国産のアートメイク色素作りました


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は6月1日(木曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年1月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

先回の記事「国産のアートメイク色素つくります・その8」は→こちら
ついに発売しましたので、これまでの表題の「作ります」を「作りました」に変えました。
販売サイトは→こちら

普及キャンペーンのために、バナー作りました。色素ご購入いただいた先生方のHPなどに貼付をお願いしています。


 なぜ「安全性が高い」のかのおさらいです。

1) 一回分の使いきり
海外の色素は、小さなボトルに入っていますが、数十人分あるので、開封後は使い回しです。私の製作した色素は、一人分づつ小分けしてあります。

2) 滅菌済み・防腐剤無添加
海外の色素は、開封後使い回しのために、雑菌などに汚染されたりする可能性があります。それを防ぐために、アレルギーを引き起こす可能性のある防腐剤を添加しなければなりません。しかもどんな防腐剤が用いられているかも不明です。
私の色素は、一人分づつ小分けして、パックに封じて滅菌することで、防腐剤を添加する必要がなくなりました。

3) 全成分開示
海外の色素には、成分開示がまったくなされていない製品が多いです。アメリカ製の色素の代理店で「FDAが認可しています」と謳っているところがありますが、実は「FDAが化粧品材料として認可した成分を用いている」というだけのことであって、皮膚内に注入するアートメイク色素として認可を受けたわけではありません。FDAは基本方針として、いかなるアートメイク色素も認可はしません。アメリカではアートメイクは完全に自己責任だからです。アメリカではメーカーには成分開示義務がないため、問い合わせても、ただただ「FDAが(化粧品材料として)認可した成分を用いています」と繰り返すだけです。これでは、アレルギーのある人は安心してアートメイクが出来ませんし、そもそも何で出来ているのか不明なものを、医師が患者に用いるべきではありません。


自分にも、製作した色素(濃茶と茶)で眉アートメイクしてみました。私は現在58才ですが、加齢によって垂れ下がっていた眉を、アートメイクによって外側に上げることで、若々しくなったと思います。製作した色素の具合を確認するための、ただの実験だったんんですが、気分の良いものですね。中高年の男性にもおすすめですよ。
 (2017/05/30 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

第105回美容外科学会(JSAS)スレッドリフトシンポジウム報告(その2)


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は6月1日(木曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年1月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

その1は→こちら。(追記していたんですが、長くなってきたので、続編記事としました)

1)田中先生

居原田先生のFB上で田中先生とちょっとだけ議論しました。
田中先生が溶けない糸を使いたくない理由は、実は「純粋に気持ちの問題」であって、「私は自分の鼻にヒアルロン酸注入はしますが、シリコンプロテーゼは決して入れたくない」のと、同じだそうです。
それならそう語ってくれれば話は終わるのに・・。
論理的に考えると、鼻へのヒアルロン酸注射は、シリコンプロテーゼよりも必ずしもリスクが低いとは言えません。血管塞栓による壊死や失明といった重篤な合併症があるからです。
しかし、だからといって、「ヒアルロン酸注射はするが、プロテーゼは入れない」というスタンスが間違っているとはいえません。それは感性・好みの問題であるからです。
感性に基づくそのスタンスを、「溶けない糸は異物であって感染リスクが続くから」と、論理で解説されると、「溶ける糸を2~3年毎に繰り返すのだって、同じ異物だから、感染リスクは同じではないですか?」と反論せざるを得ません。私は私で、溶けない糸の施術を受ける患者さんたちを不安に陥らせないようにする責務がありますから。
しかし、一般論として、女性がこのように感性で判断したことを、論理で解説しようとして、男性が反論してやりこめると、女性は傷つきます。感性っていうのは、人格に関わっている部分があるので、男性の想像以上に傷が深いこともあります。だから、私生活においては、こういう場合には私は決して反論しないのですが・・。
田中先生が理3→東大医学部卒という点も話をややこしくします。田中先生が、実は女性的な感性でもって発言した内容であっても、何か深い論理的な裏付けがあるのではないか?と多くの人は考えてしまうでしょう。この点は、ぜひ再認識して、感性による場合は「これは私の感性によります」とはっきり明記して情報発信するようお願いしたいものです。
 
2)居原田先生
 
さて、田中先生との議論のあと、居原田先生から、私がやっている伸縮系の糸であるアプトススプリングについて質問がありました。居原田先生は、同様のコイル形状のPDOでできた韓国製の糸を使ってみたが、引っ掛かりが悪かったので、私のアプトススプリングが本当に引っかかるのか、懐疑的なようでした。
スプリング形状の糸は、個々のリングの間で組織を挟んで引っかかるので、コイル状にしたときにばね弾性(伸ばした後縮む力)が出る素材でなければなりません。PDOでスプリング作ったことは無いのですが、弾性出にくいのかもしれません。
要は引っ張って伸ばした後で、ちゃんと縮んでくれるのか、です。素材によっては一回引っ張っただけで伸びっぱなしになります。そういう素材はコイルには向きません。
 
ちょうど今日いらっしゃったお客さんが、アプトススプリングのよい適応だったので、御了解を得て供覧します。4か月前に他院にて切るリフト手術を受けています。口横など中顔面が物足りないとのことでした。

術前
(クリックして拡大すると見やすいです)
デザインは下記のようです。こめかみから口囲にかけての3本がアプトススプリングです。耳下にかけてのは通常のアプトス。左右合計6本のスプリングと2本のコグ付き糸です。

術直後

上がってるでしょ?上がってるっていうことは、コグが無くても引っかかっているということです。伸縮系ですから、口を動かしても戻りはありません。

3)境先生
 
境先生の感染率の高さがどうも気になって、境先生のFBで、術野の消毒に何を使っているのか聞いてみました。
境先生、洗顔・洗髪だけで消毒はしないそうです。ああ、そういうことか。それが原因だと思います。
形成外科の先生で、術野消毒しない人というのは、最近多いみたいです。小さな切り傷なんかは、昔は消毒していましたが、最近は水道水で良く洗って異物を除くだけでいい、ということになっています。消毒は創傷治癒自体には不必要だし、かぶれるリスクもあります。
形成外科で切開して縫合するような手術の場合はその考え方でもいいんですが、糸の場合は、小さな傷口から糸を押し込めるわけです。皮膚表面の常在菌が糸とともに送られて後日化膿するリスクは高いです。
なぜ私がそう考えるかというと、一般皮膚科に従事していた頃の、私の経験からです。免疫不全の患者に、筋肉注射をするときなどは、アルコール綿では皮表の滅菌が不完全で、注射針で皮表の菌を押し込んでしまい、膿瘍を形成することがありました。比較的強い消毒剤である(消毒剤の強さ・抗菌スペクトルはいろいろあります)イソジン液10%で消毒してから注射するようにしたら、そういうことはなくなりました。
かなり自信があります。境先生がイソジンで消毒して施術をすれば、感染率は私と同じくらいまで低下するはずです。もっとも、それでも感染はまったくゼロにはならないだろうから、感染時の糸の抜去のしにくさを考えると、私はスプリングスレッドを使う気にはなりませんが。
(2017/05/19 記)

追記
田中先生の経験によれば、溶ける糸(3Dリフト、コグリフト)と、スプリングスレッド(以前施術していたが現在は施術していないとのこと)とでは、感染を起こす率がスプリングスレッドのほうが圧倒的に高い、とのことです。術野を同じように消毒したうえでの比較なので、消毒の関係ではないということになりますね・・。
境先生、田中先生とも、スプリングスレッドは細かい埃などを吸着し易く(静電気?)、そのため雑菌なども拾って糸周辺で微小なコロニーを作り、それが免疫力低下したときなどに化膿するのではないかと考えていらっしゃるようです。
もしそうなら、糸自体をいったん消毒液に浸けてから挿入するというのはどうでしょうか?静電気も逃げるし、付着した細菌も滅菌されるでしょう。
田中先生によれば、感染したスプリングスレッド糸は、私の想像とは異なり、するっと抜けることが多いようです。ただ、私自身は、スプリングスレッドを他院で施術を受けた後に感染し、抜こうとして途中で切れて、その末梢が瘤のように膿瘍形成した方を診たことがあるので、すんなり抜けないケースもあると認識しています。

追々記
なんで、こんなに食い下がって追及しているかというと、糸のリフトのマーケット全体の健全な発展のためです。
そのためには、問題点や疑問点は徹底的に議論して洗い出す必要があるし、その過程はオープンなほうがよい。信用が増します。
私は58才、あと10年くらいでしょうか?自分で糸の施術が出来るのも。
次の学会発表は、また10年後の予定です・・まだ、私が施術していたらの話ですが。
それまでは、またクリニックにこもって精進したいと思います。

追々々記
大分整理されてきたのでまとめておきます。スプリングスレッドというのは、感染しても多くの場合はスルッと抜けるが、原因不明の感染率の高さが問題のようです。田中先生は、溶ける糸とスプリングスレッドとの経験があって、この感染率の高さはスプリングスレッドが溶けない糸であるからだろうと考えていました。
田中先生の溶けない糸に対する拒否感は、この経験に由来するようです。元々スプリングスレッドを施術なさっていたなら、当初は抵抗なかったということです。ここに女性的な感性による判断が加わったのでしょう。
今回の私からの報告と疑問・質問によって、感染率の高さが溶けない糸に普遍的なものではないと気付かれたようです。
スプリングスレッドの表面素材はシリコンですが、シリコンと言うのは、白内障の人工レンズに使われるくらいですから、決して感染しやすい素材ではないです。
いちばん有り得るのは、成型が甘くて、ミクロで見ると表面に凹みが多い可能性です。そこに細菌が潜んだ状態で挿入されれば、免疫力低下など何かの拍子に化膿が始まってもおかしくないです。撚糸である絹糸のほうが表面ツルツルのモノフィラメント糸よりも感染生じやすいのと同じです。
どうも現在溶けない糸として市場に流通しているのは、スプリングスレッドだけみたいですね。学会の展示ブースでも見なかったし。だから田中先生、誤解したのでしょう。
スプリングスレッドの感染率の高さが、溶けない糸全般の話と誤解されて広まったら、私としてはいいとばっちりです。嫌だなあ・・。
境先生や田中先生が、私が使っているような自作糸で施術すればいいのにと思うんだけど、お二人に限らず、なぜか皆さん業者さんが持ってくる糸しか使いません。自作糸のほうがコスト安くなって患者さんに還元も出来るし、悪いこと何もないと思うんだけど、なぜだろう??
皆さん、施術は好きだけど、仕込みは面倒ってことなんだろうか?あるいは同業者である私にノウハウ尋ねるのがプライドが邪魔して嫌なんだろうか?昔からすごく不思議です・・。

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

第105回美容外科学会(JSAS)スレッドリフトシンポジウム報告(その1)


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は6月1日(木曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年1月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

以前書きましたようにスレッドリフトのシンポジストを依頼されましたので、10年ぶりくらいに学会に行ってきました。
せっかくなので、前から泊まってみたいと思っていたアマン東京で一泊しました。部屋から皇居と宮内庁が見えて綺麗。ちょっと畏れ多いような気もするけど・・。


私の発表内容は、先回記したように(→こちら)、「溶けない糸には長期効果(たるみ予防効果)がある」という臨床的直観の検証です。グラフが多くて解りにくいかもしれないと思ったので、ハンドアウト作って配布しました。Pdfをupしておきます(→こちら)。

はもり皮フ科の吉田先生と、あきこクリニックの田中先生が溶ける糸を、六本木境クリニックの境先生が溶けない糸(スプリングスレッド)を報告して、四番目が私、その次に溶ける糸と溶けない糸両方施術すると言う平井イーストクリニックの平井先生、という発表順です。
吉田先生と田中先生は、溶けない糸を入れると言うことに対して抵抗があるようで、これはこれで解らなくもないです。溶けない糸の最大のメリット=長期効果(たるみ予防効果)というのは直観的なもので、これまでエビデンスが無かったからです。今回私が頑張ってエビデンスを数字で出してみたので、考え直していただけると良いのですが。
境先生のスプリングスレッドは、あまり彼のHPに術前後の写真が無かったので、今回before/afterの写真を複数見せていただいて、実態がよくわかりました。境先生は、あまりほかの溶けない糸の施術経験が無いのだと思います。だからあの程度の効果で感動してブログで自画自賛なさっているのでしょう。平井先生も同様で「口横のような動かす場所には伸縮性のあるスプリングスレッドしかないと思います」とおっしゃってましたが、そんなことはない、伸縮系の糸なんて、昔からいろいろあります(→こちら)。
境先生について良い点を挙げるとすれば、溶けない糸の効果に気付いておられる点です。その点は好感が持てます。
ディスカッションで盛り上がったのは、感染症についてでした。口火を切ったのは田中先生で、ご自身の講演の中で「溶けない糸というのは、長期間経過したあとでも、感染症を起こすことがあります。ですから私は溶けない糸は入れません」とおっしゃいました。次いで境先生が、やはり講演の中で、ご自身の施術3百余例中の感染発症率が、最初は5%くらいで最近は3%くらいであること、感染を起こさないように、細心の注意を払って施術していること、などを話されました。
私は今回、カルテ100例について集計してみたのですが、感染を起こした例は3件で、100例の総施術回数は289回、糸総本数は1689本ですから、手術件数あたり1.0%、糸1本あたり0.17%です(→こちら)。境先生の感染率は高いです。境先生も気にしておられるようで、糸の素材の関係かもしれないとおっしゃっていましたが、ちょっと理由がわかりません。ひょっとしたら私と境先生の差は、誤差範囲なのかもしれませんが。
それで、ディスカッションのときに、私から田中先生に「溶けない糸は感染症が問題とおっしゃるけれど、溶ける糸で感染起こしたら、抜こうとしても途中で千切れてしまうから、かえって厄介ではないですか?」と質問しました。田中先生も、そこは認めて「過去に一例だけ感染起こした例を経験しています。対処は難しかったです」とのことでした。座長のドクタースパクリニックの鈴木先生も「私も他院での施術例ではありますが、溶ける糸の感染例を診たことがあります。千切れて中に糸が残ってしまうので、奥のほうでの感染は、結局糸が完全に溶け切るまで遷延して、漏孔から浸出液が出続けました」とコメントされました。
 
要は、糸と言うのは、溶ける糸だろうが溶けない糸だろうが異物なのですから、感染は起き得ます。重要なのは、感染が起きたときに、しっかりと抜くことが出来る糸なのかどうかです。糸さえ抜去できれば炎症はおさまります。
 
私が使っている糸は、少なくともこれまでは、感染起こした際には綺麗に抜去できました。溶ける糸は、溶け始めれば途中で切れてしまって、その先が残ります。また、スプリングスレッドは複合素材です。柔らかくて千切れ易いシリコンをポリエチレンで芯を作って強度を出しています。だから、抜こうとすれば、シリコンとポリエステルが分離してシリコンが残ってしまうはずです。
ですから、「感染リスクを考えて溶ける糸での施術を勧めています」という田中先生の論は、的を外していると思います。
田中先生は、ご自身でも、溶ける糸を2,3年に一回入れ直しているとのことですが、それなら異物は継続して存在し続けるわけですから、溶けない糸を一回施術するのと感染リスクは変わりません。
 
シンポジウムが終わったあとで、境先生には、私から手を差し出して握手しました。以前境先生がブログで「名古屋の超有名クリニックでの施術に物足りなかったお客さんが境クリニックでスプリングスレッドを受けて大満足」みたいな記事を書いたので、私が反論したことがありました(→こちら)。これを機会に和解しようと考えたからです。
しかし、境先生、気になることをおっしゃいました。
「あの記事は、僕知らなかったんですよ。ゴーストライターが書いたんです。」
ちょっと待て、ゴーストライターが書いたとしても、自分の名前のブログだから責任は自分だろ?少なくとも内容チェックは事前にしないのか? 
そのときはびっくりしただけだったですが、後で新幹線の中で無性に腹が立ってきました。
 
このブログを読んでいる同業者の中には、学会と言う内輪の場(本当は内輪ではありません。その証拠に私の患者も一人、非医師の会費払って聞きに来ていました)で情報交換している内容を、私がこのように赤裸々に書いてしまうことに、不快感を覚える人もいるでしょう。しかし、同業者の快感・不快感なんて、私の価値観からは糞食らえです。大切なのは真実です。
 
境先生個人には、上にも記したように、溶けない糸の効果に気付いておられるという意味で、良い印象をも持っています。悪いのは、ゴーストライターです。スプリングスレッドが売れると得をする誰かじゃないでしょうか?
医者というのは、結構、純朴なものです。境先生含め、皆、学会で真面目に議論します。美容外科の業界をうさんくさくさせるのは、だいたい、医者を利用してビジネスしようとする輩です。そういう連中を排除して、業界の自浄機能を高めるのは非常に重要なことだと思っています。そういう意味でもここははっきりと記したほうが良いでしょう。
医師の皆さん、ブログは自分で、自身の言葉で書きましょう。

今回は、研修医1年目の娘と二人で学会参加しました。娘はいま24才ですが、30才までには、なんとか説得して、溶けない糸を入れておいてやりたいと思っています。私自身(58 才)にも、溶けない糸は10本くらい入っています。
平井先生は、ディスカッションで、「私も研修医の娘がいますが、溶けない糸(スプリングスレッド)は入れたくありません。」と言っていました。自分自身や娘に入れられないような物を、お客さんには入れるっていう姿勢は、私は賛成できません。
 

(2017/05/18 記)

追記
今回企業展示見て思いましたが、糸は全部、金型で成型するモールドタイプに変わっていますね。私が使っている切込みをいれて加工するタイプは、バナナピーリング(棘から縦に裂ける)するから、モールドタイプに進化したみたいに謳われているようですが、違います。金型成型のほうが、圧倒的にコストが安いからです。切り込み加工って、職人仕事で大変だから。
引っ掛かりは、切り込みの糸のほうが強いです。釣り針を想像してみると判りますが、モールドタイプの棘じゃあ、魚は釣り上げられないでしょう。
仮にモールドタイプの糸が、同じくらい引っ掛かりが強ければ、やはり同じ力で引っ張った時には、糸は破損する筈です。
また、韓国の小さなメーカーがたくさん出展しており、どうしてこんなニッチなマーケットで、こんな商品作って売ろうとするのかな?と不思議だったんですが、あるブースで話していて、謎が解けました。
小さな会社に見えますが、全部韓国の財閥がバックにあるんですね。日本の中小企業には出来ない芸当(ベンチャービジネス)が出来る筈だわ・・。
韓国って、人口少ないし、マーケットとしては小さいです。日本は韓国よりも大きなマーケットです。
なおかつ、ジャパンブランドってのは、韓国でも中国でも、根強いです。日本の医者が使っている、ということで韓国で売れるし、さらには中国という大きな市場にも売り込めるでしょう。
要するに日本の医者は、韓国製の出来合いの糸使って施術した時点で、利用されているんですよ。
私みたいに、日本国内の職人さんや、小さな会社にお願いして、オリジナルの針糸作って施術している医者って、聞いたことないです。
もうちょっと気骨というか、張り合い甲斐のある面白い先生、出てこないかなあ・・。

追々記
麗ビューティー皮フ科クリニックの居原田先生が、「女医であり患者目線で自分たちの顔に糸を入れている吉田先生と田中先生のほうが説得力があって軍配が上がる」みたいなこと書いてます(→こちら)が、居原田先生、私が日本で一番最初に自分自身の顔に糸入れた医者だってこと御存知ないのかなあ?2003年か4年ころに、シンガポールのDr Woffles Wuがデモに来た時に入れてもらいました。自分がお客さんにやっている施術がどんなものなのか体感してみたかったので。
昨年のハロウィンパーティーで、居原田先生と同席した私の友達の名古屋の女医さんたち(→こちら、3人目の亀井先生を除く4人)全員、溶けない糸仲間です。私も含めて全員50才台。若いでしょ?
これが現実ですよ、糸の長期効果。溶ける糸入れようが、溶けない糸入れようが、とにかく50才台になって若く見えてる女医さんの勝ち。
居原田先生の記事読むと、溶けない糸=スプリングスレッド??みたいな印象お持ちのように読めるんですが、確かに企業展示ブースでも溶けない糸見なかったし、ひょっとしてスプリングスレッド以外の溶けない糸って、居原田先生含め最近の先生方はご存じない??
10年間学会ご無沙汰してるうちに、世代替わったからなあ・・。

その2(→こちら
)に続きます。

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

国産のアートメイク色素作ります・その8


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は6月1日(木曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年1月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

その7(→こちら)の続きです。

PMDAの審査業務部にFAXして問い合わせました。
翌日すぐに電話にてお返事がありました。
まず、重要なポイントは、すべての医療機器というのは、政令(薬機法施行令別表第一(第一条関係))で、一般的名称が挙げられているという点です。すなわち、この表に挙がっていないものは、そもそも医療機器に該当しません。
その表の中に「アートメイク用色素」があるかというと、ありません。すなわち、現時点において、アートメイク用色素は医療機器に当たりません。近畿厚生局の見解と同じ「雑品」です。
PRP(濃厚血小板血漿)を作製するキットは医療機器ですが、その作製過程で必要な遠心分離機は医療機器ではないので、理化学用品として何の規制もなく一般に販売されています。このように医療行為を行うにあたって必要な機器がすべて医療機器というわけではありません。
ただし、政令で定められるものであるので、時代によって医療機器の範疇が変化することはあります。カラーコンタクトレンズが例として挙げられます。カラーコンタクトレンズには度が入っていませんから、当初医療機器には当たりませんでした。しかし、眼科的観点からは、装着による合併症は度の入っているコンタクトレンズとリスクは同じです。そのため、現在ではカラーコンタクトレンズは医療機器とされています。
アートメイク用色素も同じことで、現時点では政令で定める医療機器ではないので取り締まる法律もなく、雑品として販売可能であるが、将来臨床的に問題が生じてきた場合には、政令の改正によって医療機器とされる可能性はある、ということのようです。

ということになると、私の立場からは、色素を針の会社とコラボしてセットで医療機器としての認証を目指すのではなく、色素単体として雑品として医師仲間が購入できるような道筋を開くのが良さそうです。
万が一、私の考案したレシピの色素で臨床的な問題が生じた場合には、アートメイク用の色素は医療機器とするべきだ、となって、政令のリストに加えられるかもしれませんが、それまでは合法ですし、私が厳しい目を光らせている限りはそのようなことは起きないでしょう。

現在試作中の「色素」。うちでのアートメイク施術はすでにこの色素に切り替えています。1ccのシリンジに詰めて滅菌し、毎回使い切りとして供給する予定です。これまでの海外製アートメイク色素は、ボトルを開けたあと使い回しなので、ボトルが汚染し、色素自体が不潔となるリスクがありました。


追記
上記まで考え方を整理したうえで、さらにPMDAに質問してみました。
=====
PMDA 審査業務部 〇〇様
今朝ほどはお電話にてご対応いただきありがとうございました。
確認したいことがありますので、FAXいたします。よろしくお願いいたします。
私が現在使用している自作のアートメイク用色素を、「アートメイク用色素」と表示して新たに販売しようとすると、薬機法施行令に新たに「アートメイク用色素」を追加しなければ不可なので、クラスに関わらずきわめてハードルが高い、という理解でよろしいでしょうか?
一応後学のためにお伺いしておきたいのですが、その場合は政令に追加するということであるので、厚労省やPMDAではなく、国会議員のかたにお願いしていくということになるのでしょうか?
以上よろしくお願いいたします。お電話お待ちしております。
鶴舞公園クリニック 深谷元継
=====
しばらくして電話を頂きました。本来はこのような質問に対する回答は審査業務部の仕事ではないそうです。誠に感謝しておりますm(_ _)m。
まず、「医療行為に用いる機器がすべて薬機法でいう医療機器というわけではない」という再度のご指摘がありました。
具体的な例として、歯科で用いる歯垢染色剤を挙げていただきました。赤く染めるやつです。あれは医薬品でも医療機器でも何でもありません。しかし「歯垢染色剤」と表示して歯科向けに堂々と売られています。
医療機器であるためには「該当性」がまず検討されるべきだそうです。今回ご相談したPMDAの方の見解としては、アートメイク色素は医療機器に該当しない、該当しないものを医療行為用として表示して販売しても薬機法違反にはならない、とのことでした。
 
ちなみに、医療機器が政令で定められているのならば、「医療行為」の範囲はどのように定められるのか?とお聞きしたところ、どうも判例(裁判)で積み重ねられていくようです。
平成13年に「アートメイクは医療行為である」と厚労省通達があったわけですが、これは警察庁からの疑義照会によります。その背景には、刑事裁判があったということなのでしょう。
 
とにかく、医療行為に用いることを標榜したからといって、薬機法違反とは限りません。薬機法68条は「未承認の医療機器・医薬品の広告禁止」ですが、そもそも医療機器や医薬品になり得ない(該当性が無い)ものについて、いくら医療行為に用いる旨を表示しようが、違法ではない、ということでした。整形外科で用いられる装具なども、同様の理屈で医療機器ではありません。
本当に目から鱗でした。なるほど。
 
先日問い合わせした愛知県の方とは見解がずれますが、私がアートメイク色素が薬機法の医療機器への該当性あり、ということを大前提としての問い合わせであったので、PMDAの方から「該当性ない」と言われれば、話は違ってきます。
 
それならば、「国産のアートメイク色素作ります」という表題を復活しても良さそうです。
ということで、表題復活しました。
近い将来、株式会社深谷の新商品として、医療機関向けに「アートメイク用色素」と明記した国産色素を提供できると思います。
いろんなところに問い合わせして、頭が混乱もしましたが、後から違法だと誰かに言われたら嫌ですからね。まあ結果オーライで良かった良かった。
 (2017/05/01 記)