伸縮系の糸について・その2(スプリングアプトスとスプリングスレッド)ー追記あり。


次のご予約受付は平成28年1月5日(火)朝10時からになります。平成28年8月分をお取りします。よろしくお願いいたします。

前回の記事(→こちら)の続きです。「糸の施術で有効なのはスプリングスレッドだけです。他の糸より100倍いいです。」という間違ったことを、念仏を唱える如く、ブログに書き続けている先生を見つけたので、スイッチが入りました。
単純なことというのは、繰り返し聞かされていると、洗脳されます。「○○だけ」とか「100倍」とか、こういったキーワードをちりばめられると、惹かれる人もいるでしょうが、目を覚ましてください。

前記事では、伸縮系の糸は、引き締め系の糸での施術のあと、症例を選んで仕上げに使うといい、といったことを書きました。その一方で、伸縮系の糸を最初から用いてもいいお顔というのもあります。たまたま本日、ちょうどそういうタイプのお顔の方がいらっしゃったので、御了解の上、お写真使わせていただけることになりました。有り難うございますm(_ _)m。
まず、実際の施術の写真です。上から、施術前、デザイン(スプリングアプトス左右に2本づつ、計4本)、術直後です。



 
一見して、きれいに仕上がっているのがお判りかと思いますが、なぜこの方にスプリングアプトスが向いていたかというと術前のたるみ具合から、お肉を下写真のように移動しても、幅広のヒラメ顔にならないだろうと予想されたからです。

ちなみにこの方の場合は、通常のアプトスでもいいと思います。違いは、通常のアプトスは、引き締めが入るので、適応となるタイプのお顔が多いですが、スプリングアプトスは、向いているお顔を選ぶという点にあります。

もっとも、スプリングアプトス、伸縮系であるという点でスプリングスレッドも同じだと思いますが、入れれば、挙がるは挙がります。しかし、やみくもに適応を考えずに入れれば、「挙がったけれども、何かイメージと違う。おかしい。」ということになりかねません。しかし、施術を受けたクリニックに行ってそう訴えても「挙がってるじゃないですか」と言われれば、それまでです。クレームの付けようがありません。
挙がればいいってものじゃない、綺麗に自然に挙がらなければ。
そう考えると、このスプリングアプトス、ひいては伸縮系の糸と言うのは、私は適応は慎重であるべきと考えます。スプリングスレッドも同じはずです。

もうひとつ、前記事にも書きましたが、伸縮系の糸の欠点として、ひきつれが生じた場合に、マッサージして引っ掛かりを外すというテクニックが効かない、抜いて入れ直すしかない、ということがあります。伸縮系ですからね。外そうとしても糸が伸びて外れません。
たまたま今回の方、鼻横に入れた糸の端が引っかかったので、抜いて入れ直しました。なので、引っかっかった写真と、抜くときの術中写真があります。
下は正面から見たところ。上が術前、下は術後(向かって左側の糸端が引っかっかってエクボ状になっています)。


それで、すぐに抜いて入れ直しました。スプリングアプトスの場合、糸にコグ(とげ)がありませんから、端をつまんで引けばするすると全部抜けます(コグではなくて、螺旋と螺旋の間が組織に引っかかる仕組みです)。スプリングスレッドの場合は、外側が柔らかいシリコンゴムで、コグ(とげ)も付いていますから、中央のナイロンと外れて抜くに抜けなくなってしまうことがあるはずです。そうなったら、そこの窪みは永久に回復しません。


 スプリングアプトスは、入れた直後はもちろん、何年後でも、端さえ見つければするすると全部抜けます。下写真は、上の方の鼻横のエクボ(左)と、糸を抜いて入れ直した後(右)です。入れ替えれば、このように完全に回復します。


 世の中、色々な糸が毎年のように登場しますが、私が糸の良し悪しを見極める際に重要視することのひとつに、「最悪、その糸を抜かなければならないことになったときに、自分は抜くことが出来るのか?」があります。スプリングスレッドは、この点が一番ネックですね。
フランスの先生が考えたようですが、発想も陳腐です。たぶんロシアのスルマニゼのアプトスとスプリングアプトスの両方を知って、この2つをくっつけたらどうだろう、と思ったんじゃないかな。それを有り難がって、「糸での引上げはスプリングスレッドが一番!」と、全例スプリングスレッドで済ましている日本の医者はもっと愚かですけどね。
(2015/11/21 記)
(2015/11/23 追記)
前回、伸縮系の糸(スプリングアプトスやスプリングスレッド)だけでも大丈夫なお顔の実例を紹介しましたが、たまたま本日、逆に伸縮系の糸を最初に使わない方がいいお顔の方を施術したので、御了解を得てUPします。ご協力ありがとうございますm(_ _)m。

上段がもともとのお顔、中段がアプトス(引き締め系の糸)6本入れて約2カ月後、下段が今回スプリングアプトスを左右に4本入れた直後です。

この方の元々のお顔にいきなり伸縮系の糸で施術すると、正面から見たときの口横のしわや法令線は改善されますが、その分のお肉が引き締まることなく頬側に寄ってしまう結果、横に平べったい間延びのしたお顔になってしまいます。

なぜかというと、伸縮系の糸というのは、お肉をひっぱって移動するだけで、体積を縮めるわけではないからです。ですから、最初は、引き締め系の糸(この方の場合はアプトス)を用いたほうがいいです。

また、リポレーザーの適応についてですが、下はアプトスのデザインの際にたまたま撮れた笑ったときのお顔ですが、笑ったときに口横に脂肪は目立ちません。ということは、この方の場合は口横にたるみはあるが、それは脂肪の重みによるものではないです。ですから、リポレーザーはあまり効果はないでしょう。


まとめると、部分的に落ちてきているようなタイプ(先回の記事で紹介した方のようなお顔)は、最初から伸縮系の糸が使えますが、全体的にゆるんだ結果、法令線や口横にしわ寄せが来ているようなタイプでは、アプトスやエックストーシス、場合によってはリポレーザーで、引き締めたり焼いたりして縮めておき、仕上げに伸縮系の糸を使った方が自然に仕上がります。

鶴舞公園クリニック 院長 深谷元継