ピコ秒レーザーはなぜ低出力でしみが取れるのか?(その2)


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は7月1日(土曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年2月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

前回(→こちら)、前々回(→こちら)の続きです。

専門の方が読むと噴飯ものの寝言のような内容の記事かもしれませんが、何とか私なりに納得しようと努めています。これでも高校の頃は数学の実力テストで学年で一人だけ満点とったり、妙に目立って将来を嘱望される人だったんだけどなー。たぶんその頃に「自分はやればできる」みたいな変な自己肯定感が身に付いちゃったんでしょう、分不相応な課題に取り組んで頭をひねる癖が58才になった今でも抜けません。

というか、誰かここをたまたま見た賢い人が「いやそうじゃないよ、こういうことだよ、深谷君。」と噛み砕いてどっかのブログで解説してくれると、本当に嬉しいんですが・・。本記事にリンクして、「こちらを読んで下さい」と誘導させていただきます。Info◎tclinic.jp(◎を@に変える)までご連絡くださいm(_ _)m。

さて、先回、「ピコレーザーはパルス幅が短いのでメラニンが固体の状態を保っているうちに全エネルギーが吸収される、固体から気体になるのはピコ秒単位で、ナノレーザーでは気化して密度が薄くなった後もパルスが続いているので、吸収効率が悪い」みたいなことを書きました。
固体とか気体とか突っ込み所が多すぎると自分でも思います。また、ピコレーザー(Enlighten)のパルス幅は750ピコセカンドあるので、ここに記した「ピコ秒単位」に当てはめるには長すぎるようです・・。もうちょっと調べてみました。
 
レーザー光がメラニンと言うか、物質に当たったときに、エネルギーがどのように伝わるかというと、まず電子に伝わるようです。光は電磁波なので、非常に強い電場のもと、電子の回転やら励起やらを経て、ついには原子から飛び出します。


電子が飛び出してしまった原子核は、プラスの電荷を帯びることになります。プラスの電荷の粒子同士は反発しますから、分子が壊れる結果となります(クーロン爆発)。私が先回「固体が気体に」って書いたのは、このクーロン爆発のイメージと思ってください(汗。


 さて、今回私が、私なりに納得したのは、この電子が原子核を離れて飛び出す率というのが、レーザー光のエネルギー(フルエンス)には比例しないようだ、という話です。
上図で電子が飛び出すのは、レーザー光の非常に強い電場によります。電場(E)に関しては、E=2.74×10^3×I^0.5(I:レーザー強度,W/cm2)という式があります。フルエンスの単位はJ/cm2で、ピークパワーの単位はW/cm2ですから、電子が飛び出す率というのは、フルエンスよりもピークパワーが関係しているのではないか、という発想です。
ちなみに、電子が飛び出すのは、「非線形光学現象」と呼ばれる現象の一つで、光のエネルギーが弱いうちは下式の光が作る電場(E)の一乗の項の数字が大きく二乗以下は無視できるんですが(線形)、光のエネルギーが強くなると、二乗の項の数字が大きくなってきて、これが関係して電子が飛び出すとかいろいろな現象が起こってくるようです。


熱は?というと、そもそも熱と言うのは、分子の振動みたいなものです。光のエネルギーが低くても強くても、電子に伝わったエネルギーの一部は、周辺に伝わります。熱の単位はまさにJ(ジュール)なので、フルエンスそのままです。クーロン爆発を起こすのに用いられなかったエネルギーは、この振動(熱)として未爆発のメラニンおよび周辺に伝わっていくでしょう。

クーロン爆発によるメラニン破壊が、レーザーパルスのピークパワーに関係し、発熱がフルエンスに関係するならば、ピコレーザーはナノレーザーよりも、フルエンスを小さくしてピークパワーを大きく取れますから、しみ取りに向いている、ということになります。すなわち、やけどを起こさずしみ取りができます。

私たち美容系の医師は、「Qスイッチレーザー(ナノ秒)は組織の熱緩和時間よりもパルス幅が短いから周辺組織に熱影響を与えない」と、小坊主が覚えた念仏のように時々口ずさみますが、ここにもう一つ以下を加えると、さらに賢そうに見えるんじゃないかと思います。

「しみ取りはレーザー光がメラニンに吸収されてクーロン爆発することによるが、それにはパルスのピークパワー値が関係する。一方組織の熱変性に関係するのは、フルエンスである。ピコレーザーは低フルエンスでもピークパワー値が高いので、やけどを最小限にしてしみ取りをすることができる」・・うーん、ちょっと長い。

熱の発生にはジュール(J、フルエンス)が関係するが、クーロン爆発によるメラニン破壊にはワット(W、ピークパワー)が関係する。うん、このほうがすっきりします。

後輩「ピコレーザーってなんで低いフルエンスでしみ取れるんでしょうかね?」
先輩「あーそれはね、熱の発生にはジュールすなわちフルエンスが関係するけど、クーロン爆発によるメラニン破壊には、ワットすなわちピークパワーが関係するからだよ。」
・・どうでしょう?格好いいかな?

ちなみに熱緩和理論の話は、パルス幅が数十ナノセカンド程度に短くなると、振動が周辺に伝わりにくくなるという話なので、ピコレーザーでクーロン爆発起きやすくなる話とは別物です。混乱しやすいので注意が必要です。
(2017/06/07 記)

追記
前々回、「ナノレーザー(C6)のフルエンス2.0J/cm2が、ピコレーザー(Enlighten)の0.5 J/cm2に当たるようだ」と記しました。
この両者のピークパワー値を実測して同じくらいならば、話が合います。レーザーのピークパワーを測定する機器はあるようです(→こちら)。
しかし特殊な機器だから、レーザーの保守してくれる技術者さんは持ってないだろうな・・。開発部門でないと。
C6のパルス幅は6nsecで、Enlightenのパルス幅は750psec(0.75nsec)ですから、単純に割って2.0/6:0.5/0.75 =1:2です。1:1にはなりませんね。しかしパルス波形は真四角ってことは無いので、ひょっとしたら実測すると同じくらいなのかも。
感熱紙の反応も、ナノレーザー(C6)のフルエンス2.0J/cm2が、ピコレーザー(Enlighten)の0.5 J/cm2でしたが、この解釈はちょっとまだわかりません。
感熱紙のインクというのは、二種類の化学物質が熱によって溶けて混ざることで発色するようです。ということは、固体を破砕するphotodynamic effectを有するピコレーザーでは、少ない熱でも発色させてしまう可能性があります。ですから感熱紙の黒変=熱ではないのかもしれませんね。

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