鶴舞公園クリニックアトリエ開院しました


最近すっかり予約が取りにくくなってしまってご迷惑おかけしています。とくに新規のお客様は、せっかく決心して勇気を出してお電話していただいたのに、予約が取れるのが4ヶ月以上先となると、しばし絶句される方が多いです。

予約の取りにくいレストランの気持ちが初めて解りました。売上はたいして変わらないのです。私の体は一つだし、狭い待合でお客様がなるべく重なることのないよう、ゆったりと予約をいれているからです。それよりも、特に常連さん、リピーターさんが、予約が取りにくいという理由で離れていってしまわないか、そちらの方が心配で苦になります。かといってこれからお付き合いの始まる新規のお客様をおろそかにも出来ません。スタッフには電話口でくれぐれも失礼のないよう気を遣うように申し付けています。

それで、急遽、昔からの知り合いで、うちのクリニックの常連のお客さんでもある女医さんお二人に相談して、クリニックと道を挟んで向かいにあるビルの2階に「鶴舞公園クリニックアトリエ」(アトリエというのは、フランス語で「小部屋、隠れ家」といった意味があります)というサテライトクリニックを設けることにしました。これで少しはご迷惑おかけせずに済むようになるかもしれません。



こちらの2階です。「51517」の数字は「5丁目15番地の17」です。

保健所への届出を済ませて、来月から毎週火・木・土曜日の週3回、女医さんお二人に交替で主にレーザーカーボンピーリングの施術をお願いすることにしました。

女医さんたちはお二人とも、私が国立名古屋病院勤務医のときの後輩で、いっしょに仕事をしていた仲良しです。それぞれ結婚して、ある程度子供さんたちも手がかからなくなっていて、渡りに船のお話だったようで、トントン拍子に決まりました。

ママ女医さんとは言っても、お二人共専門医を取得済で更新も続けていらっしゃいますから、医師としての力量はありますよ。保証します。

また、ほかのクリニックでは、「医師の監督のもと看護師が」レーザーを照射することもあるそうですが、うちはそういうことはしません。レーザーは医師(本院では私、アトリエでは女医さん)が照射します。女医さんに単なる名義貸しを頼んだのではありません。

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私は、このブログでときどき「自分は友達が少ない」とぼやきますが、実はそうでもないのです。患者さん・お客様受けもいいのですが、お医者さん、特に女医さん受けは昔から良かった。
「男性としてモテる」ということでは全くないです、残念ですが。
優しげで、ユニークな能力があって、しかし全然偉ぶらないところが、いいみたいです。

ただ、なんというのか、男性社会って、群れを作って勢力を競い合うとか、自己顕示のために、社交を広げるみたいなところあるじゃないですか。ああいうのが、とても自分は馬鹿馬鹿しく思えてしまって駄目なのです。なんか、そういうのには近寄りたくないし、巻き込まれたくない。

その点、女性はいいです。女性社会にも、もちろんややこしいことは多いでしょうが、私が男性なので、適度に一目置かれて付かず離れずですから。

ということで、女医さんと、適度な距離を保ってお友達になるのは、昔から得意だし、そういう意味での友達は、むちゃくちゃ多いです。アトリエをお願いした女医さんも、そういう私の「お友達」の中の二人です。

お二人とも、もともと仕事が好きだし、何よりも美容が大好きです。そして私を医師として昔から信頼してくれています。だから、私がこの仕事に転職したのを聞いて小躍りしてお客さんとして来てくれましたし、今回の企画にも大喜びで参加してくれました。また昔のように、私と一緒に仕事をするのが楽しみなのだと思います。
もし、これを読んでいるあなたが、女医さんならば、ぜひ私と「お友達」になりませんか?決して損はさせませんよ。

 
 
(2013年10月31日記)

 

私のPRP(多血小板血漿)作成法


 私の考案したPRP作成法を、昨年の第4回PRP研究会で発表しました。今回の記事はそのときの発表内容に、その後さらに改良した点を加えてまとめたものです。


 まず、PRPについての基本事項のうち、とくに勘違いされやすい部分をいくつか指摘します。


 上は、PRP療法を説明するときによく用いられるイラストです。遠心後の血漿の、上の方には血小板が少なく、下の方には血小板が多い、とするものです。


 これは間違っています。まずはそのお話からしたいと思います。

 青い小さな丸が血小板です。赤血球の比重は重いですから、まずは赤血球が沈殿します。話を簡易にするために、その時点では血小板は、血漿中に等間隔で浮遊していると仮定します。

 液体中の粒子の沈降速度は、重力加速度に比例し、重力加速度すなわち遠心加速度は、遠心機の中心からの回転半径に比例しますから、血小板の沈降速度は、回転半径に比例することになります。すなわち、vイコールdt分のdxイコールaxという簡単な微分方程式となり、これを解くと、時間経過とともに、血小板は青い線のように沈降していくことになります。血小板同士は等間隔、すなわちbイコールdのままで、その間隔がa,b,cのように開いていくということです。


 ですから、血漿中の血小板密度は、どこも同じで、沈殿だけが増えていきます。下の方で濃くなるなどということは、生じ得ません


 ゲルセパレーターのある遠心管を用いれば、血小板はその直上で沈殿しますし、そうでない場合は、赤血球層の上部で濃縮されます。

 歯科では、この濃縮層のあたりを採って用いるようですが、美容外科ではそれは出来ません。赤血球が多く混ざると、皮内注射したときに、内出血様となるからです。



 したがって、美容外科でPRPを調整する場合には、まず低速で赤血球のみを沈殿させ、ついで血漿を高速遠心して、血小板を沈殿させ、上清を除去したのち沈殿を含めて混和して血小板を再浮遊させてPRP液を作る、これしか選択肢はありません(二回遠心法)。

  一回遠心法で、下の方の血漿をPRPであると信じて採取した場合や、二回遠心法で沈殿を混ぜずにPRPとして使用した場合の血小板濃度は非常に薄いです。W-PRP法と称して、沈殿を含めて混和したPRP液を「白血球を加えることによって効果を高めている」などという根拠のない寝言のような理屈を掲げているところがありますが、そうではなく、二回遠心法で白血球を含んだ沈殿を含めて混和しなければ、理論上PRP液は採取できないのです。

  もう一点、重要な点を指摘します。




それは、抗凝固剤を用いただけでは、血小板凝集は抑制されない、という事実です。


 先ほど説明した二回目の遠心終了時の血漿です。血小板というのは、沈殿させると、一次凝集が起こって、壁にへばりつきます。これは、ミキサーで混ぜて再浮遊させることはできません。まぜようとすればするほど、残っている血小板も壁に粘着して、血漿中の血小板は薄くなっていきます。血小板というのは天邪鬼なんですね。数時間静置すれば、一次凝集というのは可逆的ですから、また再浮遊しますが、そんなに待ってはいられません。プロスタンジンなどの血小板凝集抑制剤を少量添加してやると、この問題は解決します。

 PRPについての論文や、キットのメーカーの資料では、最終血小板濃度として高値が記されていますが、これはおそらく、調整後数時間静置したあとで測定したものだと考えられます。実際の臨床現場では、PRPは調整後(沈殿混和後)ただちに使用するでしょうから、血小板は一次凝集から回復しておらず、血漿中の密度は薄いままです。



  次に、実際のPRP作製の様子です。



まず、プラスチックシリンジの耳を切り取ります。普通のハサミで切れます。


ふたとして、保護栓を使います。これも医療用消耗品として入手できます。

 次に抗凝固剤を加えます。わたしと同じ世代の方は、研修医のころ、動脈血ガス測定の時に、このようにヘパリン採血をした経験があるのではないでしょうか。同じ要領です。(注:ここでは抗凝固剤としてヘパリンを用いていますが、ACD-AとヘパリンとでそれぞれPRPを作製してPDGF濃度を測定してみたところ、同じ血小板密度であってもACD-AのほうがPDGF値が高いことがわかったので、現在はACD-Aを用いています)



 採血します。5mlのディスポシリンジに4mlまで採血したものを8本採取します。4mlというのは、これ以上採血するとシリンジが長くなって、遠心分離器に入らなくなるからです。

ここからがキモですが、採血したシリンジごと、遠心分離します。下図は遠心が終わったところ。




 遠心分離の条件は、よく聞かれます。簡単な話なので、ちょっと考えれば誰でも気が付くことだと思うのですが、第一回の遠心では、赤血球を分離するのが目的ですから、「赤血球が沈殿するが、血小板は沈殿しない最少の遠心力」がベストです。遠心力が少なすぎると赤血球が分離されないし、大きすぎると血小板まで沈殿して血漿中の血小板が少なくなります。手持ちの遠心器の、遠心時間や回転数をいろいろためして、赤血球と血漿が分離する最少の遠心力を、肉眼(赤血球が分離されているかどうか)で確認して決めればいいのです。私の使っているKOKUSANのH-19αでは、3000rpm×3分です。


 手製の、シリンジ台に載せます。東急ハンズで材料を買ってきて、3千円くらいでできます。金属製なので毎回オートクレーブで滅菌して再使用できます。

 血漿を採取します。このとき用いるのは、延長チューブと三方活栓で、これらはすべて医療用消耗品です。

 遠心チューブを用いず、ピペッティング操作も不要なので、安価、かつ衛生的、倫理的です。

実 際には行いませんが、採取後の赤血球を生理食塩水で薄めて患者に戻しても、問題が生じません。血液(血漿)は医療用消耗品から外には一回も出ていないからです。成分献血と同じ理屈です。

 いま、血漿を採取したシリンジには、あらかじめプロスタンジンを少量、血小板凝集抑制の目的で入れておきます。一次凝集が起きないようにです。

 経験上、18G針で割った一かけら、だいたい1マイクログラムくらいで十分です。1バイアルに20μg入っているので、目視でその1/20かけらということです。
 あるいは生理食塩水1mlに溶かしてその1/20の0.05mlを加えます。このほうがより定量的なので、最近はそうしています。


次いで、2回目の遠心分離です。

このときの遠心条件もよく聞かれますが、二回目の遠心は、浮遊している血小板を少しでも多く沈殿させることが目的ですから、「最大の回転数で、長時間遠心すればするほどいい」です。私の遠心器は回転数MAX4000rpmですから4000rpmで、時間は、お客様をお待たせできるぎりぎりの最長時間ということで15分に設定しています。


2回目の遠心が終わったところです。
 

下方に白く沈殿しているのが、白血球と血小板で、バッファーコートと呼ばれます。


一回目の遠心後の血漿と、二回目の遠心後の血漿とを並べたところです。下の2回目の遠心後の血漿のほうが、透明度が高いのがお判りでしょうか?この一回目の遠心後の血漿の「濁り」が血小板と白血球です。高脂血症の方や、脂肪の多い食事をした直後の方の血漿も濁っていますが、この場合は一回目と二回目で、濁りに変化はありません。

上澄みを適量抜きます。


上澄みを少量残して除去したところ。シリンジを少し浮かして「遊び」を作ります。

(注;最近は完全に上澄みを抜いてしまって、生理食塩水で置き換えています。そのほうが、ACD-Aの残留が少なく注射したときに痛くないからです。)

キャップをします。


これを、試験管ミキサーで混和します。


出来上がったPRP液です。一次凝集は起きません。一次凝集(粘着)しないので、いくらでも濃縮が可能です。

血小板が本当に採れているか、を確認してみましょう。
(※血小板が採れているからと言って、その中に含まれるPDGF(血小板由来成長因子)も多いとは限りません。遠心などの過程で血小板からPDGFが放出されてしまうのか、条件によっては血小板が多くてもPDGF濃度はあまり高くない、というPRPも出来てしまうからです。しかし、血小板が少ないのにPDGFが高いということはありえないので、その意味で血小板がちゃんと採れているかを確認してみることは重要です)
 

生理食塩水を適量とります。ここに、出来上がったPRP液を一滴だけ加えます。


30G針で一滴は、だいたい20マイクロリットル前後のようです。生理食塩水数ccと混ぜるとだいたい数千倍希釈になります。

どうして一滴がだいたい20μlになるかというと、PRP液をポタポタと別のシリンジに滴下して、0.1ml(100μl)が何滴になるかを確認してみた結果です。私がやってみたときは5滴でしたが、これは、針やPRP液によって変わるであろうから、厳密ではありません。しかし、採取したPRP液が本当に十分な血小板量を有しているか、の半定量的な確認には十分です。

PRPの施術のときには、市販のキットでも自作のキットでも構いませんが、最初のうちは出来上がったPRP液の最終血小板濃度を顕微鏡で確認するとよいと私は考えます。そうしなければ、実は非常に薄いPRPとはとても言えない血漿を打っているだけかもしれません。
 生食で希釈した液を、試験管ミキサーで混ぜて、ディスポの細胞計数板
http://www.tech-jam.com/items/KN3318905.phtml)で、血小板を数えます。


ディスポの細胞計数板に一滴たらします。


白い点々が血小板です。さきほどのPRP液はだいたい200万個パーマイクロリットルであったことがわかります。


ちなみにですが、上はPRPの原液を顕微鏡で見たところです。やや大きなのが白血球で、小さな点々は皆血小板です。このように、正しく調整されたPRP液は血小板密度がとても高いので、希釈しなければ数えられません。

血小板というのは、通常の細胞より小さく、なおかつ無染色なので、顕微鏡観察には多少のこつが要ります。皮膚科医であれば、コンデンサーを絞って白癬菌を観察する要領で通常の顕微鏡で確認することも出来なくはないのですが、よりストレスレスに観察するためには、位相差顕微鏡が望ましいです。


上の写真は、私の構築した、位相差顕微鏡システムで、手持ちの古いオリンパスの顕微鏡の光源をLEDに替えて、位相差コンデンサと対物レンズをYahooオークションで入手して付け替えたものですが、もし新規に購入されるのであれば、DAIKO
http://www.daikosci.co.jp/pdf_f/dsmp03.pdf
が一番安価でいいと思います。細胞計数板というのは、けっこう厚さがありますから、歯科で歯周病菌を確認するのに用いるようなタイプの位相差顕微鏡では観察できません。DAIKOのものは、フィールドタイプということもあって、けっこう厚い試料にも対応していますから使用できます(確認済み)。


これにDINO-EYE
http://microscope.vc/product/microscope/dinolite/dino-eye-premier-s-30mm.html
をつければ、パソコン上でストレスレスに計数できますし、画像の記録も出来ます。というか、DAIKOの顕微鏡は一眼で視野が狭いので、ほとんど必須です。
 

PRP液を注射する際には、これまたコツがあります。普通に皮内注射すると、針を抜いたときに圧であふれて、PRP液が皮膚上にこぼれてしまってもったいないです。針を抜くときにシリンジ内筒を引いて陰圧をかけながら抜くと、皮膚上にこぼれません。お試しください。

また、PRP療法のキットを用いて調整・使用するときには、カルシウムや自己血清などを用いて、PRP液を「活性化」してから注射するところが多いようです。わたしはこれが非常に不思議です。なぜなら、PRP液というのは、注射して組織内に入った時点で、トロンボプラスチンやカルシウム、コラーゲンなどに触れますから、血漿は凝固するであろうし、血小板は非可逆的な二次凝集を起こして顆粒を放出します。歯科などで、充填物としてPRP液を用いるときには、ゲル状になっていないと使えないから、体外で活性化(ゲル化)しておくというのは解りますが、美容外科領域での使用で、わざわざ「活性化」して、使いにくくする必然性がないのです。

昨年、PRP研究会で発表した時に、質疑応答の際に、演壇からフロアに向かって、この点について何か知っている方、ご意見お持ちの方いないか、逆質問してみたのですが、誰もなぜ「活性化」させて使っているのか、解らないようでした。たぶん、歯科で使っているものを、そのままキット化された製品を、皆が何も考えずに習慣的に使っているからじゃないかな?

PRP研究会では、プロスタンジンを添加する点について、「プロスタンジン自体に、創傷修復作用があるから(それでプロスタンジン軟膏という製品があります)、臨床的に良い相乗効果を出すのではないか?」という指摘がフロアの先生からありました。その発想は、わたしは気が付かなかったのですが、プロスタンジンと言うのは、動脈硬化などの患者さんで点滴治療に用います。点滴がもれることがたまにあるのですが、その部に何か変化が起きるかと言うと、通常の点滴漏れと同じで、良くも悪くもならないので、たぶんさほどの臨床効果にはつながらないのではないか?と考えます。

さて、以上のような私のPRP作成法を用いると、しっかり原価計算をしていないのですが、医療用消耗品と薬剤のみですから、たぶん数千円で出来るはずです。市販のPRP作成キットは、どれも数万円ですから、PRPの施術もまた高価になります。
正直なところ、このPRP療法というのは、確かに効果はあるのですが、その効果が一回(一本)につき数十万円するような施術には私には思えません。だから、市販のキットでのPRPの施術は、うちのメニューとしては掲げませんでした。
自作キットで安価にPRPが作成できるようになったので、初回5万円、2回目以降は3万円で施術しています。
しかし、自分でやっていて思うのですが、私の方法は、昔実験室で多少研究していたといった経験が無い方には、取っつきにくいでしょう。というよりも、PRP療法そのものが、これは外科的な手技と言うよりも、血液内科的な知識が必要な施術ですから、そういうことの好きな研究オタク的な脳が無いと、やってて楽しくないと思います。
自院メニューに掲げるかどうかは、やっていて楽しい施術かどうか、というのが、個人クリニックにとって大きな要素です。私は、採算性というよりは、この施術、やっていて楽しいので好きです。

お医者さんの見学は可能ですので、お電話ください。わたしは出不精で、なかなか学会等にも足を運ばないのですが、うちのクリニックまでお越しいただければ、同業者といろいろ情報交換すること自体は大好きです。また、女医さんは、そのままうちのお客さんになっていただける率が非常に高いので、とくに歓迎しますよ。
(2013年10月23日記)

PRP(多血小板血漿)とヒアルロン酸の合わせ技


 今回は、法令線から口周りの小じわにかけての若返りを希望されたお客様に、法令線の深いところはヒアルロン酸で、口周りの浅い小じわはPRPで施術した方の写真を供覧します。写真掲載ご快諾いただきありがとうございました。

 ところで、たまにネットで情報収集されたお客様から「PRPはヒアルロン酸注射部位には打てないのではないですか?」と聞かれることがあります。なんでそんな話になるのか解りませんが、理論上も実際も干渉する施術ではないので、大丈夫ですよ。ただし、ヒアルロン酸はすぐに膨らんで結果が出るのに対し、PRPは結果が出るのに2~3ヶ月かかるので、PRPを打って物足らなく思って、その部にヒアルロン酸を追加すると、後日PRPの結果が出てきたときに「ヒアル入れなくても良かったかな?」と思うことはあるかもです。

術前
法令線の深いところにはヒアルロン酸を、口周りのしぼんだような小じわにはPRPを注射します。PRPは、うちの場合は毎回調整後の最終血小板濃度を確認したうえで注射しますが、この方の場合は400/μl×0.7mlでした。濃くも薄くも無く、平均的な濃度(量)です。

2ヶ月後
鼻に近い法令線の凹みが改善しているのはヒアルロン酸によります。口周りはややPRPが効いてきたかな?というところです。効果がありそうで気を良くされたのでしょう、追加施術を希望されました。再びヒアルロン酸とPRPを前回同様に施術しました。

さらに2ヶ月後です。
法令線の凹みも、追加ヒアルロン酸打ちで、さらに浅くなっていますが、口周りに打ったPRP4か月目で、しっかり効いてきているのが判ります。張りが出て、小じわが目立たなくなりました。良くなってくると人間嬉しいもので、さらに追加希望されましたので同様施術しました。

初診から8カ月後です。
すっかり若返りました。

約一年後です。いい感じに保っていますね。
この方は、糸(スレッドリフト)を入れていないのですが、糸でたるみを全体に引き上げれば、さらに若さを演出できそうですが・・まあ、ご本人ご満足な様子なので、これはこれで良いかもです。

今回のお話のキモは、

1)   ヒアルロン酸の結果はすぐに出るが、PRPの結果は2~3ヶ月経ってから。

2)   法令線など深い凹みはヒアルロン酸、浅いところの小じわやしぼんだ質感の改善(張りを出す)にはPRP

といったことでした。

法令線など深い凹みはPRPでは持ち上がりません。フィブラスト(FGF)などの成長因子を添加、あるいは単独で注射すれば、膨らむかもしれませんが、制御が出来ません。たまたまうまくいく例もあるかもしれませんが、それは術者の手技や調整の方法ではなく、ほんとうに「たまたま」うまくいっただけのことで、脂肪幹細胞に作用させてこれを分化増殖させるという、間接的な玉突きのようなことをするわけですから、まったく保証がありません。過剰に膨らんだり、脂肪細胞ではなく骨芽細胞に分化したりすると、非常に困ったことになります(回復させる手段が無い)。ヒアルロン酸のほうが無難です。

血小板の放出する成長因子は、主成分がPDGFといって、これは脂肪幹細胞にはあまり作用せず、繊維芽細胞に作用します。繊維芽細胞が分裂増殖したり、コラーゲンを産生したりしても、量的にそれほど多くはなりませんが、脂肪幹細胞が脂肪細胞に分化増殖すると、細胞のサイズが大きく変わるので、量的効果が大きいです。同じ「成長因子」といっても色々な種類があるのです。

そのうちPDGFがフィブラストのように製剤化されれば、ずいぶん便利に使えるかもですけどね。

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4月から製造販売を始めた中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水ですが、若返り効果を確認するために、79才になる母親と84才になる父親に協力してもらって、2週間外用前後の皮膚を採取し、組織学的な変化を確認してみました。

下写真の上が外用前、下が2週間外用後です。やや専門的な話になりますが、上から角層、表皮、真皮で、表皮の下の方に黒~茶色の玉がパラパラと見えますが、これはPCNAという、分裂増殖の指標となる成分を染めたもので、外用後は外用前よりもPCNA陽性細胞が多い、すなわち老化して衰えていた表皮の分裂増殖が再活性化していることを示しています。基底細胞といって、表皮の最下層にある細胞の配列が整って密になってきてもいます。


下の写真は、フィラグリンという、角層を構成する保湿機能に重要なタンパク質を染めた結果です。表皮上層から角層にかけてみられるフィラグリンが、中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水外用後は、はっきりと増加していることが判ります。表皮細胞の分裂増殖のみならず、分化して保湿機能をも改善されたことを示しています。


これだけはっきりした結果が出る「若返り化粧品」は、たぶん、これまで無かったと思います・・。わたしが発見したことではなく、スイスのKaya先生ほか多くの基礎研究の教室から報告されている論文をもとに、ただそれを化粧品として作製し、世にリリースしただけなのですが、多少は誇らしい気もします。
ほとんどの化粧品は塗った直後の使い心地重視ですが、私の作成した中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水の場合は、直後はさらっと吸収されてかえって突っ張るような感じです。しかし、毎日続けていると、組織レベルで確実に老化した皮膚が修復されます。
  

PRPにしろ、中間分子量ヒアルロン酸含有化粧水にしろ、私はすごく基本的なところで「大発見」をするだけの力量は無いのですが、ちょっとしたひらめきでもって、臨床応用する、工夫してうまくいく、ということは、昔から得意なのです。昔、内科や皮膚科にいたときには、「小賢しい」と頭を押さえられることも多かったのですが(出る釘は打たれるタイプ)、美容外科に転じてからは、自由な発想が許される世界のようで、たいへんに肩身が広くなって嬉しい限りです。

いやほんと、若いころは「目立とうと思って人と違ったことしてるんじゃないのか?」とか、えらい言われようしたこともあります。そうじゃなくて、自由な発想でいろいろ工夫するのが楽しいだけなんですけどね。・・

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10月30日のNHK「ためしてガッテン」のオープニング部分に、私がYoutubeにUPしたホクロをCO2で取る動画を使っていただきました。下がキャプチャ画像で、左上に私の名前が出ています(クリニック名をいれると、NHKの規約に反するのだそうです)。
 
(2013年10月21日記)