私は元々皮膚科医です。どうやって美容外科(と言ってもプチ整形程度、大きな手術はやりませんが)の手技を覚えたのか?と、ときどき聞かれることがありますが、海外、とくにロシアで学びました。
これは、ほんとうに、たまたまのご縁だったのですが、その昔、金沢大学理学部のバイカル湖の水質環境を調査するチームに同行して、ロシアを訪れる機会がありました。そのとき乗ったタクシーの運転手さんが、医大を卒業したひとで(当時のロシアは、ソ連崩壊後の混乱のため、外国語(英語)の出来るひとは、医者をするより外国人相手のタクシー運転手したほうが、収入がよかったらしい)、そのかたの知り合いの病院を紹介して見学させてくれたのが始まりでした。
余談ですが、ロシアの普通のお医者さんは、英語が出来ません(最近は違うかもしれませんが)。医学部では、ラテン語を習うそうで、ラテン語で詩を書かされたりもするそうです。なので、ロシアの薬の多くはラテン語表記です。
ロシアがわたしにとって良かった点は、まあ、日本の法律に触れるわけではないから書きますが、仲良くなると、わたしがロシアの医師免許を持っていないにも関わらず、手術をさせてくれたことです。その後、アメリカのUCLAメディカルセンターとか、ビバリーヒルズ界隈の美容外科の開業医の先生方のところにも、つてを頼って見学に行きましたが、見せてはくれても、やらせてはもらえなかったです。
なので、わたしは、ロシアで美容外科を学んだ、と自分では思っています。
またまた話がそれますが、ロシアの美容外科の学会は面白いですよ。たとえば、ある先生がオリジナルな針糸を開発して、それによる手術の報告の演題があったとすると、口演が終わると、会場の隅っこで、その先生がその針糸の現金販売始めます。小声でこそこそとやってるんで、雰囲気的には非合法のいかがわしい取引みたいです。
写真まん中は、仲良くしていただいた先生のひとり、アラ先生。わたしは、この頃、まだ若かったですね。もう10年以上前ですか・・。
アラ先生のところでは、いろんな施術を覚えました。熊に噛まれて欠損した鼻の修復とか・・。日本じゃまずありえない手術ですが、ロシアでは熊でなくても犬なんかに噛み切られることは、よくあるらしい。犬にキスしたりするんでしょうか?鼻も高くて噛みつかれやすそうだし。
アラ先生のところでは、アプトスの施術なんかもさせてもらってました。上の写真は、このころのわたしの施術例(before→after)です。
アプトスを日本に紹介したのは、高須クリニックの先生ですが(当時はロシアンリフトと言われてました)、日本の美容外科学会ではじめて高須先生の紹介ビデオを見たとき「ああ、これアラのとこで、私がやらせてもらってるやつじゃん。」と思ったのを覚えてます。
上の上の写真の奥の男性は、バシリー先生というフリーの美容外科医なんですが、とても性格の良い方で、「フカヤは、日本の医者で、手術して働いて、アラが患者からお金を受け取っているんだから、アラはフカヤに給料を払うべきだ。」と、アラに交渉してくれたりもしました。もちろん「いや、自分はロシアの医師免許ないし、勉強に来てるんだから、お金はいいんだ」って言って、辞退しましたが(汗)。
アラ先生は、ロシア人の中でも美人で、若く見えると思います。この当時既に大学生の息子さんがいらっしゃったのが、信じられないくらいでした。
しかし、わたしがアラ先生で、一番感動したのは、下の写真。
ウラジオストックの冬の凍った道はとても滑りやすいです。舗装はほとんどされてないし、何より坂が多い。わたしなんかは、靴裏に金属のつめみたいなの付いた靴はいて、それでもよちよち歩きです。そこをこのヒールで上手に歩かれるアラ先生・・(もしも転んだら、この高そうなコートはどうなるのだろう・・)。
これが、美容をやる女医さんの、心意気・価値観なのだなあ・・。わたしも見習わねば、というか、いやいや私がヒールを履こうと決意したわけではないですが、少なくとも感性を同調させていかなければ、と、眼を洗われる思いでした。
アラ先生、先日、少なくとも45才は越えてるはずなんですが、3人目の子供さん御出産なさったそうです。いや、すごい。
で、なんで、アラ先生の話書いてるかと言うと、思い出したからですが、なぜ思い出したかというと、先日、アラ先生の紹介で、名古屋で働いているロシア人歌手のかた(エレナさん)が糸(アプトス)入れにいらっしゃったからです。「アラが、フカヤが糸入れるの上手だと言ってたので、来た」そうです。アラ先生、ありがとう。
ちょうど、静脈麻酔の様子(麻酔がかかるまでと、覚めるところ)の解説のための、動画のモニターを探していたところだったので、協力してもらうことにしました。
以前は、痛がりのかたには、法令線や口唇のヒアルロン酸注射なんかは、下眼窩神経ブロックとかしてやってたんですが、最近はもう、5分くらいのちょっとした施術でも、痛がりのかたには、即、静脈麻酔。だって、痛みがまったく記憶に残らなくて気持ちよさそうだから。
静脈麻酔のための別料金は頂きません。患者サービスの一環です。痛いの嫌ですよね。
静脈麻酔(かかるまで)
↑クリックすると動画始まります。
静脈麻酔(施術終わって覚めるところ)
↑クリックすると動画始まります。
(2010.6.26記)