飛行機から見えたヒマラヤの山。雲の上に突き出しています。エベレストかもしれません。
乾季なので雪は降らず気温は日本とあまり変わりません。日中はむしろ暖かいくらいです。
ガイドの方が日本語が上手で色々ブータンの事情を教えてもらいました。
驚いたのはこの国には美容外科が存在しないのだそうです。私は20年以上前開業する前に、アメリカとロシアの知人を頼って美容クリニックを見学させてもらったのですが、その時感じたことは
「どんな豊かな国にも、またどんな貧しい国(当時のロシアはソビエト崩壊後で経済は大変だったので)にも美容外科はある」
でした。
なのでブータンに美容外科が存在しないというのは衝撃でした。
男性のガイドでしたが、豊胸手術や脂肪吸引の存在自体を知りませんでした。欲が無い訳では無さそうで、脂肪吸引の話には興味深々で、リベルサス(食欲を抑える薬)の話をしたら早速ネットで検索もしていました。
二重瞼手術の存在は知っているようで、お金持ちはタイまで手術を受けに行くそうです。
ついでに聞いてみたのですが、ブータンには風俗のお店も無いようです。そういうのは法律で禁止されているらしい。
別にブータンの男たちが貞操観念が強いとか性欲が希薄な訳では無く、男性のガイドさんはたぶん40才手前くらいで子供も2人いるのですが「峠を越えたら独身」と言う言葉がブータンにはあると言って笑っていました。
だから自由恋愛はむしろ盛んなのかもしれません。昔は夜這いの風習もあったそうです。
話を美容外科に戻しますが、ブータンは医療費が無料です。それも薬代も含めて。
病院での診療代は無料で処方箋も書いて貰えるけど、薬代は自分でと言う国は多いと思いますが、薬代まで無料という国は私は他に知りません。
なるほどこの辺りが「国民の幸せを追求する国」の所以なのかも。
医療費が完全無料だと人生の不安はかなり少なくなりそうですからね。
教育費も無料です。だから医学部の学費もかかりません。医者は全員公立病院で働き、そこには美容外科という診療科はありません。私立病院というのは一つだけありますが、そこは消化器科であまり流行ってないとのこと。
眼科でレーシックやICLはやっているか?と聞いたら、これまたその手術の存在そのものを知りませんでした。白内障の眼内レンズは知っていて、それは無料だそうです。
それにしても医療や教育費が完全無料って、財源はどこから出て来るのだろう?と尋ねたら、この国の歳入の40%は水力発電なんだそうですね。
ヒマラヤの氷河が溶けて流れ出る水が川になって、それで電気を作ってインドに売っているようです。
ブータンは産油国ではないけれど、氷河っていうエネルギー資源国だったんですね。
それで合点が行きました。政府が豊かでも国民の多くは個人収入が少ないから、福祉は充実しているけど、個人の快楽や欲求を満たす産業は育たないわけだ。
もっとも豊かな歳入を国民の幸福に向けて使おうとする為政者が存在してのことですけどね。この国の王様や先代の王様が国民から尊敬されているはずです。
ブータンの山に連なる高圧電線とヒマラヤから流れてくる川。最終的にガンジス川と合流します。もう一つ重要なのは、この国に根付くチベット仏教の宗教観です。お寺がたくさんあるんですが、葬式にお金を取らないらしい。普段のお賽銭や寄付は受け取りますが。
ブータンの山にはこんな白い旗があちこちに立っています。人が亡くなると108本立てて弔い、灰は一つまみだけ取って残りは川に流します。
一つまみの灰は粘土に混ぜて小さな三角形の形にして、道脇の岩の窪みに置きます。置いたあとは皆似てるのでどれが誰のなのか分かりません。一種のお墓ですが、この三角形のものにお祈りをすることはありません。
お金持ちも貧乏な人も、立派な人も犯罪者も、等しくこの三角形の粘土になって長い年月をかけて土に帰って行きます。これがブータンの宗教観。
ガイドさんの言動からもブータンらしさが時々窺われます。ヒマラヤの山を眺めに行った時のこと、朝方は結構冷えるのでストーブが焚いてあるのですが、ガイドさんそれで温まろうとしません。何故かと聞いたら「暖かくなると外に出たとき寒く感じるから」だそうです。なるほど。
私は昔から「女の美容も男の性風俗も根っこは同じ。欲望の充足であって、誰に迷惑をかける訳でも無いし、それに奉仕して人を幸せにするのは良いことだ」というのがモットーだったんですが、ブータンでの見聞でちょっとだけ考えが変わりました。
念のために書いておきますが、私自身はソープランドとか、なんならキャバクラの類も行ったこと無いですよ。あくまでそういう欲望に寛容ってだけです。誤解しないでくださいね。
美容外科で女性の欲望を満たす自分は、男性でいうところの風俗嬢みたいな存在なんだろうなと思っているってことです。決して卑下では無く、むしろ誇りであり光栄に思っています。普通の男性じゃ出来ないことだからです。
しかし、あまりに欲望を刺激することは、必ずしも幸福には繋がらないのかもですね。
そうは言っても、ブータンのGNH(国民総幸福量)は政府が頑張っているにも関わらず、必ずしも世界的上位ではありません。特にインターネット解禁で、世界の情報が自由に入手できるようになってから、少しずつ社会が変わってきているようです。
そのうちには、海外で勉強したブータン人のお医者さんが、美容外科を開業する日が来るのかも知れません。
しかし私はブータン人の考え方は好きです。本当に幸せになるための一つの手掛かりのような気がします。
ブータンの本屋さんで一冊の絵本が目に止まりました。分かりやすい英語で書いてあって子供の教育用なのでしょう。
仲の良かった友達(年配のおじさん)が死んで悲しむ男の子の話です。とても悲しいけれども、この世に変化しないものは無い。そのあるがままを受け入れて、友達との楽しかった記憶だけが残って行く、そんな男の子の心の変化が記されたもので、これを子供に読ませる社会っていうのはすごいなあって感心します。まさに諸行無常の教え。日本なら私くらいの年齢にならないとなかなか共感しにくいんじゃ無いでしょうか?
最後にもう一つ、ブータンでここだけはぜひ行ってみたいと思った場所があるので紹介します。Drukpa Kunleyという15世紀のお坊さんが建てたお寺です。
このお坊さんが日本の一休禅師顔負けの酒と女好きで、あまりの性豪であったことから、子宝に恵まれるお寺として有名なんですが、全ブータンに男根崇拝を広めた方でもあります。
愛知県に田縣神社ってあるんですが(ご存知ない方は検索してみてください)そこで売ってる「授かり飴」を奉納して、日本とブータンの架け橋になろうって洒落です。
お寺の前で飴を持っているところ。この後お坊さんに田縣神社の説明をして、無事にお供えさせて頂けました。
お寺の菩提樹の木の下です。
お寺の周りにはさすが男根崇拝の総本山。お土産物屋さんがたくさんあります。
白い編み物のペニス形のクッション見つけました。
これルート取るときの腕枕にいいんじゃないかなと思って買ったんですが、またスタッフたちに大反対されるかもしれません。こういうの大好きな婦人科の女医さんの知人がいるのでお土産にあげようかな。子宝のお寺の縁起物だし、私のクリニックより相応しいかも。
これはブータンの石鹸売り場で見つけた男根型の石鹸。これで洗うとご利益で肌が綺麗になるかどうかはともかく、使ってると楽しそうではあります。
ブータンの男根崇拝をまとめた真面目な本で著者は女性です。お土産物屋さんで買いました。
ブータンのある村では、18才以上の選ばれた男たち(素性が分からないように仮面を付けている)が下半身丸出しで家々を回って、お供えを差し出すと幸せになるとか、めっちゃ興味深い話が写真入りで満載です。私こういうの本当に好きで(嫌いな人あんまりいないよね?)自分で翻訳して日本に紹介したいくらい。
「極上のワインは樽の底にある。幸せはヘソの下にある」Drukpa Kunleyの言葉が紹介されています。
美容外科の存在しない幸せの国ブータンのお話でした。今回は溶けない糸の施術の動画が無くてごめんなさい。ブータン的な考えだと、糸の施術もしなくても幸せなのかもだけど、ここは日本だし、男根崇拝的な点ではブータンの方が過激な訳だし、まあお国によってそれぞれってことで。たぶんですが、溶けない糸は入れないよりは入れておいた方が幸福になれますよ。
(2025年1月3日記。実はまだブータンにいるんですが、ホテルでのんびりしながらスマホで書き始めたら夢中になって書き終えちゃったのでUPします。これから帰国です)
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空港に向かう車のドライバーさんからまた面白い話聞いたので追記です。
Drukpa Kupleyのお寺には若いお坊さんが沢山いるんですが、彼らは結婚もしないし女性と交わることも禁じられています。「ご本尊さんがあれだけ遊び尽くしたのに不公平ではないか?」と尋ねたら、Drukpaさんは"enlighten"(教え導く)する人だから良いんだそうです。笑ってたけど。6才で出家する男の子もいるそうでちょっと可哀想。
夜這いですが、最近は少なくなったけど、運転手さん(40才くらい?)も昔はしたそうです。"girl hunting"って言ってました。ガールハントって久しぶりに聞いた。女性の部屋の窓から入る(入れてもらう)のがお約束で、夜に限らず早朝でも昼でもなので「夜這い」じゃないですね。女性の両親も見て見ぬふりすることも多いらしい。
あと、ブータンは女性が複数の男性と結婚する複数婚が合法なんだそうです。最近は少なくなったけど。逆もあって男性が複数の女性とも結婚出来るらしい。
元々は複数の子に農地を分けるよりも、兄弟や姉妹が1人の異性と結婚した方がいいって理由からのようで、日本でも複数の子に農地分けるのは「田分け」って言って愚かな行為で、それで長男だけが相続できたけど、それよりは平等で平和なのかな?
いろいろ面白いですね。
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(乗り継ぎのバンコクで一泊しています。考えがまとまってきたのでまた追記します)
ブータンって、アダムとイブが神様の目を盗んでリンゴを食べて恥じらいを知って性器を隠すようになって追放された楽園に似てると思いました。
私たちは男根に象徴される性的なものを隠す一方で、美容外科に始まる様々な欲望に対してはパンツを履かせない、そういう現代社会に生きているわけだ。
ブータンの先代の王様は4人の姉妹と同時に結婚したそうです。現国王は2011年に結婚する時に「妻は生涯1人だけ」と宣言しました。
私たちの感覚では、新国王の決意は感動的であり美談なんですが、よく考えてみると、前国王は4人の姉妹全員を娶ることで、姉妹たちの間で格差が生まれるのを避けたとも言えます。これもまた一つのよく考えられた判断だと思いませんか?
私たちが当たり前だと思い込んでいる価値観、性器はパンツで隠すべきだが、欲望は抑えなくても良い、お金儲けにしろ、美しく若く見られたい願望にしろ、追求や他人との競争をためらう必要は無いっていう考え方は、ひょっとしたら私たちを幸せには導かないのかもしれません。
欲望との付き合い方って難しいです。解放し過ぎても抑え過ぎても幸せにはなれない。
まずは自覚からですね。当たり前のことは当たり前では無いのかもしれないという。
顔に溶けない糸入れてたるみを予防するっていうのも「当たり前では無い」からこそ検討してもいいと思うんですよね。「結局オチはそこか」って思われるかもだけど、まあここはそういうブログだから(笑)
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チュチュシュシュ(→こちら)の開発・販売でお世話になっている大学の後輩の婦人科医の咲江先生にお土産差し上げたらブログで紹介してくれました(→あけましておめでとうございます! | 咲江レディスクリニック 院長ブログ)。
飾り場所に困っていらっしゃるようです。さすがに婦人科でも難しいのかな?(汗)持て余すようなら引き取りますので、遠慮なくご連絡くださいね。