ピコレーザー(エンライトン)購入しました


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ピコレーザー(エンライトン)が届きました。ちょっとでかいけど、デザインや色はうちのクリニックに合います。嬉しい。


と喜んでいたら・・納入2日目にしてダウンしました。初期不良みたいです。
モニター表示に「low power」と出て、フリーズする症状で、メーカーによれば、発売直後の製品でときどき見られたようですが、最近は無くなっていたとのこと。回路の一部が温まっていないと認識して(実際には温まっている)しまうバグだそうです。最悪でも一時間くらい電源ONにしていれば、回復するらしいです。実際15分くらい電源付けたままにしていたら回復しました。
ところが、しばらくしたら、今度はモニターがまったく映らなくなってしまいました。再び電話で問い合わせて、電源ONOFF繰り返すなどいろいろしてみたのですが、回復しません。夕方、東京から代替え機運んできてもらうこととなりました。
こういう機械っていうのは、個体差があるものです。外れに当たっちゃったのかなあ・・嫌だなあ。
日本でこの機種は十数台クリニックに納入されているそうで、こういう症状って、他でもあるんですか?とお聞きしたところ、無いわけではないらしく、モニターが出なくなったのも、内部に差し込んであるメモリーカードがずれて外れた可能性が高いとのこと。最近の機械って、プログラムのバージョンアップに備えて、メモリーカードの中にソフト入れてるんだそうですね。
「あと、起こるとしたらどんな不具合でしょうか?」とお聞きしたら、「ハンドピースと本体をつなぐケーブルの不具合です。これは先生のほうでも簡単に交換できます」とのことでした。
対応早いのは有難いんだけど、十数台しか日本に入ってきてない割には、故障対応に慣れてる感じで、それはそれで何だか気が重くなります。「キュテラという会社は、バグをそのままにはしませんから、大丈夫です。」と言ってはくれるんだけど。
 
それは置いておいて、私がピコレーザーを買おうと思ったのは、実際にデモ機使ってみてその感触からです。
ピコレーザーは痛みが少ないです。うちは、顔中しみ取るお客さん多いので、痛み対策になるというのは朗報です。
ただ・・なぜ痛みが少ないのかが、どうも解りません。
 
また、フルエンス(エネルギー密度)についても、腑に落ちない点があります。施術の実感として、メドライトでは2.0J/cm2でなければホワイトニング(しみの黒色がレーザー当てた直後一時的に真っ白になる現象。確実にそのしみが焼けて除去できることを示す目安になる)が起きないようなしみが、エンライトンでは0.5J/cm2くらいで済むようなのです。エネルギー効率が約1/4です。
なぜだろう?・・
 
ピコレーザーとナノレーザーの違いを簡単に説明すると、ワンショットのパルスの波形の違いです。

ピコレーザーのほうが、同じフルエンス値でも、ナノレーザーよりも短時間でピーク値の高いレーザー光を出します。
パルスが短時間であればあるほど、周辺への熱の拡散は少なくなって、やけどを起こしにくくなります。・・もっとも、物質や細胞、それぞれに特有の「熱緩和時間」というものがあり、それより小さければ、理論的にはピコ秒でもナノ秒でも同じはずですが。
 
ちょっと思いついたことがあって実験してみました。パン屋さんのレシートを見ていてひらめきました。


レシートというのは、感熱紙です。熱が加わると、黒変する薬品が塗られています。
これに、ピコレーザーとナノレーザー当ててやれば、黒変の程度で、両者のエネルギーがどれだけ熱に変換されたのかを確認することができるのではないだろうか?
ピコレーザーのほうが周辺に熱変性起こしにくいことが視覚的に確認できるかもしれません。
熱変性起こしにくければ、やけどを起こしにくいから痛みが少ない理由になるし、熱という無駄なエネルギーに変換されなければ、その分エネルギーが効率的に色素破壊に使われているということだから、フルエンス値が低く済む理屈です。
それで、クリニックのレジから感熱紙を少し頂戴して、両レーザー当ててみました。

両レーザー、各フルエンスにつき、縦に4発づつ打ってあります。うーん・・。
メドライトのほうは解りやすいです。フルエンスが上がるにつれ、感熱紙の黒変も濃くなってきます。
エンライトンのほうは・・予想としては、メドライトよりも周辺への熱影響及ぼしにくいだろうから、黒変もメドライトより薄いんじゃないかと思ったんですが、そうなりません。
むしろ、フルエンスのいちばん小さな0.5J/cm2で一番濃く、メドライトの0.5J/cm2よりも濃いです。ということは、熱影響はエンライトンのほうがメドライトよりも大きい??
マイクロスコープで、感熱紙を拡大してみました。


 どうも、メドライト(C6)の2.0J/cm2の発熱は、エンライトン0.5J/cm2と同じくらいのようです。エンライトンのそれ以上のフルエンスの結果が薄く見えたのは、感熱紙の黒変自体を、エンライトンが分解してしまったように見えます。
そこで、0.5J/cm2のフルエンスで、一か所に繰り返し照射を行ってみました。

予想通りで、メドライト(C6)の場合は3回繰り返したところがピークでそれ以降は、いったん黒変した感熱紙を白くする方向へと転じます。エンライトンの場合は、一回目がピークでそのあとは、黒変した感熱紙を脱色していきます。
次に、黒い紙を用意して、ここに両レーザーを、フルエンスを変えて打ってみました。

ここでも、やはりメドライトの2.0J/cm2が、エンライトンの0.5J/cm2に相当します。色素を破壊する力も、発熱量も、同様にメドライトの2.0J/cm2が、エンライトンの0.5J/cm2に相当するようです。
 
そうすると、「メドライトの2.0J/cm2が、エンライトンの0.5J/cm2に相当する」という臨床的体感とは合致しますが、痛みがエンライトンでは少ないことの説明がつきません。
思いつくのは、エンライトンのほうが、パルス幅が1/100くらいに短いですから、同じ熱量のやけどでも、瞬間的にチカッとしたやけどのほうが、じわーっと長めにしたやけどよりも痛みが少ないという可能性です。・・うん、痛みに関してはそういうことかなあ。
感熱紙が同じように黒変してしまうのは、たぶん感熱紙の熱緩和時間よりも、ナノレーザーのパルス幅が、すでに十分短いんでしょう。すでに十分に短いものを、さらに1/100程度に短縮しても、発熱はさほど変わらないと。(違うような気がしてきました。追記1
ただ、同じ効果を出すのに、フルエンスが小さくて済む理由が、どうもわかりません・・。光音響効果が加わるために、低フルエンスでも効果的に色素が壊れるってことなんでしょうか(←たぶん違います。追記2参照) ちょっと私の頭では、このあたりまでが限界です。

低いフルエンスでしみが取れるということは、それによって発生する活性酸素も少ないはずです。それなら炎症後の色素沈着も弱くなって良さそうです。
しかし、以前デモ機持ってきてもらったときに、数名を、半顔をエンライトンで、半顔をメドライトでしみ取りしてみたんですが、戻りじみ(炎症後の色素沈着)に左右差は無さそうでした。
ただし、このときは、フルエンスに関してそれほど意識してなかったので、メドライトを2.0J/cm2、エンライトンを0.5J/cm2に揃えて比較したら、よいデータになるのかもしれませんが。
 
とにかく、ピコレーザーでしみを取ると、多少痛みが少なく済むメリットはあるみたいです。いまのところはそれだけ。患者にとっては何よりかもですけどね。
(2017/06/02 記)
 
追記1:
感熱紙が同じように黒変してしまうのは、熱緩和時間云々の問題ではいような気がしてきました。マクロでの発熱量は同じだが、ミクロではピコレーザーのほうが、より色素選択的に作用しているというのはあり得ます。

追記2:
タトゥー除去の時に、ピコレーザーの方が治療成績が良い理由として、ピコレーザーが衝撃波を発生することがあります(photodymanic effect)。
しかし、これは、タトゥーに用いられている色素が、無機物の硬い塊であってこそです。腎結石破砕のときにも、衝撃波が用いられますが、結石が固いからです。柔らかいものも破砕するなら、人体全体が壊れてしまうでしょう。
そこから考えると、しみやADMなど、メラニン色素が原因の場合は、衝撃波は関係なさそうです。

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