リポレーザーがたるみに効く理由


 リポレーザー(スマートリポ)について、なぜ顔のたるみに効くか、という理論付けのお話をしたいと思います。
 
 リポレーザーは、2004年に、脂肪吸引に置き換わる、より安全で簡易な施術として、日本に導入されました。当初おおいに期待されましたが、現在では、それほど多くの脂肪は取れない(焼けない)ようだ、脂肪吸引に置き換わるほどのものではない、と認識されていると思います。
 美容外科の学会では、2006年くらいに、「脂肪はそれほど取れない。熱変性で、皮膚のたるみが引き締まる程度だ」という発表が相次ぎました。他の先生方は「なあんだ、がっかりだ。」という反応でしたが、わたしは、逆に、そのとき初めてリポレーザーに興味を持ちました。「皮膚のたるみが引き締まる?いいじゃないか!」
 それで機械のデモに来てもらい、効果を自分自身とスタッフとで確認したのち、機械を導入しました。
 皮膚(とくにお顔)のたるみについて考えるとき、わたしは、「肉の塊が皮袋につつまれて、ぶらさがっている状態をイメージしてみてください」と、よく言います。
 中のお肉の塊を引上げるのが、アプトスやエックストーシスです。それに対して、皮袋を鍛えて強くして、たるみに対抗しようという戦略が、照射系(レーザーやラジオ波)です。(ですから、糸と照射系というのは、どちらが優れているということではなく、両立しうるものです)
 レーザーやラジオ波など、照射系の施術は、いろいろありますが、「表面をやけどさせることなく、いかに深くまで多くのエネルギーを伝えるか」が、最大のテーマです。
 そのため、照射と同時に、冷却スプレーを吹き付けるなど、機械毎にさまざまな工夫がこなされています(下図)。しかし、どんなに工夫しても、エネルギーが入る深さ・量には限界があります。
レーザーやフォトフェイシャルでは20~30ジュール、ラジオ波をもちいたいちばん強い機械であるサーマクールでも100~140ジュール程度です。

 リポレーザーというのは、照射範囲を局所麻酔したのち、細くて長い針(20G、血管注射の針の太さです)を刺して、その先からレーザーを出します。だいたい手の平くらいの面積に対して、1000ジュールくらいを照射します。
 
 脂肪吸引の代わりをしようと、深いところの脂肪に当てる(焼く)のが、本来の使い方(下図)ですが、この程度のジュール数で、焼けて溶ける脂肪はそんなに多くはありません。深い部分の脂肪を取り除こうと思ったら、やはり、機械的に脂肪吸引で、体積として抜いてしまったほうが、話が早いです。

  しかし、上図でいうところの、subcutaneous fat(皮下脂肪) やdermis (真皮)近くにリポレーザーを当ててやるとどうでしょうか?サーマクールでは到達し得ない、深部の皮膚に、皮表のやけどを心配することなく、はるかに高いエネルギーを送り届けることができます。

 下図は、リポレーザーを実際に照射している写真です。細くて長い針を打って、その先からレーザーを出して内側からエネルギーをかけていきます。針穴は一ヵ所で、そこから、扇状に当てていきます。
 イメージとしては、皮膚の裏側から、アイロンをかける、こてで伸ばす、という感じです。

 うちのスタッフの術前・術後です。
 リポレーザーの症例は、このブログのほかの項や、ホームページに、他にも紹介されていますので、ご参照ください。
 術前です。

 デザインです。青で引いた範囲を局所麻酔してリポレーザーをかけます。

 術後1カ月です。

 術前と術後1カ月を並べてみました。

 before(向かって左)→after(右)で、口横のたるみが締まっています。
 真皮裏の浅い脂肪が焼けて軽く繊維化し、真皮深層が熱変性でコラーゲン増成した結果です。

 糸と同様、何度も繰り返すことによって、効果は増強するようです。たるみにくい、強い皮膚になってくれます。
 
 ラジオ波系の照射を繰り返すと、皮膚表面の浅い真皮にどうしても熱変性が強く、遠目にはつやつやして見えても、さわると明らかに硬い、瘢痕っぽいピンク色の皮膚になっていくことがありますが、リポレーザーによる引き締めでは、そのようなことがありません。皮膚は裏側の深い部分で瘢痕繊維化して裏打ちされるので、皮表に近い、浅い真皮はやわらかく自然さを保っています。
 
 アプトスなどの糸を入れていて、リポレーザーをすると、糸が焼けて切れてしまうのではないか?と心配される方もいらっしゃると思いますが、ご安心ください。糸は、リポレーザーよりもずっと深いところに入っていますから、影響はありません。リポレーザーをかけたあとで糸を追加することも、糸を入れたあとでリポレーザーをかけることも可能です。
(2008年2月13日記)