アートメイク色素について・その7

 
鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は5月1日(月曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の12月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。
 
先回まで「国産のアートメイク色素作ります」という表題でした(その6は→こちら)。決意表明・有言実行の気持ちを込めてだったのですが、今回から「アートメイク色素について」に変えます。
心が折れたわけではないです。理由は記事読んでいけば解ります。
 
先回の記事書いたあとで、韓国に視察に行った池田先生から「韓国には自国製のアートメイク色素があるようだ」という話を聞きました。韓国は日本と同じく(私の知る限り唯一)、アートメイクを医療行為と位置付けて医師以外による施術を認めていない国です。
それならば、韓国製のアートメイク色素というのは、医薬品あるいは医療器具として扱われているかもしれません。韓国FDA(日本の厚労省にあたります)は、成分開示など義務つけているのだろうか?もしそうであれば、韓国製のアートメイク色素は、欧米製の成分開示が義務付けられていない色素よりは、信用できるのかもしれません。
ネットで検索すると、韓国でアートメイク用色素を製造している会社が4つほど見つかりました。その中の1社に「1本購入するので成分などの詳細がわかる資料があったら送ってもらえないか」とお願いしたら、快くデータを送ってくれました。


全成分のみならず、それぞれの%まで開示された立派なSDS(安全データシート)です。以前、アメリカ製の色素について、メーカーに同様の問い合わせをしたことがあるのですが「FDAが(化粧品材料として)認可した成分を使っている」という以上の開示はしてもらえませんでした。それに比べると雲泥の差です。
池田先生も私とは別の韓国の会社の色素について、データを問い合わせたのですが、同様に全成分開示してもらえました。
なので、現時点では、欧米製の色素よりも、韓国製の色素のほうが信頼できるようです。
 
話は続きます。韓国製の色素の信頼性が高いから、国産の色素の開発をあきらめて表題を変えたわけでは決して無いです。早合点しないでくださいね。
 
韓国製の色素を1本個人輸入してみたのですが、例によって空港郵便局で引っかかりました。例によってと言うのは、海外から医薬品や医療器具を個人輸入する場合、ときどき空港で差し止められて、それが合法な輸入であることの証明書(薬監証明といいます)の提出を求められることがあります。名古屋の場合、近畿厚生局が管轄なので、理由書などを書いて薬監証明を申請しました。
二~三日して、厚生局から電話がかかってきました。
「今回申請されたアートメイク用色素ですが、厚生局としては、色素単体で針とセットでなければ、医薬品にも医療器具にも該当しないという見解ですので、薬監証明は不要です」
「え?そうなんですか・・以前にもアメリカから色素を輸入したとき、空港から薬監証明を取るようにとの葉書が来て、申請させていただいたことがあるのですが・・」
「確かに、申請された場合に、それに応じて薬監証明を発行することもあるのですが、本来は色素単体は薬監証明不要です。色素には薬効がないので医薬品ではありませんし、針とセットでなければ医療行為が出来ませんから、医療器具にも該当しません。」
「私にとっては、手間がはぶけて結構なことではあるのですが、参考までに教えていただきたいのですが、そうするとアートメイク用色素というのは、輸入品目の分類でいうと何に当たるのでしょうか?」
「雑品です。『医療器具の部品』ですね」
はー、なるほど。
 
そこで考えました。色素が、それ単独では「雑品」扱いであるなら、国内で色素を調合して販売したとしても、「アートメイク用」と表示や広告をしなければ、薬機法違反にならないのではないか。
これが「国産のアートメイク色素作ります」という決意表明を込めた表題を少し変更した理由です。
 
ちょっと話がそれますが、美容外科でしわ取りに用いるヒアルロン酸のフィラー(注射)があります。ジュビダームやレスチレインという商品は日本での認可が取れていますが、あれは医薬品ではなくて医療器具に分類されます。同業の先生方、ご存知でした?
なぜかというと、ヒアルロン酸そのものはボリュームを出すだけで薬効(薬理作用)を標榜していないからです。
アートメイク色素が医薬品ではないのは、たぶんこれと同じ理屈です。医薬品だとすれば、何らかの症状が改善するなどの薬理効果の確認(治験といいます)が必要ですが、アートメイクって色が入るか入らないかだけだから、治験の組み立てようがないです。
ゲル状の液体なので、「医療器具」と言われると抵抗がありますが、よく考えると確かに医薬品よりは医療器具に近いです。

念には念を入れて、愛知県の医薬安全課にメールして、私の考えが正しいか、確認してみました。
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愛知県健康福祉部保健医療局医薬安全課 御中
はじめまして、当方、名古屋市中区の開業医です。
アートメイク用色素についてご相談です。
ご存知の通り、アートメイクは、平成13.年11月8日医政医発第105の通達により、医療行為と明示されました。
そこで当院でも、アートメイクの施術を始めたのですが、本邦ではアートメイク用の針や色素は製造されておらず、海外からの個人輸入に頼っている状況です。
しかしながら、欧米ではアートメイクは医療行為ではなく、針や色素についての規制も甘いです。とくに色素については、成分すら開示されておらず、施術しながら、いったい何を患者の皮膚に入れているのかさえ判りません。
これでは医療行為の名に恥じます。
そこで、アートメイク用色素を自作しようと考えました。
私は皮膚科専門医ですので、化粧品などのアレルギーや毒性については詳しいです。考えられる限りもっとも安全性が高いと思われる成分のみに絞り込み、自身や身内に実際に施術して、これなら大丈夫だろうという試作品ができました。
ここからが、ご質問です。
1 このような自作した色素で、患者にアートメイクを施術することに、法的な問題はあるか?
2 この色素の製造を、外部に委託することに、法的問題はあるか?(外部とは具体的には、化粧品OEMを主に行う、化粧品製造業の免許を持った会社です。ただし、色素は化粧品としてではなく、いかなる効能をもパッケージに明記しない「雑品」として製造します。)
3 外部に委託して製造した色素を、複数名の有志の医師たちに転売することに、法的問題はあるか?(転売する理由は、製造会社としては、例えば1000個以上の多量でないと利益が見込めず、引き受けられないという事情によります。私個人で消費するには多すぎるので、有志の医師たちと共同購入したいのですが、商取引の形としては、いったん私個人が全量買い取り、これを有志の医師たちに頒布することになるので、転売です。)
補足
1 色素の全成分は、水酸化鉄(FeO(OH))、酸化第二鉄(Fe2O3)、カーボンブラック、ポリエチレングリコール(PEG-1500)、1,3ブチレングリコール、です。これらの配合比を変えて、茶~黒の様々な色調を出します。医薬品に該当する成分はありません。
2 パッケージは添付写真のようになります。表示は「色素(茶)」などとし、「アートメイク用」など、用途を示す表示はしません。薬機法第68条(未承認医薬品医療機器の広告の禁止)への抵触を危惧するからです。
現在、海外のアートメイク用色素を個人輸入して施術していますが、アートメイク用色素は輸入に当たって薬監証明を必要としません。近畿厚生局によれば、アートメイク色素というのは、薬効がないので医薬品には当たらないし、単独でアートメイクの施術が可能となるものではない(施術には針が必要)ので、輸入品目としては「医療器械の部品」になるそうです。アートメイク色素が、海外からの個人輸入にあたって、「アートメイク色素」の表示があるにもかかわらず、規制がないということは、国内で製造する今回の色素に「アートメイク用」と表示しても、「医療器械の部品」=雑品であって、薬機法の対象外である可能性はあります。しかし、私としては、今回は万全を期して、「アートメイク用」といった表示は避けようと考えておりす。
平成29年4月11日
名古屋市中区千代田5-20-6
鶴舞公園クリニック
院長 深谷元継
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2週間ほどで回答の担当の方から電話がありました。
まず、こういった相談自体が、アートメイク用の色素を作りたいとはっきり用途を明示していることになる。それに対して雑品としてなら可であるとは答えにくい、との苦言がありました。なるほど。
しかし、それを措いて、あえて質問に答えるとすれば、まず1については薬機法には触れないが、ほかの法律に抵触するかしないかは、当方としては関知しない、ということでした。
2ですが、自院で使用する分を、外部に製造を委託すること自体は問題ないとのことでした。
3については、私が発注して製造してもらったものは、私のクリニックでアートメイク目的で使用することが既に明らかなので、これを転売するということは、表示がなくてもアートメイク用として販売したものと看做される可能性があるのでよろしくないとの見解でした。
 
そうすると、個々の医師が、私を介してではなく、直接に色素の調合をしてくれるところ(化粧品の小口のOEM会社を想定しています)から購入するのがベストとなります。問題は、何個を最小単位として製作してもらえるかになりますね。
私を介さないこの販売方法というのは、製造してくれる会社さえOKしてくれれば、メリットもあります。
それは、私を介さない=私にマージンが入らないということなので、私がこの色素について、堂々とブログやHPで「こういう色素でアートメイクをしています」と告知できる点です。
私を介したら、私は一切ブログにもHPにも書けません。書いたら宣伝・広告と看做されるだろうからです。
それでは、私には何も収益が無いではないか?と不審がる方もいるかもしれませんが、そこはいいんです。私はそんな小銭を稼ぐために、いろいろ頭をひねってるわけではありません。
私が収益を得る糧は、あくまでアートメイク施術そのものです。あの先生のところでなら安心してアートメイクを受けることが出来る、という信用を築くのが第一目的です。
 
話は続きます。実はこのブログは私の備忘録も兼ねています。いろんな話が錯綜するので、書きながら頭を整理してもいます。
先日、鍼灸用の針を作っている会社から電話がありました。私のブログのアートメイク色素の記事を読んだそうです。
アートメイク用の針を製作したいのだが、PMDA(医薬品医療機器総合機構)に相談したところ、「針だけではアートメイクは出来ないでしょう、色素とセットで申請お願いします」と言われたとのこと。色素の製造についてはまったく知識がないので私に相談をくださいました。
ひょっとしたら渡りに船かもしれないので、こんど私と色素を調合していただける予定の会社の方と針の会社の方とで相談してみようと思います。
まあ、最終的には、PMDAが、アートメイク用の針と色素セットの審査承認費用をいくらに見積もるかにかかってくるわけですが。
私がこの話に期待している理由は、注射針というのは、医療機器の中でももっともリスクの低い「クラス1」になるからです。クラスが低ければ、費用も安くなるので、国産の可能性が出てきます。PMDAが色素ではなく、注射針を主として見てくれるかですね・・どうかなあ。
 
以上まとめますと、現時点のアートメイク用色素に関しては、
1) 欧米よりも韓国製の色素のほうが信用できる(必ずSDSを取り寄せて成分を把握しておくこと)。
2) 外部に製造委託した色素を購入して施術することは可能であり、1)よりもさらに信頼性が高い。
3) 針とセットで医療器具として認可を受けることは、意外とハードルが高くないのかもしれない。
ということになります。
 
実際に試作した色素で、まず最初に私自身がアートメイク施術受けてみました。施術してくれた典子先生によれば、従来のものより使いやすいそうです。基剤の粘度調整してあるからね。
色調も6色調合して、すでに当院でのアートメイクは全て自作色素に変えました。私が成分を吟味して安全性を第一に考えたレシピによります。皆様、安心して当院でのアートメイク施術をお受けください。
 
上から施術前、デザイン、施術直後。

なんだか凛々しくなりました。もっとも今は施術直後よりも色が落ちて薄くなっています。連休明けくらいに2回目してもらう予定です。
(2017/04/29 記)

※PMDAに問い合わせました。結果はこちら(→「国産のアートメイク色素作ります・その8
」)。

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

1577円で買える安心

 
鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は5月1日(月曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の12月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

アドレナリンのプレフィルシリンジの使用期限が切れたので買い換えました。もう何回これ買い換えたことだろう。いつも一回も使わず使用期限が来るたびに丸ごと捨ててます。


 一箱10本入っていて、問屋からクリニックへの納入価格1577円です。安いとはいえ、もったいないですが、またこれ使わずに済んだ、有難い有難いと、本当に心の中で拝むような気持で廃棄しています。
開業医の方々って、アドレナリン注射液って、何割くらいの方が常備しているんでしょうか?AEDは、結構普及してきていると思いますが、あれは心室細動・心室性頻拍の治療のものなので、アナフィラキシーショックや心静止・PEAのときには役に立ちません。
病院勤務のときには、緊急カートの中に必ずアドレナリン入ってますから、安心なんですけど、開業すると、アドレナリン、他にあんまり利用法もないし、二年で使用期限切れちゃって買い換える手間考えると、少なくともAEDよりは備えられてないんじゃないかなあ。
 
私のように、1人でやってる小さなクリニックの院長っていうのは、大海原を1人で航海しているようなもので、自由で楽しみも多いですが、「板子一枚下は地獄」です。ある先生は手術室に神棚がこしらえてあって、毎朝拝んでから手術するそうです。真似する気はないですが、気持ちはわかります。
開業して16年になりますが、一回だけ、アナフィラキシーを経験しました。手術じゃなくて、にんにく注射(マルチビタミン注射)でです。注射しているうちに意識が低下してきて、頸部から頬にかけ発赤してきたので、注射を止めて、脈拍数測ってみたら(こういう場合は、迷走神経反射のこともあります。その場合は徐脈で心配することはありません。アナフィラキシーのときは頻脈です)、弱い頻脈でした。
先ず行うべきことは119番コール。
私(スタッフに)「アナフィラキシーショックになるかもしれないから119番かけて救急車呼んで!」
クリニックに救急車来たら恥ずかしいなどと躊躇してはいけません。最悪のシナリオ考えれば一刻も早く救急隊の人手借りて、どこかの救急室に運び入れるべきです。
それから写真のアドレナリン準備していたら、患者さんが、
患者さん「先生、大丈夫です。」
ああよかった、意識低下したのは一瞬で、顔の赤みもさっきよりはちょっと退きました。
私「ごめん、119番電話して救急車もういいって断って!」
スタッフ「先生、もう出るところだって言ってます。」
私「だめだよ、クリニックに救急車来たら恥ずかしいじゃん!ごめんなさい大丈夫でしたって謝って断って!」
とにかく患者さん、しばらく休んでもらって、無事にお帰りになりました。
終わってしまえば、こうやって笑い話に書けるんですけどね。
 
うちのような小さな個人クリニックで、万が一患者さんが急変した場合に、出来ることっていうのは本当に限られると思います。
自分への忘備録のような気持ちでまとめますと、
1) 胸部圧迫(心マッサージ、とにかくこれが一番大事!)
2) AED
3) アドレナリン(アナフィラキシーショックのときは筋注、心静止のときは静注)
これくらいじゃないかしらん。
あとは
4) 119番電話して救急車を呼ぶ!(遅いよりはまだ早すぎるくらいのほうがいい)
かなあ。
ほかにももちろん救急用医薬品っていろいろありますけど、それは救急室での話。一次救急のさらに手前のゼロ次救急で何が必要か?個人開業医が救急車呼んで到着するまでになすべきことは何か?これ、意外と研究されてないと思います。どなたか、救急出身の先生、ACLSみたいなシミュレーションプログラム作ってくれないかなあ(本気です)。
 
アドレナリンのプレフィルシリンジ開封した写真です。蓋を開けて針付ければすぐ打てます。エピペンっていう針付きのもあるけど、こちらのほうが静注にも使えるので便利と考えています。
 


  (2017/04/26 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

ヒアルロン酸注射で失明させないために・その7+国産のアートメイク色素作ります・その6+ピコレーザー購入することにしました


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は5月1日(月曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年12月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

小ネタ(?)3本です。
 
1 ヒアルロン酸注射で失明させないために・その7
 
ウサギの実験をもう一回やってみました。側孔付きの針(→こちら)です。この針でウサギの耳の小動脈にヒアルロン酸を注入しようとして、どうしても注入できなければ成功です。
結果は・・一発目でしっかり動脈内に入ってしまいましたorz・・。

動画表示されない場合はこちらをクリック↓

この方法では駄目かもです・・。
一応発見はあって、対側の耳でも同様にやってみたんですが、一回目は血管内に入りますが、2回目以降は血管内に入りません。ということは、針先が少し鈍だと、皮膚は貫通しても動脈壁には刺さりにくいのかもです。
もう一つは、血管内に入った後、マッサージしてやると、すぐにではないですが、血流に飛ばされて開通するみたいだという点です。ということは、塞栓を疑ったら、一生懸命マッサージしてやることは、少しは意味があるかもしれません。目の中に指をつっこんでぐりぐり押すくらいでなければいけないのかもしれませんが・・。
引き続き研究続けます。大事な問題ですから・・。
一応、ウサギでのこういう実験モデル作ったことは評価されていいと思います。この実験モデルで、誰がどんなに頑張っても、血管に入らない針を開発すればいいということなので。
 
2 国産のアートメイク色素作ります・その6
 
ようやく試作品ができました。この3色で多分、日本人の眉とアイラインは事足りると思います。



成分は非常ーっにシンプルです。1)カーボン粉末と2)赤色二三酸化鉄、3)黄色二三酸化鉄、これらを4)マクロゴールという粘度のある液体に混ぜて作ります。1)~4)とも皮膚科的観点から安全性は高いです。念のために、最終的に1)多環芳香族炭化水素、2)鉄含有率、3)鉛・ヒ素・水銀含有率を測定しておこうと考えています。
ただ、問題は・・実際に販売するとなると、医療器具としての承認を取らなければなりません。
ちなみに、アートメイク色素の場合は、それ自体に薬効があるものではないので、医薬品ではなく医療器具の扱いになるようです。私も知らなかったのですが、ジュビダームなどのヒアルロン酸注射、これも医薬品ではなくて医療器具です。単に組織を盛り上げるだけで薬効はないので。
医療機器にはクラス1~4の分類があります。アートメイク色素の場合、体内に留置することになるので、クラス4の高度管理医療機器となる可能性が高いです(まだ同様の製品が承認を得ていないので、確定ではありませんが)。
すると、PMDAという機構での審査が必要となるのですが、この費用が2千万円越えそうです・・。
ヒアルロン酸注射のような一本数万円単価の製品なら、元は取れるかもしれませんが、アートメイク色素って、せいぜい3千円くらいのものです・・。一本千円の利益見込むとして、審査費用の元取るまでに2万本売らなければ・・。
どうしたものかと考えあぐねています・・。
泣き言書くようで気は進まないのですが、日本のこういう医療機器の審査の厳格さっていうのは、有用な側面もあるとは思うのですが、その一方で、美容外科領域で用いられるようなマーケットが限定された医療機器に関しての、日本企業の参入障壁を高くしてしまっています。たるみ引き上げ用の針糸などまさにそうです。母国で審査の通りやすい韓国やヨーロッパの製品が日本の市場を席巻することになります。医師がこれらの製品を個人輸入して使用する場合には、日本の医療機器としての承認は不要だからです。国内で医師向けに販売しようとすると、規制がかかります。なんだかおかしな話です。
海外の企業が日本の医師に販売するのは規制がなくて、国内企業が日本の医師向けに販売しようとすると、薬機法第68条(→こちら)に阻まれます。
だけど、なんとかしようと思います。医師が医療行為としてアートメイクを任された以上は、大事なことですからね。頑張ります。
気が付いたことが一つあります。韓国のみが、日本と同じくアートメイクを医療技術として、医師免許が必要な行為としています。ということは、欧米よりも韓国メーカー製の色素のほうが、まだ安全性は高いのかもしれません。このあたりは、調査中です。韓国でアートメイク色素を作っているメーカーは4社くらいあるようです。ただホームページを見ても、成分開示はなされていません。
続き→こちら
 
3 ピコレーザー購入することにしました
 
うちのクリニックでしみを取ったお客様には、ほぼ全員レーザーカーボンピーリングをお勧めしています。予約がとりにくくなったので、本院での新規予約は中止し、アトリエの典子先生とクオールの麻子先生にお願いしていたのですが、両分院とも予約がとりにくくなってきてしまいました・・。
それで、和子先生にお願いしているスタジオでもレーザーカーボンピーリング始めてもらおうと考えています。そこで必要なのが、新しいレーザー(メドライトC6)なのですが、どうせなら、本院にあるC6をスタジオに移動して、新しくピコレーザー買おうと考えました。
ピコレーザーのメーカーは現在数社あるんですが、ピコシュア、ピコウェイ、エンライトンという三機種がよく購入されているようです。
私はエンライトンを選んだのですが、その理由は、
「うちにはタトゥーのお客さんはあまり来ない。圧倒的にシミを取りに来るお客さんが多い。」
からです。
ここから先は、同業者向けの話になります。一般の方は雰囲気だけ読んでください。


上図は、ピコシュア、ピコウェイ、エンライトン三機種のフルエンスのグラフです。しみは私のところでは532nmで2J/cm2のフルエンスで取ります。Spot Size 2mmの場合に、ピコウェイ、ピコシュアだとこのフルエンスが出ないようなのです(右図の赤丸)・・。タトゥー除去マシンとして開発された結果でしょう。
3mmだとピコウェイでも2J/cm2のフルエンスが出せるのですが、そばかすのような小さな色素斑には、3mmは大きすぎます。2mmでも大きすぎるくらいです。なので私は古いMedLiteⅡがいまだに手放せないのですが・・。
ほかの先生方の多くは、「ピコシュアだと多色のタトゥーに対応できる」「ピコウェイがパルス幅が狭くフルエンスのピークも高いようだ」と考えると思いますが、私の場合、ピコレーザーで何をしたいかというと、しみ取りです。そうすると、エンライトンがいちばん使い勝手が良さそうだ、ということになります。
「なんで深谷はエンラントン選んだんだ?」と不思議に思う先生いるかもしれないので、説明しました。
レーザーカーボンピーリングはSpot Size 6mm、1.3J/cm2でやっているので、どの機種でもできそうです。
MedLiteⅡの新品が入手できれば、いちばんいいんだけどなー。この感覚、車で例えると、旧車のGTRにこだわって整備して乗り続けてきた人が、さすがに部品調達もままならなくなってきて、壊れたときの予備にそろそろ新車を一台購入しておくか、という感じです。状態の良いMedLiteⅡお持ちで倉庫に眠らせている先生いないでしょうか?JMEC介して有償で引き取らせていただきますm(_ _)m。
(2017/04/01 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継