものですが、そういうことはなく、むしろ、多くの本数の溶けない糸が入っていることは、たるみ防止の観点からは、善だ、という結果が出つつある、といっていいと思います。

 考えてみれば、ごく自然な話で、多数の糸を張り巡らしておけば、洗濯ロープが洗濯物吊るすような感じにお顔の中はなってますから、下がりにくいです。当たり前の結果です。

 ですから、現在のわたしの考えは、

1.たるみが気になる人は、たるんで下がってしまった後ではなく、ちょっと気になりだした頃に、それよりも下がらないように、という意味=予防的に、溶けない糸を入れていくといい。

2.本数は数十本程度ではまったく問題ない。むしろ、最終的にそれくらい入っていたほうがいい。

3.将来的には、たるむ前(20代?)に、若さを保つために糸を入れ始めて、40才頃には数十本入っていて、以後のたるみ防止の備えが出来ている、という考え方が一般的になるだろう。

 です。

 実は、以上の考えを、ロシアの知人の先生にメールしてみたんですが、同意、というか、とくに3.は、ロシアでは既に一般的な考えで、モスクワとかのロシア美人なお金持ちたちは、皆若いうちに糸入れてしまうのだそうです。

 ロシアの医学論文にもそう書かれていて推奨されているそうです。やっぱりなあ。結論の行き着くところって、同じですね。

追記:
 「溶けない糸」といっても「金の糸」は駄目ですよ。あれは、ロシアでも際物扱いです。物理的に持ち上げたり支えたりする強度はありませんし、引っ掛かりのcogもありません。ここで「溶けない糸」と記しているのは、あくまでポリプロピレン製のアプトスやエックストーシスといった「溶けない糸」のことです。

(2010年7月23日記)

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