ヒアルロン酸注射で失明させないために(その5)

 
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前回(「その4」→こちら)の続きです、と言っても、前回の記事を書いてからもう2年近くになるのかあ・・。早いものですね。
先回は、先端が鈍の細針を作って、鋭針で道を作った後にこれを挿入して、ヒアルロン酸を注射する、という二段階によって、安全にヒアルロン酸を注入できる、というところまでだったのですが、このやり方、必ずしもうまく行きません・・。
うまくいくこともあるのですが、予め鋭針で道を作っておいても、鈍針が進んでくれないことも多いです・・。
それでこの2年、ずっと何か良い方法はないか、と考えていたのですが、先日ようやく「これなら」という方法を思いつきました。まだアイデア段階ですが、記しておきます。
 
ヒアルロン酸の注射針が下図のように小動脈内に入ってしまうと、粘稠なヒアルロン酸が小動脈内に充満して塞栓を起こします。
そこで、下図のように、針先から2mmのところに、直径0.2mmの小孔をあけます。なぜ2mmかというと、小動脈というのは、最大で直径1mmくらいのようなので、45度角で針を挿入したときに血管外に小孔が出ているためには最低2mmくらい必要、との判断からです。
0.2mmというのは、30G針の内径が0.2mmだからです。

このような針でヒアルロン酸を打とうとすると、ヒアルロン酸は注射筒寄りの小孔から出るようです。
下はプラスチック製の針に炭酸ガスレーザーで小孔をあけたもので、ヒアルロン酸を詰めた注射筒につけて押し出したところです。手前の小孔からヒアルロン酸が出てきます。このような二孔針でヒアルロン酸を注射するには、少し慣れがいるとは思いますが、決して無理なことではないでしょう。


針の先端が小動脈内に入っているとき(下図)、ヒアルロン酸は手前の小孔から出るので、小動脈内の塞栓を起こしません。のみならず、小動脈内圧は、周辺の組織圧よりはるかに高いでしょうから、小動脈内の血液が針先から小孔へと逆流するでしょう(内出血)。

仮に針が突き抜けて、小孔がちょうど小動脈内にあるとどうでしょうか?小動脈内の圧は高いので針先(血管外)へと血流が生じ、それに押される格好で、ヒアルロン酸もまた、小孔ではなく針の先端口に出て行くと思います。
小動脈に当たったとき、内出血はするけれども、塞栓は起きにくいと考えられます。

善は急げ、早速オーダーメイド針の会社に特注を依頼しました。
出来上がったら、上記の私のアイデアが正しいかどうか、確認したいものです。
しかし、実際にヒトの血管に刺して確認するわけにはいかないし、マウスなどの動物で実験するには、動物実験施設がないと出来ないし・・。
そこで思いつきました。そうだ、活け造りのレストランに行ってみよう。新鮮な魚の血管なら、この実験のモデルになるかもしれない。
板さんに相談して、魚はヒラメと決まりました。身が透明だから血管がいちばん見やすいようです。

https://www.youtube.com/watch?v=D2GJLhTvDqk 
(写真をクリックすると動画が開きます)

ヒラメの血管は同定しやすく、30G針でヒアルロン酸を注射するのもさほど難しく無さそうでした。まだ試作の針は出来上がっていないので、予備実験として血管内に針を注射できるかがテーマです。
ここまでは、良かったのですが・・。
「先生、このヒラメは、今は死んでるっていうか、包丁入れて血抜きしてるけど、実際に試作針が出来て確認するときは、活きたヒラメでするの?あばれない?」
「魚の活け締めっていうのは、二つの段階があって、延髄を切ると神経がやられて魚は動かなくなる。大動脈を切ると、体内の血液が抜かれて、虚脱して血圧が下がる。だから、大動脈を傷つけないように、延髄(脊椎)を切ってもらえば、動かず、かつ血圧も保たれたヒラメが出来るはずだ。」
「先生、ところで、ヒラメの血圧ってどれくらい?」
「・・うーん、知らない。そういえば考えたこと無かった。」
早速スタッフがスマホで調べてくれました。魚の血圧というのは、だいたい20~40mmHgのようです。低い・・。
マウスは110mmHgくらいでした。
やっぱりどこかの動物実験施設を探すしかないか。
ということで、今回の実験は成功ではありますが、ここまでの結果となりました。
スタッフたちは、時ならぬ宴会で喜んでいました。「先生、高血圧の魚もいるかもしれないから、もっとこの実験繰り返しましょう」とのことでした。

(2016/09/15記)