スプリング糸での胸の引き上げモニター募集します


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は3月1日(水曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年10月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

かねてより告知しておりました通り、スプリング糸での胸の引き上げのモニターを募集いたします。ご希望の方は、052-264-0212までお電話ください。
応募要領は下記の通りです。
また、当面は、慎重を期すため、当院で過去に顔面にスレッドリフトの施術を受けたことがあり、その結果に満足している方のみを対象とします。

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 <下垂した乳房の糸による引き上げの研究に御参加いただくにあたって>
顔面のたるみに対する糸での引き上げ施術は、近年一般的になってきています。しかし下垂した乳房の糸での引き上げはあまりなされていません。この研究は、顔面のたるみの引き上げに使うものと同じ材料(ナイロン糸によって作成されたアプトススプリング)によって、下垂した乳房を引き上げるものです。以下の概要とメリット・デメリットをよくお読みの上、よろしければご参加ください。


【施術の概要】
アプトススプリングは、グルジアの形成外科医スルマニゼによって、2003年に考案されました。プラスチックの糸をコイル状に成型したものを皮下組織に挿入することで、組織の弾力・伸縮性を高め、たるみの引き上げを行うものです。



糸の素材はナイロンです。スルマニゼはポリプロピレンを用いましたが、弾力性を比較した結果、ナイロンのほうが優れていることが判ったので、私たちはナイロン糸を用いています。外科用のナイロン製の縫合糸を加工して作成します。
これを頬に入れると、口横のたるみが引きあがります。




今回の研究では、これと同じ施術を下垂した乳房に対して行います。下の方は左胸の下垂が強く、糸を3本左側のみに入れました。施術前よりも引きあがって下垂が改善したことがわかります(解りやすいように、両肩と両乳頭を青い線で引いてあります)。


 【メリットとデメリット】
この施術のメリットは、術後の腫れが少ない点です。体への負担が少なく、気軽に若返りができます。
デメリットは、乳房というのは、ボリュームがあるため、必ずしもしっかりとは引きあがらないかもしれない点です。
挿入した糸は、一か月後くらいまでは抜去できますが、3か月以上経過すると抜去が困難となることがあります。また、局所感染症や異物感(上から糸の端が触るなど)があった場合など医学的に必要な場合には、抜去するなど対応しますが、それ以外の場合(例えば、仕上がりに問題ないにも関わらず、心理的に異物が入っていることが嫌になって抜きたくなったというような場合)には、抜去しません。
また、抜去すると、後に小さな傷が残ります。
挿入された糸は、マンモグラフィーでは検出されませんが、超音波エコーでは同定されます。したがって、今後乳房検診を受ける際には、担当医に糸が入っていることを申告していただいたほうがいいです。
このほか、未開拓の分野ですので、感染症、皮下血腫、その他の予測しなかった合併症が生じることはありえます。これら合併症が生じた場合の治療費などは、ご負担ください。
施術を担当する鶴舞公園クリニックの深谷医師は、顔面へのこの施術について多数の経験があります。また検診と術後の合併症の相談を担当するナグモクリニック名古屋の山口医師は乳房専門医です。二人の専門家のコラボによる企画ですので、信用はしていただけると自負しております。

 
【その他】
1 費用について:研究段階でありますので、費用は発生しません。無料で施術します。ただし術前術後のナグモクリニックでの乳房検診の費用はご負担ください。
2 対象は、50才前後(閉経後)から65才までの健常女性で、整容的観点から乳房下垂の改善を希望し、乳房検診によって異常を認めなかった方10名です。
3 具体的な施術の流れは下記です。
まずは、ナグモクリニック(名古屋)にて乳房検診を行います。
鶴舞公園クリニックにて、片側性の下垂の場合は下垂側に、両側性で左右対称の場合にはどちらか片側に、下垂の程度に応じて数本のアプトススプリング糸を挿入します。
施術1週間後および1か月後に、術後の腫れ・血腫などを確認するために診察を行います(鶴舞公園クリニック)。
施術前、直後、3か月目で写真撮影、判定を行います(鶴舞公園クリニック)。写真は医学雑誌への投稿や学会報告に使用します(お顔は撮影しません。胸だけです)。また、個人を特定できる情報は公開しません。データは厳重に管理します。
引き上げが有効であった場合には、左右をそろえるべく、またはさらなる引き上げを期待して追加で糸を挿入することがあります。
6か月目、12か月目に写真撮影を行い、中期効果の判定を行います。5年後に長期効果と合併症の有無の判定を行います。
4 代替治療について:乳房のたるみ引き上げには、外科的手術もあります。この場合は研究の対象ではありませんので費用が発生しますが、ご希望の方はナグモクリニックでご相談ください。
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和子先生と丸の内にあるナグモクリニック名古屋まで挨拶に行ってきました。


山口先生の診察風景。もともと山口先生とは、うちのお客さんで豊胸希望のひとを紹介したこともあり、お付き合いはさせていただいていました。HPは→こちら


山口先生とのスリーショット。・・和子先生が真ん中ですが、女性挟んだほうが絵になるだろうというだけで、和子先生はこのプロジェクトとは実は何の関係もありません。


帰りに大須で栗子焼買ってきました。私ももう58才。実のところ、胸を糸で引き上げて名を上げようとか、クリニックの収益増やそうとか、そういう欲はもうないです。まあ、みんなで気楽に楽しく「若返り同好会」みたく面白いことして毎日が暮らせれば幸いって感じですね。昔の部下の女医さんたちもこうやって集まってきてくれるし。


(H29.2.16記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

臍帯血幹細胞のお話



鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は3月1日(水曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年10月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

医療アートメイク学会の企画で「3月に韓国のアートメイク施術クリニックを見学に行きましょう」という話が進んでいます。そのオプションで、臍帯血幹細胞培養を行っているクリニックも見学に行きましょうということなので、そういえば幹細胞やその培養液の応用って、その後進捗あったのかな?と思って調べてみました。

幹細胞の応用は、うちのような個人クリニックの手には余りますが、培養液なら再生医療法による規制もないし、先回の記事で記したように、アートメイクの手法で真皮に入れられます。
以前、脂肪由来幹細胞については、近所の名大の元教授の先生たちがやっている培養施設で、私のお腹から採取して冷凍保存してもらっています。そのときの培養液を頂きました。本ブログの過去記事に経緯が記してあります(→こちらこちら)。

この培養液は、一回だけ自分の額の生え際に左右片側だけ打ってみたんですが、3ヶ月くらい経っても発毛してくる様子もないんで、追加注射は止めてしまいました。まだ冷蔵庫に保存してはありますが、無菌的とはいえ、時間も経ってるし、そのうち処分します。
このときの、私の一番の関心は、幹細胞培養液中にどのくらいの濃度で成長因子が含まれているのか?を確認することでした。データを再掲します。
(Parkの報告(→こちら)で、脂肪由来幹細胞培養液では、成長因子のうち、VEGFの濃度が最も高いというデータがあったので、VEGFについて測定しました。)

379mlの培養液からトータルで31119.9pg(31.1ng)のVEGFが採取できました。濃度の平均は82 pg/mlです。Parkの報告では809 pg/mlでしたので、その10分の1です。培養条件の違いによるのかもしれません。
さて、ここで思い出していただきたいのは、先回のb-FGFによるタトゥー(→こちら)で用いたb-FGFの濃度です。10μg/mlで行いました。
ヒアルロン酸ジェルをキャリアとしてアートメイクの手法で打ちましたから、当然全部は入っていません。「100分の1くらいが入ったんじゃないか」と書きましたが、10μg/mlの100分の1は10ng/mlです。
幹細胞培養液中の成長因子濃度は、Parkの報告でも809 pg/ml(0.8 ng/ml)でしたから、b-FGFタトゥーでは、 100分の1くらいが入ったとしても、幹細胞培養液の濃度の10倍です。今日は、これが書きたかった(^^)。
 
逆に言いますと、幹細胞培養液の場合は、アートメイクの手法で打っても、培養液中の成長因子の濃度が低いですから、効果は出ないだろうな、とも言えます。幹細胞培養液を臨床応用するとしたら、やはり原液のまま皮内注射でしょうね。脂肪組織内に入らないように大量入れるのは相当なテクニックが必要です。脂肪組織内に注射した場合は、b-FGF注射同様のボコりのリスクがあると思います。
そう考えると、幹細胞培養液の美容領域での活用は、意外と難しそうです。
と、思ったんですが、調べてみると、「オスモインジェクター」っていうのが、既にあるみたいですね。なるほど・・
昨年のハロウィンパーティーのときに仲良くしていただいた居原田先生や池田先生はすでに導入してらっしゃるみたいです(→こちらこちら)。

さて、話を韓国ツアーにもどして、見学予定は、臍帯血幹細胞培養のクリニックです。臍帯血幹細胞の培養上清についての研究論文を探してみたら、ありました(→こちら)。

内容は、「臍帯血幹細胞の培養液には、幹細胞そのものをも刺激するG-CSFやGM-CSFが高濃度に含まれており、創傷治癒の促進に有効である」といったことです。各種成長因子の濃度も一部記載されており、EGF:3286 pg/ml、VEGF:2463 pg/ml、G-CSF :3615 pg/ml、GM-CSF :3623 pg/mlでした。たしかに、Parkの報告や私が培養してもらった脂肪由来幹細胞よりも濃度が高いです。しかし、アートメイクの手法で入れられる濃度には、はるかに遠いです。
 
以前の記事で、幹細胞培養液を化粧品に混ぜて皮膚の上から塗る話を紹介しましたが、分子量の点からも無理がありますが、濃度の点からも難しそうですね。
 
オスモインジェクターによる臍帯血幹細胞培養液の真皮内注入は・・うーん、どうかなあ、池田先生は「ボトックスやヒアルロン酸注射のように10年に一度出るか出ないかの治療」と絶賛していらっしゃいます。いまのところそれを否定する材料も見当たらないですが・・
強いて言えば、コスパ的に、市場性がどのくらいあるか?って話かなあ。PRPが出てきたときの感じに似てると思います。PRPも効果はあるんですが、一回20~30万円の施術として見合うかと言うと、私は踏み切れませんでした。いまは自作キットで一回5万円なので、自信をもって施術しています。
まあ、この辺は単に価値観の問題なのですが・・。

そのうち顔半分を、臍帯血幹細胞培養液のオスモインジェクター注入、半分を私が思いついたb-FGFタトゥー、で比較してみたいですね。どっちに軍配上がるか、正直ちょっと見当つきません。
 
さて、話は変わって、臍帯血幹細胞ですが、これは血液難病に対して、骨髄バンクに加えて、臍帯血バンクと言って、お産のときに産科病院を介して臍帯血を提供して役立ててもらおうというボランティアになっています。
これに対して、将来その赤ちゃんが病気になったときのために、年間数万円払って、臍帯血を保管してもらおうというサービスも出てきているようです(たとえば→こちら)。
これが広まると、善意の提供者が少なくなってしまうのではないかという危惧からではないかと私は思うのですが、反対意見が多いみたいです。まとめサイトもありました(→こちら)。
もしも、私に新しい子供ができたならば、臍帯血から幹細胞の培養までしておいてもらった上で、それを将来万が一のために凍結保存してもらうだろうなあ・・。というか、臍帯血の半分をボランティアで提供して、半分をプライベートで取っておくっていうのは出来ないものなんだろうか?
そして、培養の過程で生じた培養液を冷凍保存して取っておいて、オスモインジェクターで奥さんの顔に注射してあげると思います。
これから出産するであろう若い女性たちどうですか?子供の将来の保険に加えて、自分の若返りにも役立ちますよ。
(2017/02/10記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

成長因子(b-FGF)タトゥーしてみました


鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は3月1日(水曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年10月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

先回(→こちら)の続きです。アートメイクというのは、大分子量の物質や粒子を、真皮内に届けるDrug Delivery Systemと一般化することが出来ます。そこで、ヒアルロン酸に続いて、成長因子(b-FGF)でも試してみることにしました。

b-FGFは、これを注射あるいはPRPに混ぜて注射すると、脂肪細胞由来幹細胞(ADSC)が分化増殖して、ボコることがあるのは、ご存知の通りです。このブログでもたびたび指摘してきました。幹細胞が脂肪に分化すれば、体積が急増するし、骨芽細胞に分化すれば硬いしこりになります。
しかし、アートメイクの手法で真皮内に入れてやるだけなら、真皮には幹細胞は存在せず、すでに分化してしまった繊維芽細胞だけですから、安全なはずです。
凹みを埋めるほどのボリューム効果は出ませんが、コラーゲン増生によって張りが出て小じわが消えるはずです。
まず薬液の調整です。以前いろいろ調べた結果が役に立ちます。札幌医大の小野先生のb-FGF注射のプロトコルは10μg/mlでした(→こちら)。
昨年報告された聖心美容外科の鎌倉先生の論文ではPRPに10~20μg/ml添加されています(→こちら)。
川添先生らのクローズドな研究会での濃度は、これは伝聞で間接情報なので確かではないのですが、「250μgのb-FGFを2.5mlで溶かし、そのうちの0.1mlをPRPに添加する」とのことなので、PRPを仮に1mlとすれば、やはり10μg/mlです。
ちなみに、基礎データからの私の見積もりとしては、100ng/ml、すなわち3人の先生方の濃度の百分の一の濃度で、効果は頭打ちになります(→こちら)。
もっとも、基礎データは、培養細胞の培地濃度で、実際に注射したときには、これが周辺に拡散希釈されていくわけですから、100ng/mlの百倍の10μg/mlというのは、案外妥当なのかもしれませんが。
 
ということで、今回のタトゥーで用いるb-FGF濃度も、10μg/mlで調整します。ただし、タトゥーで押し込めて入れるので、ただの生食ではなく、粘稠なヒアルロン酸にしようと思いました。
ヒアルロン酸は化粧品製作用の粉末を用います。b-FGF溶液にヒアルロン酸粉末を1%加えて約一日置くと、とろっとしたゼリー状のb-FGFジェルが出来ます。下写真は使用したb-FGF製剤(フィブラストスプレー)、生食とヒアルロン酸粉末。

モニターは例によって私の母親です。82才になります。エムラクリームで麻酔しているところ。


施術の様子です。動画にとってYoutubeにあげました。

使用したb-FGFジェルは0.7ml、b-FGF総量で0.7μgになります。真皮内に入ったのは1/100として7ngくらいでしょうか?微量ですが、実際に生体内で産生されたり放出されたりしている成長因子の量って、そのくらいじゃないかと思います。レセプターにくっついて活性化させる鍵みたいな物質であって、ヒアルロン酸みたいに量で形を作るものじゃないですから。
 
あくまで実験です。まだメニューには載せません。半年から一年の経過をみて、良さそうであれば、総合病院の倫理委員会にかけて、10例くらいのコフォート研究から始めようかと考えています。来年の課題かな・・。2年後に医療アートメイク学会が公益法人になるから、それから他の先生方との共同研究という形で進めるのがいいかもしれません。

b-FGFに限らず、いろいろな幹細胞培養液なんかも、この手法で小じわなんかに導入可能です。
ただ、この方法、どっかの悪いクリニックが、さも自分も同じこと考えてましたとか、自分は何年も前からもうやってまーす、みたいなこと言い出して、早速、診療メニューにあげるかもしれませんね・・。
安全性高そうな気はしますが(だから母親に施術しました)、結果は未知です。結果が未知にも関わらず、お客様に提供したとしたら、いくら同意があったとしても、それは不誠実というものです。
美容医療の業界、何でもありみたいなところもあるし、確かにそこが魅力でもあるのですが、医者としての誠は通したいものです。
(2017/02/08 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

国産のアートメイク色素を作ります・その5

  
鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は3月1日(水曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年10月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。

某化粧品OEM会社の協力を得て、色素の試作を始めました。
試作と言っても、今回のミッションは、まったく新しいものを作るわけではありません。なおかつ、成分については
http://chemistry.about.com/od/colorchemistry/fl/Tattoo-Ink-Chemistry.htm
http://chemistry.about.com/od/medicalhealth/a/tattoocarrier.htm
という情報があります。
要するに、リンク先に記されている、Fe2O3(酸化第二鉄)、FeO(酸化第一鉄)、カーボン、ログウッドという4種類のパズルのピースを用いて、既存の成分非公開の海外製アートメイク用色素とほぼ同じものを作り上げよう、という作業なので、試行を繰り返せば、おのずから結果がでるはずです。

まず、カーボン:3%+Fe2O3:27%をベースとして作りました(B)。カーボンの黒色にFe2O3の赤色を混ぜて適度な茶色を出そうとしたのですが、比率1:9でもほとんど黒のままです。そこで、Fe2O3:30 %(R)、FeO:30 %(Y)を作って、この3つを、比率を変えていろいろ混ぜてみました。黄(または緑)色を帯びた茶色から、赤みを帯びた茶色まで、いくつかのグラディエーションが出来ました。


 市販のアートメイク色素に一番近い色調は、比率2:1:1で混ぜたものです(右上)。計算すると、カーボンは1.5%、Feは20.5%になります。

あさこ先生の実験(→こちら)で、市販の色素のFeは、濃いもので18%で、その濃度だと、MRI検査時に灼熱感は出ませんが、画像のアーチファクトは出ることが判りました。アーチファクトが出ない色素のFe濃度は7.3%以下でした。ですから、Fe濃度を下げる必要があります。
単純に考えると、キャリアを増して3倍に希釈すればいいだけですが、それでは全体に色が淡くなってしまいます。
そこで、四つ目の成分であるログウッドについて検討しました。
 
ログウッドというのは、色素を持った木の一種で、この木が多く生えている山を流れる川は、木から溶け出した色素のために赤く染まるそうです。


Fe2O3の色に似ています。これをFe2O3の赤の代わりに使ってやると良いのかもしれません。
ログウッドにカーボンを混ぜて調色してみました。


いい感じで、最初はこれなら鉄を使わずにログウッドとカーボンだけでもいいんじゃないかな?と思いました。ところが、時間がたつとログウッド、紫に色が変化するようです。
 

ログウッドは学名をHaematoxylum campechianumといいます。Haematoxylum‥お医者さんならぴんと来るでしょう、そうです、組織のヘマトキリン・エオジン染色。あのヘマトキシリンです。なるほど紫色なわけです。
 
しかし、上の写真の川の色は茶色です。どういう条件で紫色に変わるのか?皮膚に入れたときに茶色と紫色どちらになるのか?ここはちょっとまだ判りません。
 
ログウッドにカーボンを混ぜたものに、黄色のFeOを混ぜてみました。
 

Fe濃度を計算すると、1:1混合の場合、11.7%、2:1混合の場合、ちょうど7.3%になります。既存の色素のFe濃度にほぼ近いので、このあたりが正解に近いと思います。
 
要するに、黒のベースはカーボンで、これに赤または紫としてFe2O3またはログウッドを加えて赤みを帯びた茶色にして、さらに黄色のFeOで自然な感じの茶色に整える、最終的なFe濃度を計算して7.3%内に抑える、ということのようです。
 
キャリア(色素を溶かすもの)は、生体に安全で、色素を均一に分散させてその状態を保つ(色素が沈殿しない)ものなら、何でもいいです。このあたりは、化粧品OEM会社のノウハウが有難いです。
今回、私と化粧品OEM会社とで一致したアイデアとして、ヒアルロン酸を使ってみることにしました。粘稠で生体内に入れても安全性が高いからです。
 
色素は、今年(2017年)の夏ごろまでには完成させる予定です。
ただし、日本でこの色素を流通させるためには、医薬品に準じた安全性の検討が必要です。そのため、当面は、医療アートメイク学会所属医師個人が、色素製造会社にその都度発注し、全例について前向きコホート研究として登録して、アレルギーなど合併症の有無を追跡していく予定です。
その時には、どうか皆様のご理解ご協力をお願いいたします。
(2017/02/08 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継

ヒアルロン酸タトゥーやってみました

 
鶴舞公園クリニックの今月のご予約受付は終了しました。次のご予約受付日は3月1日(水曜日、10:00-18:30)からです。7ヵ月後の来年10月分のご予約をお受けいたします。公平のためお電話のみのご予約とさせていただいております(直接来院してのご予約は受け付けておりません)。ご了解くださいm(_ _)m。
 
平成29年1月29日に第一回医療アートメイク学会が開催されて、2月2日に正式に社団法人(非営利)として登記されました。左から実業家で片山さつき参院議員の夫の片山龍太郎先生、イーストワン皮膚科形成外科の池田欣生先生、東海大学形成外科准教授の河野太郎先生、そして私です。この4人で設立時理事を務めます(理事長は池田先生)。二年後に公益法人化の予定です。

私の役割は、皮膚科専門医であり化粧品の製作販売実績もあることから、成分開示された安全なアートメイク色素を開発することだと認識しています。実は、アートメイク用色素の自作は、私にとって数年来の懸念であり課題でした。しかし、化粧品原材料会社から、色素などのサンプルを取り寄せようとしても、その目的が「アートメイク用色素の試作です」と伝えると、提供してもらえないことが多かったです。なぜかというと、アートメイク色素というのは体内に埋め込むものなので、化粧品の範疇に入りません。ですから、万が一何かトラブルがあったときの責任を考えて、化粧品原材料メーカーはいずれも腰が引けてしまうということのようです。
今回、公益法人化を予定する「医療アートメイク学会」が出来て、厚労省とも連絡をとっており、そこに私が理事として参画しているということで、原材料メーカーのハードルが一気に下がりました。まさに渡りに船です。
 
さて、上記の理事4人でメールでいろいろ議論している過程で、レーザーを用いずに、色素のかわりに特殊な薬剤でアートメイクすることで、色素を消す施術があるらしい話になりました。調べてみると、どうもフェノールやTCAで要するに深いケミカルピーリングをするということのようなのですが、そこでちょっと思いついたことがあります。
 
アートメイクという施術で皮膚に埋め込むものは、色素でなくてもいい、医療アートメイクとして医師が施術するわけだから、薬剤でもいいわけです。ヒアルロン酸とか、幹細胞培養液、成長因子などはどうだろう?
皮膚(表皮)というのは、外界とのバリアですから、塗ればなんでも透過するわけではありません。とくに分子量の大きなもの、だいたい500ダルトン以上の物質は透過しません。
薬剤を、ターゲットとする部位に届ける(この場合は真皮)方法をドラッグデリバリーシステム(DDS)といいます。これを専門に研究する学会もあります(日本DDS学会→こちら)。
 
アートメイクという施術は、医学的に考えると、体外から真皮に大分子量の物質または粒子を届けるDDSである、と一般化することができるということです。
 
それで、とりあえず、フィラーで注入しているヒアルロン酸を、目周りの小じわにアートメイクの手法でタトゥーしてやるというのはどうか?と思って、スタッフに施術してみました。例えばですが、アートメイク施術の際のオプションとして一回3万円プラスで、目周りの小じわに、これ施術するというメニューはどうでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=BwEDivhjn0A 
(クリックすると動画が開きます)

何といっても、結果が出なければ意味ありませんし、ダウンタイムとして少し赤くなりますから、その経過も考えて、お客様に提示するに足る施術かどうかは見極めなければなりません。
しかし、ほかにも、このブログで度々問題提起してきたFGF(フィブラストスプレー)でも、アートメイクの手法で真皮に入れれば、問題は生じないような気がします。
FGFが問題となるのは、真皮よりも深い脂肪組織に薬剤が入って、そこで幹細胞(stem cell)を分化増殖させてしまってボコるからだと考えられます。アートメイクの針を使って、ごく微量真皮組織にいれる分には、真皮繊維芽細胞を刺激してコラーゲンを増生するだけだから、張りはでるでしょうが、ボリュームまでは出ないはずです。こちらは、まず自分の腕か脚の皮膚を使って実験してみよるつもりです。
 (2017/02/04 記)

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継