ピコ秒レーザーはなぜ低出力でしみが取れるのか?(その5)

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その4は→こちら
 
ピコ秒レーザーでしみを取るメカニズムを理解しよう思って文献を読むと、光音響効果(photoacoustic effect)と光力学的効果(photodynamic effect)という言葉が出てきます。読み流してもなんとなく解ったような気分にはなりますが、気になって調べると、物理学の知識やら数式の壁に突き当たります。お医者さんっていうのは、元々学力のある(あった)人が多いので、すらすらと理解できる人ももちろんいるのでしょうが、私を含め、ほとんどの美容系医師にとっては歯が立ちません(と思います。私だけじゃないよね?(^^;)。
それでも、お医者さんと言うのは、理解していなくても判っているような顔をするのは得意だし(そういう仕事なんですよ。お医者さんが「判らん」と言って首ひねっていたら患者さん不安でしょ?)、レーザー照射するのにどうしても必須の知識と言うわけでもないです。しみが取れればいいんだから。
一応、私が理解している限りを、イラストを用いて直観的に、数式を一切用いずに以下に解説してみました。私と同レベル以下の方々のお役に立てれば幸いです。
 
しみ取りのターゲットは、表皮細胞内のメラニンです。皮膚にレーザーを当てると、メラニンの分子中の電子(e)が励起されてメラニンがエネルギーを吸収します。

吸収されたエネルギーは原子核や分子全体の振動のような形で伝わります。

さらには、この振動すなわち熱はメラニンを取り巻く水などの分子にも伝わります。水は気化して空疱となります。これが、レーザーでしみ取りをするときに、十分なエネルギーが伝わったかの目安とされるIWP(immediate whitening phenomenon)です。

 
パルス幅が短いと、周辺への熱損傷が少ない、というのは、下図のようなイメージです。パルス幅を短くしていくと周囲への熱損傷はほとんど考慮せずによくなります。このパルス幅の理論的計算値が「熱緩和時間」です。とはいっても、メラニン分子からどこかに熱は逃げなければなりません。あくまで熱損傷がおきなくなるということですね。


さて、先回まで私が非常に悩んでいたのは、「エンライトン(ピコ秒レーザー)では、照射フルエンス0.5J/cm^2で、メドライトC6(ナノ秒レーザー)2.0J/cm^2と同程度のIWPが生じる」という事実です。上のイラストイメージからだけ考えれば、同程度のIWPを生じさせるには、ピコ秒だろうがナノ秒だろうが、同じだけのエネルギー(フルエンス)が必要なはずです。


ピコ秒レーザーでは、ピークパワー(W/cm^2)が高く、電子が感じる電場が強いです。すると、電子の励起レベルが非常に上がり、そのためにメラニンの化学構造が変化したりもします。ナノ秒レーザーおよびそれ以上のロングパルスレーザーでは、電子は熱を伝える通過点に過ぎなかったのですが、ピコ秒レーザーでは、電子の励起によっていったん蓄積される感じです。それが一気に放出されて周囲に熱影響をおよぼすと、同程度の水蒸気の気泡を作るには4分の1のレーザーエネルギーで済む、ここの計算は、どうやってするのかは私にはわかりませんが、「エンライトン(ピコ秒レーザー)では、照射フルエンス0.5J/cm^2で、メドライトC6(ナノ秒レーザー)2.0J/cm^2と同程度のIWPが生じる」というのは、そういうことだと思います。

コップに水を入れて運ぶ話で例えましょう。ピコ秒レーザーは電場が強いため、電子というコップが大きくなります。ナノ秒レーザーではこのコップが小さいので4回運ばなければなりません。そのために蛇口を出しっぱなしにしておかなければならないので、無駄が多い、っていう感じです。

 
さて、光音響効果(photoacoustic effect)ですが、このように高エネルギーとなったメラニン分子は、温度も高く、体積も増します。ただしそれはほんのわずかの時間(ピコ秒)です。しかし、この僅かの時間の間に体積が膨張と収縮を行うことで、密度の波が生じます。密度の波=音波です。



光音響効果(photoacoustic effect)というのは、レーザーでしみ取りをするときにあまり関係のある話ではありません。このあとに記す光力学的効果(photodynamic effect)を理解するための前知識です。エネルギーの強弱に関わらず、パルス幅が短くなると生じます。
 
さて、パルスレーザーのピークパワーが高くなると、電子の感じる電場もさらに高まり、ついには電子が原子や分子から離れてイオン化するプラズマという状態になります。プラズマの温度は非常に高く、体積も膨張します。それが短時間でオンオフされると、密度の波が音速を超えます。これは衝撃波と呼ばれます(光力学的効果(photodynamic effect)。
衝撃波というのは、津波のようなもので、破壊力が大きいです。ただし物質には衝撃波に対する強い弱いがあり、タトゥー色素に用いられる炭素や金属粒子などは、衝撃波に弱いです。生体組織は衝撃波に弱くはありません。腎結石の衝撃波治療で腎臓が破裂しないのと同じです。
 
上記のように考えてきたとき、ピコ秒レーザーが低出力でしみ取りが可能なのも、衝撃波を発生してタトゥーを効率よく除去できるのも、ピコレーザーが強い電場を有しており、電子が大きなエネルギーを得ることができるからです。レーザー光の電場はピークパワー(W/cm^2)に規定されます。フルエンス(J/cm^2)ではありません。
ロングパルスレーザーを用いて脱毛をするようなケースでは、熱損傷を利用するのだから目安はフルエンスで良いですが、ナノ秒やピコ秒など、組織の熱緩和時間よりも短いパルス幅のレーザーにおいては、ターゲットの物質の電子にどれだけ大きなエネルギーを伝えられるかが重要なようです。それならば、レーザーのパネルの表示はフルエンスではなくピークパワーであるべきだと思いませんか?
 
書きながら、途中で、そうだ、これ英文にして、キュテラ開発部のDr. Wytzeに送ってみよう、と思いつきました。物理をよく知らない人がなんとか理解しようと頭をひねるとこうい風になるのかと興味もってくれそうな気がします(^^)。

また、書きながら思ったんですが、いわゆる肝斑のレーザートーニング、あるいはレーザーカーボンピーリングのような低出力繰り返し治療を、ピコ秒レーザーで行うメリットは少ないかもしれません。出力下げてピークパワー落とせば、電子エネルギーはナノ秒レーザーと同じレベルになってしまうからです。むしろフルエンスが少ない分、発生する熱が少なく、物足りない施術になってしまいそう・・。
(2017/06/29 記)

私自身の若返り


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先日JSASの学会のあと、FBで意見交換していて、いま元気に活躍している30代~40代の先生たち、私自身が顔に溶けない糸いれていること知らないようだったので、私自身のbefore/after写真再掲してみます。
私は2004年の3月に、シンガポールのDr.Woffles Wu(シンガポールで一番有名な美容外科医です。例えていうなら日本の高須先生)が日本にライブサージャリーに来た時に、自ら志願してモニターになりました。自分が施術している糸を、患者の側になって実感してみたかったからです。


施術中の様子。


施術直後。



施術前の写真(2004年、45才)と、今日(2017年、58才)の写真。13年を挟んだbefore/afterです。



頬の肉、落ちては来てますが、糸頑張ってくれてはいると思います。さっき、スタッフに何才に見えるか聞いてみたら、「左は40才、右は50才」だそうです。45-40=5、58-50=8なので、若さ値は+5才から+8才に変化、若返り効果は+3才です。もともと童顔で若く見える分を差し引いても、実年齢よりは糸のお陰で若干若くみえるということでしょう。

「己の欲せざるところを人に施すことなかれ」という言葉があります。医師の行動指針・規範といっていい。自分がしたいことをするのではなく、自分がされたくないことを患者にしない。私は美容外科に転じる前も、このことを常に頭において医療に携わってきました。
六本木の境先生は、スプリングスレッドが感染率の高い糸であってもそれを上回るメリットがあると考えて患者に勧めるならば、何よりもまず自身がスプリングスレッドの糸の施術を経験してみるべきだし、もしも日本に自分よりも腕の良い医師がいないのなら、開発者であるフリスマン医師のところまで行けばいいです。私ならそうします。ほんとにそうすればいいのに。
それに比べると、あきこクリニックの田中先生の、直観的に溶けない糸に抵抗があるから、自身にも患者にも施術しない、という感覚のほうが、私としては納得できます。
ただし、親近感というか、好感度は境先生のほうが高いです。溶けない糸の効果を認識しておられるからです。忌憚のないところをこうやって記していますが、私のほうが一回り年長ですし、檄を飛ばされていると感じてください。なんだかんだ言っても、最終的には年齢の若い人の勝ちです。先に引退するのは私でしょうから。

昨日、和子先生が、ちょっと面白くないことがあったようで、「先生、糸入れて」と言ってきたんで、追加しました。ほとんど美容院で髪切る感覚ですね。
和子先生のこれまでの経過は→こちら

術前


デザイン。自作のアプトススプリング二本ずつ、計4本です。


術直後。


和子先生、昔から小生意気なところがあって、いろいろ名言あるんですが、勤務医で同じ病院で働いていたある日、医局で和子先生、のりこ先生、私の三人でお茶していて、病棟から呼ばれた時のこと、
「私たち(和子先生とのりこ先生)は、何もしなくてもきれいだから行かなくてもいいの。先生(私のことです)は、働いている姿が美しいんだから、先生行ってらっしゃい。」
本人は忘れちゃってるみたいなんですが、あまりに名言過ぎて、一生忘れられそうにありません(^^)。
先日、和子先生、のりこ先生と、大名古屋ビル33Fのオルクドールでお茶してきました。三人とも50才を越えて、私はもうじき60才です。いつまでもとはいかないでしょうが、できるだけ長くこの二人の美貌を守りつつ、私自身の「美しい仕事姿」をも、保ちたいものです。


(2017/06/25 記)

 

ピコ秒レーザーはなぜ低出力でしみが取れるのか?(その4)


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前回(→こちら)、前々回(→こちら)、前々々回(→こちら)、の続きです。
ピコレーザーのピークパワーのデータはないかなあと思って、ネットで検索してみたら、見つかりました。

エンライトン532nmで0.4ギガワット(0.4×10^9 W/cm^2)、サイノシュア社のピコシュアで0.36ギガワットです。フルエンスで2.0J/cm^2出せるからエンライトンを買ったんですが(→こちら)、ピークパワーは同程度なんですね・・。

せっかくデータ見つかったし、先回ヤフー知恵袋で神様が降臨して道しるべ授けてくださったんで、自分でも計算してみました。

ピコ秒レーザー:フルエンス 0.5J/cm^2, パルス幅 750psの場合、完全な矩形波であるとすれば、ピークパワーというか光強度は、0.5J/cm^2÷750ps= 6.7×10^8 W/cm^2 になります。上表の数字とほぼ同じです。
一方、ナノ秒レーザー:フルエンス 2J/cm^2, パルス幅 6nsの場合、同様に完全な矩形波であるとすれば、ピークパワーは2.0J/cm^2÷6ns= 3.3×10^8 W/cm^2 になります。C6の波形はトップハットですから矩形に近いはずです。
同じフルエンスでも波形がガウシアンのMedLiteⅡでは、ピークパワーが少し高くなるはずです。


ただし、ガウシアン波形の場合、中央部のピークパワーは高くなるのですが、周辺部が低くなります。
エンライトンでしみ取りをしてみて、感じるのは、直径5mm以上のスポットサイズ(MAX8mmまで設定できます)になると、周辺部が中心部に比べてホワイトニングが起きにくくなる点です。たぶんガウシアンなのでしょう。ですから、エンライトンの場合、スポットサイズはなるべく小さくして、大きな面積を取るときには、Hzを増やして施術したほうが良いと思います。

エンライトンを使用してみての経験上、ホワイトニングの程度が、直径2mmのほうが、直径8mmよりもはるかにしっかりしているので、おそらく上表のピークパワー値もまた、直径2mmでの値だと思われます。
私は、C6とMedLiteⅡを持っていたのですが、しみを取るときは、経験的にMedLiteⅡのほうが良さそうだと思って使ってきました(→こちら)。またMedLiteⅡは初期モデルなので、大きなスポットサイズで強いフルエンスが出ません。Hzは出せるので、2mmのスポットサイズでHzを多くして(5または10回/秒)面積の大きなしみを取ってきました。いま、振り返ってみると、理にかなったことをしていたのだなと感じます。

話を戻して、上表のエンライトン532nmのピークパワーは、0.4ギガワット(0.4×10^9 W/cm^2)です。この光強度で、クーロン爆発は起きないでしょうか?
水素原子の1s 軌道の電子が原子核から感じる電場は、5×10^9 V/cmです(→こちら)。ちなみに、なぜ水素原子を引き合いに出すかというと、一番小さな原子なので、クーロン爆発も最小のエネルギーで生じるだろうからです。
E = 2.74×10^3 √I の計算式を使って、電場(E)から光強度(I)を計算すると、5×10^9 V/cmは3.3×10^12 W/cm^2 に当たります。
0.4×10^9 W/cm^2 と 3.3×10^12 W/cm^2 では、約1万倍の開きがありますね。クーロン爆発は起きなさそうです。
 
キュテラの方のお話しだと、750psというパルス幅は、技術的限界で、フルエンスを同じにしてこれ以上パルス幅を短くすると、プラズマが発生してしまうのだそうです。プラズマっていうのは、原子核や電子が自由に飛び回っているような状態のことをいいます。しかし、メラニン顆粒がプラズマになってしまうと、何か悪いことがあるのかなあ?
クーロン爆発未満だと、光励起の結果、水素の移動などの光化学反応が起きるようです(たとえば→こちら)。

しかし、こうなると、C6, MedLiteⅡ,エンライトン各レーザーの、すべてのスポットサイスのピークパワー実測して確認したくなってきました。実はキュテラ本社の開発部に、協力を仰いでいます。関心持ってくれるといいんだけどなあ。

 ☆―――――☆―――――☆―――――☆―――――☆

固い話が続きました。エレナさんオリガさんタチアナさんのコーラスどうぞ。今夜名古屋市内のお店で舞台に立つのですが、その前にクリニックの待合でアカペラで一曲歌ってもらいました。
もともと三人、音大出てトリオ組んだのですが、折からのソ連崩壊、いろいろあったことでしょう。そのあたりに思いを馳せながら、お酒飲んでこようと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=rTgUBc-M3ck 

ちなみにこの歌は「ウラルのグミの木(Уральская рябинушка) 」と言って、рябинаという花が二人の若者に恋をされてどちらが良いのか思い悩むという内容の歌詞です。たぶんロシアの女性は歌うと幸せな気持ちになるんじゃないかな。


音楽も、歌詞の意味知ってると知らないでは、感傷も違ってきます。レーザーも、仕組みを知って使うのと、知らずに使うのとでは、やっぱり違いますよ、って落ちで(^^)。
(2017/06/16記)

Cuteraのアメリカの開発部門から回答がきました。具体的なデータは公表しないでくれと言われているので出来ませんが、Enlightenの532nm,0.5J/cm^2とMedLiteC6の2.0J/cm^2のピークパワー値は、私の予想通り、かなり近いです。
パルス幅が組織の熱緩和時間より長い(熱で効果を出す)脱毛レーザーのような場合には、指標はフルエンス(J/cm^2)でいいですが、パルス幅が組織の熱緩和時間より短い(電場で効果を出す)ナノ秒レーザーやピコ秒レーザーでは、パネルの表示はピークパワー(W/cm^2)であるべきなんでしょうね。
 

ピコ秒レーザーはなぜ低出力でしみが取れるのか?(その3)


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前回(→こちら)、前々回(→こちら)の続きです。

「Yahoo知恵袋」で質問してみました。
賢い方が登場して答えてくれて、すーごっくよく解ったので、転記しておきます。
数式がたくさん出てきますが、飛ばして文章だけ読んでいっても、雰囲気は解るんじゃないかと思います。
まずは私の「質問」です。

=====
ピコ秒レーザー(パルス幅750ps)とナノ秒レーザー(パルス幅6ns)についての質問です。
両レーザーで色素(メラニン)を分解するとき、経験的に、ピコ秒レーザーの0.5J/cm2のフルエンスによる効果が、ナノ秒レーザー2.0J/cm2のフルエンスによる効果と同等のようなのですが、フルエンスが違うのに効果が同等である理由がわかりません。
ネットで調べて、高エネルギーレーザーによる効果として、非線形吸収という概念があり、電子が分子から剥ぎ取られる結果クーロン爆発が起こってメラニンなどの分子は分解される、この非線形吸収は電場(E)の二乗が関係する、といったことを読みまして、またW=qEdといった式も見つけたので、両レーザーによるメラニン分解の効果は、フルエンスではなくてパルスのピークパワー(W)によって規定されるのだろうか?と考えました。両レーザーのピークパワーの比は、単純に計算して0.5/0.75:2.0/6=2:1と、フルエンスの比4:1よりは1:1に近いです。実測すればさらに1:1に近いかもしれません。
 一方、発生する熱は、ジュールが関係するでしょうから、フルエンス比の4:1と考えると、熱の発生を出来る限り少なくしてメラニンを分解したいという観点からは、ピコ秒レーザーが優れていると言うことになります。
 以上の私の考え方は、おかしいでしょうか?おかしい点がありましたら、なるべく解り易くご教示いただけましたら助かります。よろしくお願いいたします。
=====

 
これに対する回答として、

=====
的外れかも知れませんが光→熱エネルギーへの変換、特に温度上昇がメラニンを分解できる温度に達するかどうかにあるのではないかと思い、もしかして以前に調べたことが役に立つかもしれないと考え回答しています。
パルスエネルギーを金属表面に照射後の表面・内部の温度上昇を調べたことがあります。 厳密に計算することは困難なので概略を知る目的で理想状態の熱伝導方程式から求めました。
熱伝導方程式は、
∂T(z,t)/∂t = χ(∂^2T(z,t)/∂z^2)+P(t)/ρc
です。
ここで、
χ:熱拡散係数(m^2/sec) = k/ρc
k:熱伝導率(W/m K)
ρ:密度(kg/m^3)
c:比熱(J/kg K)
P(t):表面で吸収されたエネルギーパワー(W/m^2)
です。
条件は、深さのz方向のみに熱伝導するとしていること、パルス形状は矩形であることなどです。
この条件での解は、パルス幅をτとして、
0 ≦ t ≦ τにおいて
T(x,t) = (2P/k)√(χt) ierfc(z/√(4χt))
τ < t において
T(x,t) = (2P/k){√(χt) ierfc[z/√(4χt)] - √[χ(t-τ)] ierfc[z/√(4χ(t-τ))]}
ここで
ierfc(x) = (1/√π)exp(-x^2)-x(1-erf(x))
erf(x) = (2/√π)∫[0,x] exp(-s^2)ds
です。
この曲線は、深さzを固定して時間tによる温度変化をみると指数関数に類似する曲線で上昇し、最大温度に達したのち指数関数に類似する曲線で下降します。
照射後の表面の最高温度Tmは、
Tm = T(0,τ) = (2P/k√π)√(χτ)
となる。
今、波長や対象物の条件は同一とし、パルス幅と入射パワーとの関係のみに着目すると、
最高温度はP√τ = (F/τ)√τ = F/√τに比例するのでこれを材料として比較する。
以下は概算です。
ピコ秒レーザー:フルエンス 0.5J/cm^2, パルス幅 750ps
Tp = 0.5/√(750×10^(-12)) ≒ 18000
ナノ秒レーザー:フルエンス 2J/cm^2, パルス幅 6ns
Tn = 2/√(6×10^(-9)) ≒ 26000
最高温度はピコ秒:ナノ秒 = 1:1.4となります。
この計算はいろんな条件を付しての概算ですが両レーザーによる温度上昇がかなり似ているので、メラニンの分解にほぼ同等の効果があると見做せる。
すなわち、(フルエンス/パルス幅の平方根)が判断材料になるのではないでしょうか。
ただし、これはあくまでも温度がメラニン分解の主因であるとの仮定によるものですが。
=====


この方は、金属のレーザー加工がご専門なのでしょうか。金属は単一元素ですから熱だけを考えればいいですが、有機物の分解の場合は、分子の変化が関係してきます。
しかし、とても興味深い回答です。
イラストにすると、こんな感じです。

レーザーを照射したときの表面温度が、フルエンスのみではなく、パルス幅(の平方根)によっても規定されるとすれば、前々々回(→こちら)で紹介した、感熱紙に両レーザーを当てた実験結果の謎が解けます。
フルエンス 0.5J/cm^2, パルス幅 750psのピコレーザーと、フルエンス 2J/cm^2, パルス幅 6nsのナノレーザーの黒変の程度はほぼ同じでした。私は温度上昇や組織のやけどと言うのは、フルエンスに比例するような気がなんとなくしていたので、感熱紙の結果が不思議だったのですが、まさにそこが説明できます。
 
私のお返事です。
=====
ありがとうございます。1:√2は1:2よりも1:1に近いです。
実は、両レーザーをレジの感熱紙に当ててみたのですが、フルエンス 0.5J/cm^2, パルス幅 750psとフルエンス 2J/cm^2, パルス幅 6nsの黒変の程度はほぼ同じでした。私は温度上昇や組織のやけどと言うのは、フルエンスに比例するような気がなんとなくしていたので、感熱紙の結果が不思議だったのですが、そこも説明できそうですね。
 素人の質問で恐縮なのですが、メラニン分子のクーロン爆発というのは、フルエンス 0.5J/cm^2, パルス幅 750psで起き得るものなのでしょうか?(自分で計算してみろと言われそうですが自信がないです)もし起きるとしたら、それに使われたエネルギー分は、組織の熱上昇からは差し引かれる=やけどが少ない、と考えてもいいでしょうか?
感熱紙の黒変は、まさに説明つくと思うのですが、メラニンの分解が最高温度に依存するというところが、やはりどうもひっかかります。
なかなか相談できる人がおりません。よろしくお願いいたします。
=====


とても親切な方で、この追加質問にもお返事くださいました。それも痒いところに手が届く様に。こういうのを「神」というのでしょうか?本当にありがとうございます。

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回答をした手前少々責任を感じて調べてまとめてみました。 非専門なのであくまでも参考程度としてください。

分子がレーザー光の多光子で励起、イオン化(共鳴多光子イオン化)しさらに光励起されて分解し、生成されたフラグメントがさらに光を吸収して小さいフラグメントに分解されるという過程がメラニン分解過程のようです。励起状態中に次の光子が吸収されなければならないということから、レーザー光の強度(W/cm^2)の強さが支配的だろうと思われます。温度は電子励起のあとの電子-格子相互作用を通じて熱エネルギーが格子に伝わるもので副次的な現象と見るべきもののようです。(以前のわたくしの目的は金属表面の溶融であったのでその目的にはあっている。)

レーザーの光強度I [W/cm^2]と光の電場の振幅E [V/m]には次の関係がある。
E = 2.74×10^3 √I
レーザー光強度が強くなって10^12~10^14 W/cm^2では電場が強いので共鳴準位がなくてもイオン化する非共鳴吸収が起こる。

さらに高強度が強くなり10^15 W/cm^2になると電場Eは8.6×10^10 V/mに相当する。レーザー場からの強い電場擾乱によって生成した分子の多価イオンは、電荷間の強いクーロン反発によって速やかな 解離=「クーロン爆発」を起こす。クーロン爆発は光励起によって原子間結合を直接に切断する現象です。
750 psのピコ秒レーザーならば、7.5×10^5 J/cm^2のフルエンスが必要となり実現は難しい。クーロン爆発にはフェムト秒レーザーが不可欠となります。
パルス幅がピコ秒の時間を境にして、レーザーと物質との相互作用は熱的過程と、非熱的過程の領域に区分されるそうです。
時間の境界は、電子エネルギーから格子イオンへの緩和時間です。その時間が金属では~1psということです。フェムト秒レーザーでは熱的影響をうけない。特に金属への微細孔加工でフェムト秒レーザーでは孔周辺が加熱されないのでバリのないきれいな孔が開けられる。


以上調べた結果では、多光子共鳴吸収によるイオン化、フラグメント化がメラニン分解の過程であるようです。これによると、「フルエンス/パルス幅」が大きいことが必要です。
ピコ秒レーザー:ナノ秒レーザー = 2:1
でピコ秒レーザーが勝っているようです。
(勝っているほうの)ピコ秒レーザーでも、光強度は6.7×10^8 W/cm^2であるので、クーロン爆発の条件には達していません。

以下は参考にしたサイトです。http://optipedia.info/laser-handbook/laser-handbook-8th-section/36-5/
https://www.ims.ac.jp/public/docs/304.pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2013_07/jspf2013_07-493.pdf
=====
 
屋上屋を重ねるというか、蛇足と言うか、私なりにポイントをまとめますと、

1) 両レーザーによるメラニン(有機物)の破壊は、光励起によるイオン化・フラグメント化が主。(私はたぶん、光励起によるイオン化・フラグメント化と、クーロン爆発とを混同していたのだと思います)。
2) 光励起は、光の作る電場Eによって起こり、Eは光強度(I)から導かれる(E = 2.74×10^3 √I)。
3) 従って、メラニンの破壊は、レーザーパルスのフルエンス(J /cm^2)ではなく、ピークパワー値(W/cm^2)の大小による。

補足として、
1)両レーザーによるメラニンの破壊において、熱緩和時間未満であることを考えると、周辺への熱の影響はほとんどない。冒頭の私の質問の「熱の発生を出来る限り少なくしてメラニンを分解したいという観点からは、ピコ秒レーザーが優れている」という仮説は、間違ってはいないかもしれませんが、そもそも両レーザーとも、周辺への熱の影響はほとんどないのだから、「優れている」とまでは言い難い。
2) ピコレーザーではクーロン爆発までは起こらない。
です。

以上考えると、少なくともピコレーザーより短パルスでは、機械のパネル表示をフルエンスではなくピークパワーにしたほうが理にかなっている、と言えそうです。

イラスト訂正しておきます。ああ、すっきりした。
(2017/06/15 記)
 

刑事告訴してきましたー「このスレのクリニック・医師が死亡事故を起こした記事見つけたんだけどマジ怖!」 その2


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は71日(土曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年2月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m

前回の記事(→こちら)の続きです。
中警察署に被害届を提出してきました。

 
被害届を出すというのは、生まれて初めてです。内容によっては受理されないことも多いと聞いていたので、可能性半々くらいかなあと思いながら、クリニックから警察署まで10分くらいを歩きました。
2ちゃんねるの該当ページをプリントアウトしたものを持参して受付で説明すると、まずは男性警察官が対応してくれました。話の飲み込みは早く、じきに刑事課の知能犯担当の方がいらっしゃって、しばらくしてから、さらに上司の方でしょう、年配の方が加わりました。
結論として、刑法230条(名誉棄損)「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」で、被害届を受理していただけました。
 
私は同時進行で、民事で弁護士に依頼して2ちゃんねるにIPアドレス保全を請求していますが、民事と刑事では同じ「名誉棄損」ではあっても、重みが違います。
今回、179件という多くのクリニックのスレッドに対して、一斉に名誉棄損の書き込みがあり、それが特定のサイトへの誘導であるという点が悪質と判断されたのだと思います。

受理番号、連絡先は下記です。この件に関して何か情報お持ちの方は、直接刑事課にご連絡ください。また、書き込んだご本人の方にも、自首をおすすめします。民事と異なり、警察が動けば、発信元はかなりの確率で判明します。判明前に自首すれば、多少は刑が軽くなるでしょう。
「代理の人を自首させよう」とか、変なことは考えないほうが身のためですよ。警察も裏を取るでしょうから。

 (最後に「被害届の受理証明ではありません」とありますが、このメモが受理証明ではないということであって、受理はされています)
 
また、被害を受けたクリニックのリストは、前記事の終わり(→こちら)にまとめてありますので、該当のクリニックや先生方におかれましては、私と同様に、警察署に出向いて被害届を出すことを、強くお勧めいたします。なぜなら、確認してきたのですが、今回の私の告訴は、あくまで愛知県中警察署内で完結するものだそうだからです。
私は、こういったネット関連の犯罪というのは、専門性が高いから、一括してどこか特殊な部署に送られるのかと思っていたのですが、そうではないようです。ですから、例えば、海外のサーバーを経由しているなど複雑な状況であると、担当捜査官のスキルが関係してくるかもしれません。せっかく多くの被害者がいるのだから、各警察署に届けていろいろな人に捜査してもらったほうが犯人に辿り着く可能性が高まります。
その際、私がすでに中警察署に被害届を提出して受理されていること、同時に179件の書き込みがされており悪質であることを強調してください。そうすれば受理もスムーズに運ぶと思われます。

美容外科業界っていうのは、いろんな輩がからんできます。西部開拓時代の無法地帯のような観もありますが、だからこそ、私たち医師は、自警団のごとく毅然として、アウトローを排除していかなければなりません。そのように環境を整備していくことで、酒場(私たちのクリニックの例えです)に、安心してお客さんが立ち寄ることが出来ます。皆で力を合わせましょう。書き込みされた他のクリニックの先生方におかれましても、お手間ではありますが、被害届の提出よろしくお願いいたしますm(_ _)m。(警察署の刑事課というところも、なかなか行く機会ないですから、面白いですよ)
(2017/06/12 記)

「このスレのクリニック・医師が死亡事故を起こした記事見つけたんだけどマジ怖!」その1


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は7月1日(土曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年2月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

2ちゃんねるというのは、若い方は知らないかもしれませんが、40~50才代にはなじみの深い匿名巨大掲示板です。SNSの無い時代には、情報交換の場所として一世を風靡しました。
中に書かれている情報の質は、まさに玉石混交で、眉に何度も唾つけながら読み込まなければなりませんが、時に役立つこともあります。
さて、その2ちゃんねるの「美容整形板」に、一昨日、6月7日17時から19時の間に、クリニック名を冠した各スレッドに下記のような書き込みがいっせいにコピペされました。


実に179のスレッドに2時間余かけて、書き込まれています。
被害にあったスレを記事の終わりに一覧にしました。私のクリニックも含まれています。
書き込みに張られているリンク先をクリックすると、


というサイトに飛び、そこには、まあ、なんと対応が早いと言うか、用意周到と言うか、
====
このページ本来のタイトルと本文は削除・書き換えました!その理由は、2chにこのページのURLが貼られてしまったからです。2chにこのURLを貼った犯人像はこのページを最後まで読んでいただければ見当がつくと思います。推察するに、2chに貼った輩の目的はクリニックに管理人を訴えさすことが狙いでは?
====

と記されています。要するに上記コピペが張られたから、本来ここにあったかもしれない「このスレのクリニック・医師が死亡事故を起こした記事」はもう見ることが出来ませんよ、ということです。

法的に考えたとき、179件の書き込みをした人は、明白な名誉毀損です。例えば、私のクリニックではこれまでに死亡事故は起きていませんから、悪意のある虚偽の書き込みです。
一方、リンク先のサイトは、自分もこの書き込み(リンク)によって迷惑を蒙っている被害者だ、と主張しています。何も書かれていませんから、当然名誉毀損には問われません。しかし、どこかに何か書かれているのではないかと探して、そのうちに「相談フォーム」にたどり着き、ついついメールを送ってしまう人もいるかもしれませんね。
リンク先のサイトは被害者であると主張していますが、それにしては対応が早すぎます。「179件の違法な名誉毀損の書き込みは、自身のサイトに誘導するための自作自演ではないか?」と穿って考える人もいるのではないでしょうか?(私は必ずしもそうとは思いませんが)

いずれにせよ、風評被害と言うのは、どこからどう始まるかわかりませんし、「このスレのクリニック・医師が死亡事故を起こした」と書かれた虚偽の情報を、たとえ2ちゃんねるとは言え、このまま放置するのもすっきりしません。私のクリニックの名前が冠されているスレッドの該当書き込みについては、とりあえず弁護士を介したIPアドレス保全請求を行っておきます。

そのあと、IPアドレス開示の仮処分およびプロバイダーへの発信元情報の開示請求もする予定です。ただし、それで発信者が特定されるかは微妙です。
もしも、発信者が特定されないような仕組みになっていたら、このリンク先のサイト主によるなりふり構わぬ自サイトへの誘導だろうと考える人はさらに増えるでしょうね(私は必ずしもそうとは思いませんが)。そう考える人が増えたら、ご愁傷様としか言いようがありません。結果はまた当ブログにて報告させていただきます。
(2017/06/10 記)

PS:いま気が付いたんですが、これだけ被害者多いと、刑事告訴すれば、警察動いてくれるかもしれませんね。明日弁護士さんに相談してみます。
刑事告訴してきました→その2
  
=====
<被害にあったスレ一覧>
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湘南美容外科 総合スレpart2[無断転載禁止]©2ch.net
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【HIN】相澤皮膚科Part11【Rシリーズ】 [無断転載禁止]©2ch.net
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和歌山国際厚生学院     [無断転載禁止]©2ch.net
【新橋駅前】AYC銀座形成外科8

 

 


ピコ秒レーザーはなぜ低出力でしみが取れるのか?(その2)


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は7月1日(土曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年2月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

前回(→こちら)の続きです。

専門の方が読むと噴飯ものの寝言のような内容の記事かもしれませんが、何とか私なりに納得しようと努めています。これでも高校の頃は数学の実力テストで学年で一人だけ満点とったり、妙に目立って将来を嘱望される人だったんだけどなー。たぶんその頃に「自分はやればできる」みたいな変な自己肯定感が身に付いちゃったんでしょう、分不相応な課題に取り組んで頭をひねる癖が58才になった今でも抜けません。

というか、誰かここをたまたま見た賢い人が「いやそうじゃないよ、こういうことだよ、深谷君。」と噛み砕いてどっかのブログで解説してくれると、本当に嬉しいんですが・・。本記事にリンクして、「こちらを読んで下さい」と誘導させていただきます。Info◎tclinic.jp(◎を@に変える)までご連絡くださいm(_ _)m。
 
レーザー光がメラニンと言うか、物質に当たったときに、エネルギーがどのように伝わるかというと、まず電子に伝わるようです。光は電磁波なので、非常に強い電場のもと、電子の回転やら励起やらを経て、ついには原子から飛び出します。


電子が飛び出してしまった原子核は、プラスの電荷を帯びることになります。プラスの電荷の粒子同士は反発しますから、分子が壊れる結果となります(クーロン爆発)。


 さて、今回私が、私なりに納得したのは、この電子の励起や原子核を離れて飛び出す率というのが、レーザー光のエネルギー(フルエンス)には比例しないようだ、という話です。
上図で電子が飛び出すのは、レーザー光の非常に強い電場によります。電場(E)に関しては、E=2.74×10^3×I^0.5(I:レーザー強度,W/cm2)という式があります。フルエンスの単位はJ/cm2で、ピークパワーの単位はW/cm2ですから、電子が飛び出す率というのは、フルエンスよりもピークパワーが関係しているのではないか、という発想です。
 
ちなみに、電子が飛び出すのは、「非線形光学現象」と呼ばれる現象の一つで、光のエネルギーが弱いうちは下式の光が作る電場(E)の一乗の項の数字が大きく二乗以下は無視できるんですが(線形)、光のエネルギーが強くなると、二乗の項の数字が大きくなってきて、これが関係して電子が飛び出すとかいろいろな現象が起こってくるようです。


熱は?というと、そもそも熱と言うのは、分子の振動みたいなものです。光のエネルギーが低くても強くても、電子に伝わったエネルギーの一部は、周辺に伝わります。熱の単位はまさにJ(ジュール)なので、フルエンスそのままです。電子の励起やクーロン爆発を起こすのに用いられなかったエネルギーは、この振動(熱)として未爆発のメラニンおよび周辺に伝わっていくでしょう。

電子の励起やクーロン爆発によるメラニン破壊が、レーザーパルスのピークパワーに関係し、発熱がフルエンスに関係するならば、ピコレーザーはナノレーザーよりも、フルエンスを小さくしてピークパワーを大きく取れますから、しみ取りに向いている、ということになります。すなわち、やけどを起こさずしみ取りができます。

私たち美容系の医師は、「Qスイッチレーザー(ナノ秒)は組織の熱緩和時間よりもパルス幅が短いから周辺組織に熱影響を与えない」と、小坊主が覚えた念仏のように時々口ずさみますが、ここにもう一つ以下を加えると、さらに賢そうに見えるんじゃないかと思います。

「しみ取りはレーザー光がメラニンに吸収されてクーロン爆発することによるが、それにはパルスのピークパワー値が関係する。一方組織の熱変性に関係するのは、フルエンスである。ピコレーザーは低フルエンスでもピークパワー値が高いので、やけどを最小限にしてしみ取りをすることができる」・・うーん、ちょっと長い。

熱の発生にはジュール(J、フルエンス)が関係するが、クーロン爆発によるメラニン破壊にはワット(W、ピークパワー)が関係する。うん、このほうがすっきりします。

後輩「ピコレーザーってなんで低いフルエンスでしみ取れるんでしょうかね?」
先輩「あーそれはね、熱の発生にはジュールすなわちフルエンスが関係するけど、クーロン爆発によるメラニン破壊には、ワットすなわちピークパワーが関係するからだよ。」
・・どうでしょう?格好いいかな?

ちなみに熱緩和理論の話は、パルス幅が数十ナノセカンド程度に短くなると、振動が周辺に伝わりにくくなるという話なので、ピコレーザーでクーロン爆発起きやすくなる話とは別物です。混乱しやすいので注意が必要です。
(2017/06/07 記)

追記
前回、「ナノレーザー(C6)のフルエンス2.0J/cm2が、ピコレーザー(Enlighten)の0.5 J/cm2に当たるようだ」と記しました。
この両者のピークパワー値を実測して同じくらいならば、話が合います。レーザーのピークパワーを測定する機器はあるようです(→こちら)。
しかし特殊な機器だから、レーザーの保守してくれる技術者さんは持ってないだろうな・・。開発部門でないと。
C6のパルス幅は6nsecで、Enlightenのパルス幅は750psec(0.75nsec)ですから、単純に割って2.0/6:0.5/0.75 =1:2です。1:1にはなりませんね。しかしパルス波形は真四角ってことは無いので、ひょっとしたら実測すると同じくらいなのかも。
感熱紙の反応も、ナノレーザー(C6)のフルエンス2.0J/cm2が、ピコレーザー(Enlighten)の0.5 J/cm2でしたが、この解釈はちょっとまだわかりません。
感熱紙のインクというのは、二種類の化学物質が熱によって溶けて混ざることで発色するようです。ということは、固体を破砕するphotodynamic effectを有するピコレーザーでは、少ない熱でも発色させてしまう可能性があります。ですから感熱紙の黒変=熱ではないのかもしれませんね。

疑問ほぼ解決しました!→こちら

ピコレーザー(エンライトン)購入しました


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は7月1日(土曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年2月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。
  
ピコレーザー(エンライトン)が届きました。ちょっとでかいけど、デザインや色はうちのクリニックに合います。嬉しい。


と喜んでいたら・・納入2日目にしてダウンしました。初期不良みたいです。
モニター表示に「low power」と出て、フリーズする症状で、メーカーによれば、発売直後の製品でときどき見られたようですが、最近は無くなっていたとのこと。回路の一部が温まっていないと認識して(実際には温まっている)しまうバグだそうです。最悪でも一時間くらい電源ONにしていれば、回復するらしいです。実際15分くらい電源付けたままにしていたら回復しました。
ところが、しばらくしたら、今度はモニターがまったく映らなくなってしまいました。再び電話で問い合わせて、電源ONOFF繰り返すなどいろいろしてみたのですが、回復しません。夕方、東京から代替え機運んできてもらうこととなりました。
こういう機械っていうのは、個体差があるものです。外れに当たっちゃったのかなあ・・嫌だなあ。
日本でこの機種は十数台クリニックに納入されているそうで、こういう症状って、他でもあるんですか?とお聞きしたところ、無いわけではないらしく、モニターが出なくなったのも、内部に差し込んであるメモリーカードがずれて外れた可能性が高いとのこと。最近の機械って、プログラムのバージョンアップに備えて、メモリーカードの中にソフト入れてるんだそうですね。
「あと、起こるとしたらどんな不具合でしょうか?」とお聞きしたら、「ハンドピースと本体をつなぐケーブルの不具合です。これは先生のほうでも簡単に交換できます」とのことでした。
対応早いのは有難いんだけど、十数台しか日本に入ってきてない割には、故障対応に慣れてる感じで、それはそれで何だか気が重くなります。「キュテラという会社は、バグをそのままにはしませんから、大丈夫です。」と言ってはくれるんだけど。
 
それは置いておいて、私がピコレーザーを買おうと思ったのは、実際にデモ機使ってみてその感触からです。
ピコレーザーは痛みが少ないです。うちは、顔中しみ取るお客さん多いので、痛み対策になるというのは朗報です。
ただ・・なぜ痛みが少ないのかが、どうも解りません。
 
また、フルエンス(エネルギー密度)についても、腑に落ちない点があります。施術の実感として、メドライトでは2.0J/cm2でなければホワイトニング(しみの黒色がレーザー当てた直後一時的に真っ白になる現象。確実にそのしみが焼けて除去できることを示す目安になる)が起きないようなしみが、エンライトンでは0.5J/cm2くらいで済むようなのです。エネルギー効率が約1/4です。
なぜだろう?・・
 
ピコレーザーとナノレーザーの違いを簡単に説明すると、ワンショットのパルスの波形の違いです。

ピコレーザーのほうが、同じフルエンス値でも、ナノレーザーよりも短時間でピーク値の高いレーザー光を出します。
パルスが短時間であればあるほど、周辺への熱の拡散は少なくなって、やけどを起こしにくくなります。・・もっとも、物質や細胞、それぞれに特有の「熱緩和時間」というものがあり、それより小さければ、理論的にはピコ秒でもナノ秒でも同じはずですが。
 
ちょっと思いついたことがあって実験してみました。パン屋さんのレシートを見ていてひらめきました。


レシートというのは、感熱紙です。熱が加わると、黒変する薬品が塗られています。
これに、ピコレーザーとナノレーザー当ててやれば、黒変の程度で、両者のエネルギーがどれだけ熱に変換されたのかを確認することができるのではないだろうか?
ピコレーザーのほうが周辺に熱変性起こしにくいことが視覚的に確認できるかもしれません。
熱変性起こしにくければ、やけどを起こしにくいから痛みが少ない理由になるし、熱という無駄なエネルギーに変換されなければ、その分エネルギーが効率的に色素破壊に使われているということだから、フルエンス値が低く済む理屈です。
それで、クリニックのレジから感熱紙を少し頂戴して、両レーザー当ててみました。

両レーザー、各フルエンスにつき、縦に4発づつ打ってあります。うーん・・。
メドライトのほうは解りやすいです。フルエンスが上がるにつれ、感熱紙の黒変も濃くなってきます。
エンライトンのほうは・・予想としては、メドライトよりも周辺への熱影響及ぼしにくいだろうから、黒変もメドライトより薄いんじゃないかと思ったんですが、そうなりません。
むしろ、フルエンスのいちばん小さな0.5J/cm2で一番濃く、メドライトの0.5J/cm2よりも濃いです。ということは、熱影響はエンライトンのほうがメドライトよりも大きい??
マイクロスコープで、感熱紙を拡大してみました。


 どうも、メドライト(C6)の2.0J/cm2の発熱は、エンライトン0.5J/cm2と同じくらいのようです。エンライトンのそれ以上のフルエンスの結果が薄く見えたのは、感熱紙の黒変自体を、エンライトンが分解してしまったように見えます。
そこで、0.5J/cm2のフルエンスで、一か所に繰り返し照射を行ってみました。

予想通りで、メドライト(C6)の場合は3回繰り返したところがピークでそれ以降は、いったん黒変した感熱紙を白くする方向へと転じます。エンライトンの場合は、一回目がピークでそのあとは、黒変した感熱紙を脱色していきます。
次に、黒い紙を用意して、ここに両レーザーを、フルエンスを変えて打ってみました。

ここでも、やはりメドライトの2.0J/cm2が、エンライトンの0.5J/cm2に相当します。色素を破壊する力も、発熱量も、同様にメドライトの2.0J/cm2が、エンライトンの0.5J/cm2に相当するようです。
 
そうすると、「メドライトの2.0J/cm2が、エンライトンの0.5J/cm2に相当する」という臨床的体感とは合致しますが、痛みがエンライトンでは少ないことの説明がつきません。
思いつくのは、エンライトンのほうが、パルス幅が1/100くらいに短いですから、同じ熱量のやけどでも、瞬間的にチカッとしたやけどのほうが、じわーっと長めにしたやけどよりも痛みが少ないという可能性です。・・うん、痛みに関してはそういうことかなあ。
ただ、同じ効果を出すのに、フルエンスが小さくて済む理由が、どうもわかりません・・。光力学的効果が加わるために、低フルエンスでも効果的に色素が壊れるってことなんでしょうか(←たぶん違います。追記2参照) ちょっと私の頭では、このあたりまでが限界です。

低いフルエンスでしみが取れるということは、それによって発生する活性酸素も少ないはずです。それなら炎症後の色素沈着も弱くなって良さそうです。
しかし、以前デモ機持ってきてもらったときに、数名を、半顔をエンライトンで、半顔をメドライトでしみ取りしてみたんですが、戻りじみ(炎症後の色素沈着)に左右差は無さそうでした。
ただし、このときは、フルエンスに関してそれほど意識してなかったので、メドライトを2.0J/cm2、エンライトンを0.5J/cm2に揃えて比較したら、よいデータになるのかもしれませんが。
 
とにかく、ピコレーザーでしみを取ると、多少痛みが少なく済むメリットはあるみたいです。いまのところはそれだけ。患者にとっては何よりかもですけどね。
(2017/06/02 記)

追記:
タトゥー除去の時に、ピコレーザーの方が治療成績が良い理由として、ピコレーザーが衝撃波を発生することがあります(photodymanic effect)。
しかし、これは、タトゥーに用いられている色素が、無機物の硬い塊であってこそです。腎結石破砕のときにも、衝撃波が用いられますが、結石が固いからです。柔らかいものも破砕するなら、人体全体が壊れてしまうでしょう。
そこから考えると、しみやADMなど、メラニン色素が原因の場合は、衝撃波は関係なさそうです。

疑問ほぼ解決しました!→こちら