国産のアートメイク色素を作ります・その5

  
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某化粧品OEM会社の協力を得て、色素の試作を始めました。
試作と言っても、今回のミッションは、まったく新しいものを作るわけではありません。なおかつ、成分については
http://chemistry.about.com/od/colorchemistry/fl/Tattoo-Ink-Chemistry.htm
http://chemistry.about.com/od/medicalhealth/a/tattoocarrier.htm
という情報があります。
要するに、リンク先に記されている、Fe2O3(酸化第二鉄)、FeO(酸化第一鉄)、カーボン、ログウッドという4種類のパズルのピースを用いて、既存の成分非公開の海外製アートメイク用色素とほぼ同じものを作り上げよう、という作業なので、試行を繰り返せば、おのずから結果がでるはずです。

まず、カーボン:3%+Fe2O3:27%をベースとして作りました(B)。カーボンの黒色にFe2O3の赤色を混ぜて適度な茶色を出そうとしたのですが、比率1:9でもほとんど黒のままです。そこで、Fe2O3:30 %(R)、FeO:30 %(Y)を作って、この3つを、比率を変えていろいろ混ぜてみました。黄(または緑)色を帯びた茶色から、赤みを帯びた茶色まで、いくつかのグラディエーションが出来ました。


 市販のアートメイク色素に一番近い色調は、比率2:1:1で混ぜたものです(右上)。計算すると、カーボンは1.5%、Feは20.5%になります。

あさこ先生の実験(→こちら)で、市販の色素のFeは、濃いもので18%で、その濃度だと、MRI検査時に灼熱感は出ませんが、画像のアーチファクトは出ることが判りました。アーチファクトが出ない色素のFe濃度は7.3%以下でした。ですから、Fe濃度を下げる必要があります。
単純に考えると、キャリアを増して3倍に希釈すればいいだけですが、それでは全体に色が淡くなってしまいます。
そこで、四つ目の成分であるログウッドについて検討しました。
 
ログウッドというのは、色素を持った木の一種で、この木が多く生えている山を流れる川は、木から溶け出した色素のために赤く染まるそうです。
 

Fe2O3の色に似ています。これをFe2O3の赤の代わりに使ってやると良いのかもしれません。
ログウッドにカーボンを混ぜて調色してみました。


いい感じで、最初はこれなら鉄を使わずにログウッドとカーボンだけでもいいんじゃないかな?と思いました。ところが、時間がたつとログウッド、紫に色が変化するようです。
 

ログウッドは学名をHaematoxylum campechianumといいます。Haematoxylum‥お医者さんならぴんと来るでしょう、そうです、組織のヘマトキリン・エオジン染色。あのヘマトキシリンです。なるほど紫色なわけです。
 
しかし、上の写真の川の色は茶色です。どういう条件で紫色に変わるのか?皮膚に入れたときに茶色と紫色どちらになるのか?ここはちょっとまだ判りません。
 
ログウッドにカーボンを混ぜたものに、黄色のFeOを混ぜてみました。
 

Fe濃度を計算すると、1:1混合の場合、11.7%、2:1混合の場合、ちょうど7.3%になります。既存の色素のFe濃度にほぼ近いので、このあたりが正解に近いと思います。
 
要するに、黒のベースはカーボンで、これに赤または紫としてFe2O3またはログウッドを加えて赤みを帯びた茶色にして、さらに黄色のFeOで自然な感じの茶色に整える、最終的なFe濃度を計算して7.3%内に抑える、ということのようです。
 
キャリア(色素を溶かすもの)は、生体に安全で、色素を均一に分散させてその状態を保つ(色素が沈殿しない)ものなら、何でもいいです。このあたりは、化粧品OEM会社のノウハウが有難いです。
今回、私と化粧品OEM会社とで一致したアイデアとして、ヒアルロン酸を使ってみることにしました。粘稠で生体内に入れても安全性が高いからです。
 
色素は、今年(2017年)の夏ごろまでには完成させる予定です。
ただし、日本でこの色素を流通させるためには、医薬品に準じた安全性の検討が必要です。そのため、当面は、医療アートメイク学会所属医師個人が、色素製造会社にその都度発注し、全例について前向きコホート研究として登録して、アレルギーなど合併症の有無を追跡していく予定です。
その時には、どうか皆様のご理解ご協力をお願いいたします。
(2017/02/08 記)